10 可能性の扉をこじ開けろ!
神の領域に至るとは言ったものの、このまま殴り合っても神の領域に至れる訳もなし、どうするか……。
もう一方の腕も斬り落とすか……?
流石に足技だけってのもな……ハンデにはなるか……。
シェリルと戦り合ったときみたいに、ヴァイスとも臨界突破者で戦えればいいんだけどなぁ……。
『ヴァイスは神器を持ってないのか?』
そ。だから、どうしたもんかね。
『どうしようもないだろう』
えぇ? 何で急に突き放したの!?
いつもは一緒に悩んだりしてくれるじゃん!
『いや、だって、どうしようもないし』
どうしようもないって言うな!
「第二ラウンド……こいつを使うには丁度いいだろう」
そう言ってヴァイスが取り出したのは一振りの刀――。
何だあれ? 初めて見る。俺が消えた後に手に入れた物か……。
「神器解放! 氷銷瓦解!」
――ッ! 神器解放だと……ッ! おいおい、マジか。あの刀、神器だったのかよ……。
たが、俺が行方を眩ませてから十数年が経ってるんだ、あのシスコンが神器を持っていても不思議じゃない、か。
『おかげでお前も神器が使えるじゃないか』
ああ、シスコンが氷ならこっちは――。
「神器解放! 煉獄!」
解放した神器を手に俺は言う。
――当然、この神器だよな。
「氷と炎か。相性最悪だな」
ヴァイスは二つの神器を交互に見て言う。
「俺達みたいでいいだろう?」
不敵な笑みを浮かべ俺は言う。
「ふっ、違いない……」
「……」
お互い睨み合い相手の出方を窺う……。
先に動いたのは俺の方だった。
俺はその場で跳躍し空中から煉獄を振り下ろす。
煉獄の炎に包まれた斬撃がヴァイスを襲う。
――が、斬撃はヴァイスの手前で氷結される。炎に包まれた斬撃が氷で覆われた様な見た目だ。
いやぁ、綺麗だなぁ。
『関心してる場合か! 来るぞ!』
今度はヴァイスが空中から攻撃してくる。
「氷輝氷槍!」
――放たれたのは十メートルはあるだろう氷で作られた巨大な槍だ。
すっげぇな……。
『だから、関心してる場合か! 目の前まで来てるんだぞ!』
そんなもん、溶かせば関係ねぇ!
「煉獄・赫焉炎火!」
放たれた炎の攻撃は巨大な氷の槍を溶かして行くが、俺の放った攻撃も氷の槍によって凍っていく。
俺の炎が溶かすのが先か奴の氷が俺の炎を凍らせるのが先か、勝負と行こうぜ。
「おらぁぁぁぁあああああッ!!」
「はぁぁぁぁぁあああああッ!!」
――刹那、競り合っていた炎と氷は――。
「引き分けか……」
――そう、俺の放った炎は完全に凍り、ヴァイスが放った氷の槍は完全に溶けてしまったのだ。
「なら、今度は接近戦だ!」
そう言って俺は高速で飛び出して行く。
ヴァイスは刀を構え迎え撃つ格好となる。
俺は目にも留まらぬ速さでヴァイスを惑わし背後から刃を振り下ろすが……。
「その程度で俺を惑わせると思ったか?」
ヴァイスは瞬時に反応し背後からの攻撃を防ぐ!
「やるじゃねぇか」
口の端を吊り上げて笑みを浮かべる。
「言っただろう、貴様が行方を眩ませた十数年でとうに貴様を超えているとな!」
一度、俺から距離を取りヴァイスが言う。
「くっ……」
俺も後方に飛び退き体勢を整える。
「それを今から証明してやろう……臨界突破!」
――ッ! 氷銷瓦解は光輝き粒子となりヴァイスを覆う。
ハハッ、今日は驚く事ばかりだな……神器解放に加えて臨界突破か……。
この状況ならなんかいける気がする。
「臨界突破者、氷銷瓦解、全身鎧!」
水色の全身鎧、か……。まさに、氷ってかんじだな……。
「今日のケンカは最高に楽しめそうだな、なぁ、ヴァイス!」
俺はヴァイスが臨界突破をした事が心底、嬉しかった。
これなら、神の領域に至れるかもしれないからだ。
「当然だ。あの頃の俺と同じだと思うなよ、ゼローグ!」
拳を構えてヴァイスが言う。
「神器には神器を……臨界突破には臨界突破を、ってね。……臨界突破!」
煉獄は光輝き、粒子となり俺の全身を覆う!
