19 負ける訳にはいかないから
「私に負ける訳にはいかなくなった? それは私に勝てばゼローグからの、ご褒美が待っているから?」
「そうでありんす」
そう言って凛は小さく頷いた。
「なるほど、ではお互いの望みを賭けて戦いましょう。私は貴方に勝って王都に居る人間を殺す為、貴方は私に勝ってゼローグからのご褒美の為に……」
アガレスがそう言った後二人は同時に飛び出して行く。アガレスは魔剣ストレイルで凛に斬りかかり、凛は両手に妖気を集中させてアガレスの魔剣ストレイルを、手刀で迎え撃つ。
すげぇな凛は、パワーアップしたとはいえあのストレイルの一撃を、両手の手刀だけで防ぐとはなぁ。今後凛が妖力を増やしていって九尾になったら、凛はどれくらい強くなるんだろうなぁ。
「驚きですね、まさかストレイルの一撃を手刀で、受け止めるとは思いませんでしたよ」
「わっちも驚いているでありんす……まさか手刀でその魔剣の一撃を、防げるとは思わなかったでありんすよ」
「ふっ……ですが驚いてる暇はありませんよっ!」
アガレスと凛は戦いを再開すると魔剣と手刀を幾度も交えていた。手数では凛の方が上だがパワーはアガレスの方が上だ。
凛はストレイルの一撃を両手で受け止めたり、上手く交わしたりしながらアガレスに攻撃している。対するアガレスも凛の手刀を紙一重で交わしている。この勝負どっちが勝つか分からなくなってきたな。
「君には驚かされてばかりだよ。ストレイルの一撃を一度も食らうことなく、私に攻撃してくるんだからね」
「さっきも言ったでありんしょうこの戦いは、絶対に負ける訳にはいかないのでありんす! だから貴方には絶対に勝つでありんす!」
「ゼローグの事を愛してるのですね。私には誰かを愛するという感情は分かりませんけどねっ!」
「知りたいとは思わないのでありんすか?」
「思いませんね、私はただ命令に従うのみ」
「命令?」
「おっと、お喋りが過ぎましたね。戦いの続きをしましょうか」
俺と唯は離れた所で二人の戦いを見ていたので、ここからじゃ二人が何を話してるのかが分からない。後で凛に何を話してたのか聞いてみるか。隣に居る唯は二人の戦いを黙って見ていた。
隔離空間の中に居る相手とは会話をする事は出来ない為、隔離空間は解除してある。
まぁ俺は検索空間を使えば隔離空間の中に居る相手が、言った事は分かるけど俺の言った事は相手には聞こえないからな。
「そろそろ決着つけましょうか」
「わっちも賛成でありんす」
何を話してたのかは分からないが、どうやら二人はこの戦いの決着をつけるようだ。
アガレスは魔剣に魔力を溜めて、凛は自分の右手に妖力を溜めている。この一撃で勝負が決まる。
「これで終わりだぁぁぁ!」
「これで終わりでありんす!」
アガレスと凛は同時に全力の一撃を放ち、互いに放った攻撃はぶつかりその衝撃で、辺り一帯は破壊し尽くされた。
俺は二人の攻撃がぶつかる瞬間に、唯をもう一度隔離空間で囲ったので唯は隔離空間に守られて無傷だった。
俺は二人に目線を向けると立っていたのは凛の方だった。どうやら凛はなんとかアガレスに勝てたようだ。俺は唯を囲っている隔離空間を解除して、唯と共に凛の所に駆けつけた。
アガレスはあれだけの大技を放った為か、地面に倒れ死んでいた。俺は直ぐに死んだアガレスをルイーザの力を使って完全に滅ぼした。
「おつかれ、凛」
「うん!」
「さぁ、屋敷に戻るぞ。皆が心配してるだろうからな」
「うん」
二人は同時に笑顔で返事をすると凛は、俺に抱きついてきた。俺は凛の頭を優しく撫でた後、空間移動で屋敷の広間に移動する。
「ただいま!」
「おかえりなさいませ、ご主人様、凛様、唯様。皆さん心配していましたよ」
「悪い悪い、散歩の途中で七十二柱の悪魔にでくわしてな」
「それで帰りが遅かったんですね」
「他の皆は?」
「もう遅いので部屋で就寝しましたよ」
「そっか、遅くまでありがとな。ナナ」
そう言った後俺はさっき凛にもしたように、ナナの頭を感謝を込めて優しく撫でてあげた。
「凛やナナだけずるいよ旦那様、妾の頭も撫でてほしいよ」
「分かった分かった」
俺は唯の頭を凛やナナと同様に、優しく撫でて上げると唯は顔を赤くして、恥ずかしそうにしていた。自分で撫でて欲しいって言ってたのに、何で恥ずかしがるんだよ。
「さぁ、今日はもう寝ようぜ。凛のご褒美も明日でいいだろ?」
「うん、わっちも疲れて眠いからご褒美は明日でいいでありんすよ」
「ご褒美って何です? ご主人様」
「俺が凛にアガレスに勝てたら何でも一つだけ、凛の言うことを聞いてやるって言ったんだよ」
「なるほど、そういう事でしたか」
その後俺達は部屋に戻ってパジャマに着替える。凛はブラジャーをつけた後に着ぐるみパジャマを着ていた。そして俺達は俺を真ん中にして、ベッドに川の字になって眠りについた。
朝になり眼が覚めると凛と唯の着ている着ぐるみパジャマの、チャックが開いていて下着が丸見えになっていた。何でこの二人は何時もチャックが全開なんだ?
「二人共起きろ、朝だぞ!」
「朝ぁ?」
「うぅん」
凛と唯は目を擦りながら同時に欠伸をしていて、それが可笑しくて思わず笑ってしまった。俺は部屋を出て顔を洗って歯を磨く為に一階に降りて、顔を洗って歯を磨いた後部屋に戻ると、凛と唯は座ったまま眠っていたのでとても驚いた。
俺は凛と唯をもう一度起こして着替えさせた後、二人を連れて一階に降りて顔を洗って歯を磨かせた後、広間に入ると何時ものようにメイド服を着たナナが居た。
「おはようございます、ご主人様」
「おはよう、ナナ」
その後少し待っているとアルシア達が来て、広間に全員が揃ったのでナナが朝食を台車に乗せて、広間にやって来た。俺達は朝食のパンを食べ終えた後、それぞれ好きな事をしていた。
「凛は俺に何して欲しいんだ?」
「わっちとお兄だけで王都でデートがしたいでありんす!」
「あぁ、いいぜ。それじゃあ早速王都に行こうぜ。凛」
「うん!」
凛と二人だけになる事は最近は無かったから、凛との王都でのデート凄い楽しみだな。すると俺の体からルイーザが出て来くると、ルイーザはソファーに横になって眠りについた。俺と凛の話を聞いていて自分は邪魔だと思ったんだろうな。
俺と凛は屋敷を出る時にナナが馬車で、王都まで送ってくれる事になった。帰りはゆっくり歩いて帰りたいと凛が言った為、行くときだけナナに王立に送ってもらう。俺と凛は馬車に乗ると馬車は王都に向けて進みだした。




