01 魔王襲来
空間の裂け目の中に入り、共に歩いている俺とナナと梨沙。歩いた先にまた空間の裂け目が現れる。
「ここを出ると異世界に着くんだな?」
この世界に着いたら魔王や悪魔との戦いが、待ってると思うとワクワクするな。
「はい、……お二人とも心の準備はいいですか?」
「おう!」
「うん」
俺と梨沙、二人同時にそう答える。裂け目から出ると、目の前には大きな屋敷があった。
「ここ何処?」
「ここはご主人様が住んでいた屋敷にございます」
「入りましょう皆様がお待ちです」
訳も分からず中に入る俺と梨沙。中に入ると、三人の少女が居て、その内の一人が急に抱き着いてきたのだ!
「会いたかったよぉ、ゼロちゃん」
「え……えっと」
「アルシア様、ご主人様が困惑しておられます。それに、自己紹介もまだなのですから、今はお控えください」
アルシアと呼ばれた少女は、俺から離れて自己紹介をはじめる。
「私は、アルシア・ハーヴェイ。こっちは、妹のメロディア」
「久しぶり、団長」
そう言い、メロディアと呼ばれた少女は一礼する。
姉のアルシアは青髪のサイドポニーテールで、鎧を身につけていても分かるくらいの巨乳だ。
妹のメロディアは姉とはちがい貧乳で、髪型は青髪のツインテール、目の色は二人とも水色だ。
「私は、オリヴィア・オリファント。これからまたよろしく頼む。ゼロ」
最後に名乗ったオリヴィアは、黒髪のロングヘアで目の色は黒、胸はナナと同じくらいの大きさで、三人とも似たような鎧を身につけている。
「三人は俺の仲間ってことでいいのか?」
「はい」
「さっき言ってたゼロちゃんってのは、俺のことでいいんだよな?」
「うん!」
「ところで、ゼロちゃんの隣にいるその子は?」
アルシアが俺に、梨沙について聞いてくる。
「えっと……なんて説明したらいいかなぁ」
「柊梨沙様にございます。ご主人様との口論の末、ご主人様の命令全てに従うことを条件に、私達と共にこの世界に来ました」
説明に困っていると、ナナが梨沙について説明してくれた。
「ふーん、……ゼロちゃんのことが好きなんだね!」
それを聞いた梨沙は、顔を真っ赤にしている。
「なんで分かったの?」
「だって、ゼロちゃんの命令に従ってでも一緒に行きたかったんでしょ」
恥ずかしそうに頷く梨沙。顔を真っ赤にして頷く姿は、凄く可愛い。
「そろそろ王都へ向かいましょう。ご主人様が戻られた事を、女王陛下にお伝えしないといけません」
「その王都ってとこまでは、どれくらいで着くんだ?」
「馬車に乗って三時間ほどです」
「そうか、随分と遠いんだな。……それじゃあ早速王都にいこうぜ」
「では、私は馬車の用意をするので、皆様は外でお待ちください」
外で待っているとナナが馬車に乗って、俺達の前で止まる。
中に入ると椅子が向かい合わせになっていて、片方に俺と梨沙が座って、もう片方にアルシア、メロディア、オリヴィアが座る。
俺達五人を乗せた馬車は王宮へと向かう。
「一つ聞きたい事があるんだけどいい?」
「何? ゼロちゃん」
「こっちに来る時、ナナに神の加護については後で説明するって言われたんだけど、まだ説明されてなかったから聞こうと思って」
「そっか、じゃあ、説明するね。神の加護は神の力の一部の事で、生まれ持って身に宿す人もいれば、何かの切っ掛けで身に宿る人もいて、力に目覚めるとその瞬間から肉体は年をとらなくなるんだ」
肉体は年をとらないって事は、精神は年をとるって言う認識でいいのかな?
「どうやったら力に目覚めるの?」
今度は梨沙がアルシアに質問する。
「強い意志を持つと力に目覚めるんだ」
強い、意思……。
「俺はどんな神の加護を宿していたの?」
俺の質問にメロディアが答える。
「団長は神の加護は宿していないよ」
「え? それじゃあ俺はどうやって、悪魔や魔王と戦っていたんだ?」
「団長は神器って言うものを使って、悪魔達と戦っていたんだよ」
「神器ってなに?」
「神器って言うのは、唯一無二の最強の武具の事で神器を持っている人は凄く少ないんだ」
「どんな神器を持っていたの?」
「時空って言って時間や空間を自在に操ることができる神器を持っていたんだ」
「チートだな」
「他にも持っていたみたいだけどね」
オリヴィアが俺達の会話に入り言う。
「今何処にあるんだ?」
「分からない団長の持っていた神器は全て所在が不明なんだ」
「そうか、まぁいいやその内見つければいいし」
「三人は神の加護を宿しているの?」
「うん、勿論!」
「勿論です」
「勿論だ!」
三人は同時にそう答える。
「どんな神の加護を宿しているんだ?」
俺が聞くと、アルシアが自身の神の加護について、説明し始めた。
「私が宿した加護は妖精色んな妖精の力を借りる事ができるんだ」
次にメロディアが自分の神の加護について説明する。
「私が宿したのは属性四つの属性を自在に操ることができるんだ」
そして、最後にオリヴィアが、自分の宿した加護について説明する。
「私が宿す加護は檻、檻の中に入ったが最後脱出不可能だ。だが、ゼロや突破者、魔王のような強者には通用しないけどね」
「突破者って何?」
「突破者って言うのは人間の限界を超えた人達の事で、ゼロちゃんを含めて十二人いるんだ」
「どれくらい強いの?」
「魔王と一対一で殺り合えるくらい」
「ゼロちゃんは一人で魔王全員と、殺りあえるくらい強いけどね!」
魔王全員と殺りあえるくらいか、この世界は楽しめそうだな。
「俺ってそんなに強かったんだ」
「突破者の中でも実力は飛び抜けていたからねぇ」
アルシアがそう言った後、馬車が止まりナナがドアを開けてこう言った。
「少し休憩にしましょう」
俺達五人は馬車から降りて、村にある宿屋で休憩していると、外で騒ぎ声が聞こえてきた。外にでてみるとそこには、黒い髪のツインテールにとても露出の多い服装をした綺麗な女性が居た。
「魔王レヴィアタン」
そう言ったオリヴィアはとても怯えていて、声も震えている。他の皆もオリヴィア同様怯えているようだった。
「あれが……魔王レヴィアタン」
「久しぶりルシちゃん」
そう呼ばれると急に頭が痛くなり、その場で倒れ激痛にに見舞われるが、何故か急に頭の痛みが収まる。
皆は俺に駆け寄って心配そうにしている。
「何だったんだ今の痛みは?」
そのすぐ後に今度は、俺の中に居る何者かに身体の支配権を奪われていく様な感覚に陥り、意識を失っていく。
「久しぶりだなレヴィ」
「ゼロ……ちゃん?」