02 修行が始まります!
『全く厄介なのが目覚めたものだ』
『魔王と接触しては仕方あるまい。目覚めたのがあいつじゃなくて良かったと考えるべきだろう』
『どっちもヤバい奴ってことに変わりねぇだろ』
『まぁ何時かはどっちも目覚めるんだから』
『そもそもテメェのせいだろうが!』
誰だこいつら一体何の話をしているんだ? 俺に気付いたのかこっちに歩いて来るが姿はよく見えない。
『早く目を覚まさないと皆が心配するよ、ゼローグ』
何で俺の名前を知っているんだ、そう問おうとしたら視界が真っ暗になっていく。何者だったんだ? 夢だったのか?
目を開けると俺はベッドの上で横になっていた。さっきの夢? で見た奴らも気になるが、あの村で魔王が来た後、どうなったのか思い出せない。
皆は無事なのか疑問は尽きないが、まずはベッドから降りてここが何処かを、確認しようとしたが、身体が重くて動けなかった。
どうしようか困っていたところに、ナナ達五人が部屋に入ってきた。
「起きてるなら私達の事、呼びに来ればよかったのにゼロちゃん」
「団長はここが何処かを知らないんだから、しょうがないよ」
「あ、そっか!」
「一つ聞きたいんだけど、俺の身体が重くて動かないのはどうしてなんだ?」
俺の質問にナナが答えてくれる。
「それは多分あの時の、ご主人様の変化が原因かもしれません」
「あの時? あの後俺はどうなったんだ?」
「急にご主人様の髪が腰ぐらいまでの長さに伸びて、銀髪に変化したんです顔はご主人様のままでしたが、今までご主人様から感じたこともない、異質な魔力を感じました」
「そもそもなんで魔王があの村に来たんだ?」
「レヴィアタンはご主人様から、預かっていたと言う神器を渡す為に、来たと言っていました」
「俺から神器を預かっていたってどう言う事だ?」
「分かりません。そもそもご主人様のあの姿が、何だったのかすら分かりませんから」
「レヴィアタンから渡された俺の神器は、いくつあったんだ?」
ナナが手元に魔法陣の様なものを展開して、そこからサンタが背負っている様な袋を取り出す。
大きさとしては、人一人入れるくらいの大きさだ。
「確認したところこの袋の中には、十二種類の神器が入っていました」
そう言い神器の入った袋を渡してくれるナナ。
「十二種類!」
あまりの数の多さに素っ頓狂な声を上げてしまった。
さっきメロディアから聞いた時は、神器を持ってる人は数が凄く少ないって言われたから、十二種類も持っているとは思っていなかった。
袋の中には刀や弓などの、色々な神器が入っている。
「私達もそれを見たときは凄くビックリしたよ。ゼロが幾つかの神器を持っている事は知っていたが、まさか十二種類も持っていたとはね」
「そりゃあ十二種類も持っていたら、最強の騎士なんて呼ばれるわな。で、俺は他にどんな神器を使って戦っていたんだ?」
俺の質問にメロディアが答えてくれる。
「団長が所持している神器で私達が知っているのは時空を含めて四種類、一つは重力二つ目は龍の手そして最後、三つ目は変化する鎧の四つだよ」
「一つ一つ神器の説明してもらっていい?」
「うん、一つ目の神器重力はその名の通り重力を自在に操る神器。二つ目龍の手は団長が触れているとこなら、何処からでも龍の手を伸ばす事ができる神器。三つ目変化する鎧は自分の腕を状況に応じて、様々な鎧と化す事ができるんだ」
「腕以外を鎧にできないの?」
「変化する鎧は手甲型の神器で手甲を身につけている部分を鎧と化すから、右腕か左腕のどっちかしか鎧にできないんだ」
「なぁ、俺って魔王と一人で殺り会えるくらい、強かったんだろ?」
「うん、そうだよ」
俺の疑問に答えてくれるアルシア。
「なら魔王や悪魔を全員倒して、この世界は平和になってんじゃないのか?」
「魔王は何度でも転生して復活するんです、そしてそれは悪魔も同様」
なるほどね、どんなに俺が強かろうと、何度でも復活するんじゃ、どうしようもないな。
「そんな奴等どうやって倒せばいいんだ」
「方法は二つ、一つは存在そのものを消し去るか、もう一つは永遠に封印するかのどちらか、そしてそれができるのはご主人様だけです」
「俺を必要としていたのは、そういう事だったのか」
どうして俺を必要としていたのかが分かって、スッキリした。
そんな話をしているといつの間にか、身体の重みが消えていて、起き上がることができた。
「ご主人様の、身体の重みも消えている様ですし、女王陛下に会いに行きましょう」
女王陛下に会いに行くって事は、ここは王宮の中なのかな。
「そういえばこの寝室は誰の部屋だったの?」
部屋から出る時に、目覚めた時から気になっていた事を、聞いてみるとナナが答えてくれる。
「女王陛下の寝室です」
「へぇ……えっ本当に?」
「本当です」
皆の後について女王陛下の居る部屋に、向っているんだけど、城の中はとても広くて一人だと迷子になりそうだ。
女王陛下やここに居る人達は、迷ったりしないのかな? 数分歩いているとやっと女王陛下が居るという部屋に着いた。
部屋に入ると女王陛下は椅子に座っていてが、俺達に気付きこちらに歩いて来た。
女王陛下は金髪のポニーテールに、綺麗なドレスを着ていて、間近で見ると凄く綺麗な女性だった。
「お前に会えるのを楽しみにしていたぞゼローグ」
「寝室貸してくれてありがとうございます。女王陛下?」
「アリアでよい、それに私とお前の仲だ」
私とお前の中? どんな仲だったのか気になるな。
「自己紹介がまだだったな。私の名はアリアドナ・アグィレサローベ、また会えて嬉しいよゼローグ」
思い出したように自己紹介を始めるアリア、それにしてもアグィレサローベって凄く言いづらい、舌を噛みそうになる。
アリアはよく言えるなと思ったが、自分の名前くらい言えて当然だよな。
「それでさっきから気になっていたんだか、ゼローグの隣に居る少女は誰なんだ?」
「私は柊梨沙、九条くん……じゃなくてゼロの友達で、こっちの世界に来る時に一緒に着いてきたんです。来ちゃ駄目でしたか?」
「構わんよ反対する者もいるだろうが、反対したところで元の世界に戻す術はないからな」
それもそうだ、それに梨沙だって覚悟を決めてここに来ているんだ、仮に元の世界に戻す術があったとしても、梨沙の覚悟を無駄にする様な事は俺がさせない。
「さて、そろそろ本題に入ろうか。ゼローグお前にはここ王都にある、王立フィリナ学園の地下闘技場で神器を完全に使いこなせるように修行してもらう」
「俺だけってことは無いよね?」
「安心してください、私もご主人様と一緒に行きますので」
「梨沙ちゃんは私達三人と、ゼロちゃんの屋敷でお留守番ね!」
梨沙の事をどうしようと考えていたが、アルシア達が一緒なら問題ないな。
こうして俺の神器を使いこなす為の、修行が始まった。