09 人の挑発に乗ると、ろくな目にあわない
にしても凛とセレス、見れば見るほど似てるな。まぁ、セレスが成長したのもあるだろうが……。
凛とセレスをはじめて見た人は、二人を姉妹だと勘違いしてしまいそうだな。
「ねぇ、さっきから聞こうと思ってたんだけどさ、にぃにの抱っこしてるその娘ってにぃにの子?」
眠っているリアンのほっぺを突きセレスが言う。
「いや、屋敷の前に居たのを拾ったら懐かれた……」
リアンの頭を撫でながら俺は答える。
「ふーん、そうなんだぁ。……どうして懐いたんだろうね?」
首を傾げセレスが言う。
「何でだろうな……」
未だに謎なんだよな……何でリアンは俺に懐いたんだろうか。不思議だ。
リアンについて分かってる事と言えば、あの研究所で研究員たちは人工生命体を創ろうとし、様々な生物を組み合わせ人間を創ろうとしたが、実験は失敗、形容しがたい異形なモノが出来上がった。それがリアンだという事。
言わばリアンは初期型の人工生命体、第一世代とでも言おうか。
……研究員達はそれでも実験を辞めず何十年もの間、人間を創ろうと研究し続けた……そして、何十年もの研究の末にリィアレが生み出された……。
……調べ終えた後から疑問だったがたった数十年であれ程ものが作れるのだろうか?
『その数十年でリィアレを創る事が出来た、だからリィアレは人工生命体の最高傑作と呼ばれていた。それで、お前も納得していただろう』
あぁ、確かにそうなんだが……。
やっぱ、どうにも気になってな。
リィアレに聞いても無駄だろうし。
『……今は考えても仕方ないだろうさ』
あぁ……。
「さて、後はヴァイスの事もどうにかしないとな」
あごに手をやり俺は言う。
「また、ケンカ?」
呆れつつも不安そうにしてセレスが言う。
「まぁ、そんなとこだ」
頬をかき俺は言う。
「……大丈夫、だよね?」
心配そうにしてセレスが言う。
「心配すんな、ただのケンカだ」
セレスの頭を撫で俺は言う。
「うん」
未だ不安そうだがセレスは静かに頷いた。
「そんじゃ、一度王都を出るぞ。ここじゃ、迷惑になるからな」
俺は空間移動を使って王都から遠く離れた大地に移動した。
リアンを凛に預けて隔離空間で凛達五人を覆う。
「ここは……そうか、お前の仕業か……ゼローグ」
辺りを見渡してヴァイスが会心した様に言う。
「あの日の続きしようぜ。ヴァイス」
ヴァイスを見据え俺は言う。
「ケンカだと? くだらん、俺は帰るぞ」
ヴァイスはそう言い背を向ける。
「なんだよ、俺に負けるのが怖いのか? ……それもそうか、この世界の頂点である俺に勝てる訳ないからなぁ。逃げ出して当然だ」
立ち去ろうとするヴァイスに向けて俺は言う。
「なんだと? いいだろう! 身をもって知るがいい! 貴様が行方を眩ませた十数年この俺がとうに貴様を超えているという事を……ッ!」
ヴァイスは剣を取り出し鬼の形相で俺に向かってくる。
「全力で来いッ!」
異空間から漆黒の大剣と純白の大剣を取り出し、笑みを浮かべ俺は言う。
俺は二振りの剣でヴァイスの斬撃を受け止める。
ヴァイスは一度俺から離れ、高速の剣技で俺に攻撃をしてくる。
流石に二本の大剣じゃ、ヴァイスの高速の剣に間に合わず、俺は右手に持った純白の大剣を手放し、右腕を曲げてヴァイスの攻撃を受ける。
そして、肩から自分の腕を斬り落とすと同時に、斬った腕の時間を止める。
剣に曲げた俺の腕が刺さった見た目だ。……これで、ヴァイスの剣は剣としての役目は果たさなくなった。
ハンマーとしては使えるだろうが……。
『そのおかげで、噴き出した血が止まらなくなってるだろう』
時間を止めれば問題ないさ。
「随分とデカいハンデになったな」
剣を手放しヴァイスが言う。
「これでも、まだ、ハンデには程遠いさ」
不適な笑みを浮かべ俺は言う。
『龍の手は使わなくていいのか?』
あぁ、片腕だけでやった方がこのケンカ楽しめるだろう?
『相変わらずの戦闘狂だな』
それに、ギリギリのギリギリになるまで戦れば、神の領域に至れるだろうしな。
ククッ、最っ高に面白くなってきだろう?
『戦闘狂の気など私には分からんさ』
そう言うなよ、ルイーザ。
「傲慢だな」
ヴァイスが言う。
「それが、この俺ゼローグ様だッ! さぁ、続きを戦ろうぜ」
俺達は当時に飛び出して行き殴り合う!
一発一発が常軌を逸した拳打、拳がぶつかり合う度に爆音と共に衝撃波が鳴り響く。
殴り殴られ、また殴る。お互いズタボロになる迄、殴り合う。
こっちは片腕な分、ヴァイスよりも速く殴らなきゃ、こっちの攻撃が間に合わなくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ……流石に片腕だけじゃ疲れんな」
肩で息をしながら俺は言う。
「はぁ、はぁ、……ふぅ。……当然だ、こっちは両腕でやってんだぞ」
ヴァイスも肩で息をして言う。
……俺達の殴り合いで地形がかなり変わってしまっている。元の大地の面影もない。
それに、今の殴り合いじゃあ神の領域には至れなかったか……。
つまり、今以上に戦り合えばいい訳だ。
「さて、第二ラウンドといこうか」
息を整えて俺は言う。
この第二ラウンドで必ず神の領域に至ってやる。