やがて、全身を覆う鎧を形成していく。
「臨界突破者、煉獄、全身鎧!」
紅の全身鎧に身を包み俺は言う。
「やはり、お前もその姿になれたか……」
ヴァイスが言う。
「当然だ、天才なこの俺様に出来ない事は何一つ無いんだよ!」
高らかに俺は言う。
「行くぞ、ゼローグ!」
飛び出す格好となってヴァイスが言う。
「来い、ヴァイス!」
俺もヴァイスを迎え撃つ格好で言う。
お互いの顔面を殴り合う。
「があああああああああああああああッ!!」
「はあああああああああああああああッ!!」
一度、お互い後方に退き息を整える。
「はぁ、はぁ、……はぁ……。ふぅ、きっつ……」
神の領域に至る為とはいえ、片腕を斬り落としたの失敗したかな……?
「はぁ、はぁ、はぁ……たりめぇだ、片腕のお前が両腕の俺に勝ってたまるかよ……それでも互角だがな。……バケモンにも程があるぜ」
片膝をついて肩で息をしヴァイスが言う。
そういえば、さっきの殴り合いの最中、急に力が湧いてきたのはなんだったんだ……。
……まさか……今のは――。
『もしかしたら……神の領域、かもな』
確かに神の領域と感覚は似ていた……。
「ゼローグぅ! 何故セレスの想いに答えなかったぁぁぁぁぁぁああああああッ!!」
ヴァイスからの不意打ちを顔面にくらい俺は尻もちをつく。
「セレスの……想い?」
立ち上がり俺は言う。
「とぼけるな! セレスは本気でお前の事を好いていたんだ! 兄として、保護者として、俺はセレスには幸せにしてやる義務がある! だけどなぁ、俺にはそれが出来ないんだよ! ムカつくがセレスを幸せにしてやれるのはお前しかいないんだよ! 答えろゼローグ! 何故、セレスの想いに答えなかった、何故、セレスを裏切ったぁぁぁぁああああッ!」
目に涙を浮かべヴァイスが言う。
「――がはっ!」
ヴァイスの怒りがこもったパンチを顔面にくらい、俺は後方に吹き飛んだ。
「……俺の側に居れば必ずセレスは危険な目に合う! 俺にはそれが耐えられない! だから、独りで居たかった……ずっと独りで居たかった。独りなら誰も失わずにすむ……大切な奴を誰一人失わなくてすむ……だけど、気づいたら色んな奴を屋敷に引き入れてた……。独りで居るのが怖かったから……。セレスはただの人間だ、だからずっとはぐらかしていた。セレスの事が大好きだったから、巻き込みたく無かった!」
よろよろと立ち上がり俺は言う。
「そんなの関係ないよ! 私はにぃにと一緒に居たい! ずっとずっと一緒に居たい。だってどんな事があってもにぃにが守ってくれるから……だから、だから、私を……お嫁にもらってくださぁぁぁぁああああぁぁい!!!」
涙を流し大声でセレスが言う。
「セレス……」
『いいのか? 女の子にあれだけ言わせ――』
「……わーったよ、……俺のもとに来いセレスぅぅぅぅぅぅ!!」
セレスに向けて俺も大声で、セレスの気持ちに答えた!
これで、後戻りできないな……。
でも、悪くない……。
「ゼローグぅ! この超シスコン野郎がぁぁぁぁぁああああああああッ!!」
「てめぇだって、超シスコンだろうがぁぁぁぁぁああああああああッ!!」
お互い声を張り上げてがむしゃらに殴り合う。
拳を受ける度に鎧は砕かれていく。
鎧の修復してる暇はないな、だったら、全力で殴るたけだッ!
身体の大半の鎧が砕かれても俺は拳を構えヴァイスを殴った。
ヴァイスも砕かれた鎧は修復せずに、ひたすら殴り続ける。
――刹那、俺の放った拳はヴァイスの放つ拳の速度を上回り、ヴァイスの顔面に届く!
「――ッ! ……これは、そうか俺は至れたのか、神の領域に……」
拳を握り俺は言う。
「何だ? その姿……」
金色のオーラに包まれた俺を見てヴァイスが言う。
「少しだが、感覚が掴めてきたぞ……」




