10 幽霊屋敷を探索です
屋敷の中は八岐大蛇が顔を出した時に、穴が八つも出来ていたので、先ずは、時空の能力を使ってこの屋敷の時間を、巻き戻す事から始まった。
「時間回帰」
そう言って俺はこの屋敷の床だけを、来た時の時間まで巻き戻す。
床を巻き戻した後は検索空間を使って、女性が閉じ込められていた場所を、再度確認する。
この屋敷は左右に三つ部屋があり、正面には大きな階段があってそこから二階に行くと、左右に道が別れていて一階同様に部屋が三つある。
女性が居るのは一階の右側の、一番奥の部屋の地下だ。
「女性が閉じ込められている場所は、分かったから行くぞ」
「うん。そう言えば何でお兄は、閉じ込められている女性が、危険だと思ったでありんすか?」
「ここに居た八岐大蛇は食った相手の能力を、自分の物にする事が出来るのに、何でその女性を食わなかったと思う? そもそも何でその女性は閉じ込められていると思う?」
「どうしてでありんすか?」
「それを今から調べに行くのさ」
凛と共に右側の一番奥の、部屋に向かって歩いて行く。
部屋に着き中に入ると床に、地下に通じる階段があって、その階段を降りると女性が閉じ込められている、牢屋みたいな場所に辿り着く。
俺は階段を降りようとすると、凛は俺の服の裾を掴んでこう言った。
「わっちはこの下には、行きたくないでありんす」
狐の妖怪である凜にはこれ以上行くのは、ヤバいと思ったのだろう。
野生の勘ってやつかな?
「そうかそれじゃあお前は、ここで待ってろ」
俺は凛に待つように行った後、念の為に凛を長方形にした隔離空間で覆った後、俺は階段を降りて行く。
階段は螺旋階段になっていて、随分下まで続いていた。
漸く地下に着くと左右に、牢屋のような物が五つあって、女性が閉じ込められているのは、一番奥の真ん中だ。
女性が閉じ込められている場所に着くと、顔はよく見えないけど女性は両手を、鉄の杭で打ち付けられていた。
「そこの方。もしよければ妾を此処から出してはくれぬか」
「あぁ、いいぜ」
そう言い俺は鉄格子に付けられていた、札を取り外し中に入って、両手に刺された鉄の杭を抜き取る。
「やっとここから出られたよ。ありがとう旦那様」
彼女は肩まである黒髪に、とても露出の多い格好をしていて、上半身は胸をさらしで隠しているだけだ。
下半身は裸足に見たこともない、浴衣の様な赤い服を着ていて、腰には大きな黄色いリボンが結んであって、リボンの紐は地面ギリギリまで伸びている。
「手の傷見せて」
そう言うと俺は彼女の手を取り、時空で手の傷を刺される前の時間に戻す。
「手の傷が治った! 凄いよ旦那様!」
そう言って可愛い笑顔で、女性はこちらを見てくる。
「何でここに閉じ込められていたんだ?」
そう言って俺は女性に聞くと、女性のお腹が大きく鳴り、顔を真っ赤にしていた。
「何か食べ物はないかえ? 旦那様」
「ここを出れば飯が食えるけど」
「それなら先に言っておくれよ。そうと分かれば早くここを出よう」
そう言って階段に向かう彼女の腕をつかんで、俺は彼女をお姫様抱っこする。
「――ちょ! 急に何をするんだい! 旦那様」
「裸足で歩いたら怪我するだろ?」
すると彼女は顔を赤くしてこう言った。
「やっぱり、旦那様は変わり者だね」
「そうかな?」
「そうだよ」
そう言った彼女は、少し笑っているように見えた。
俺は彼女を抱えて、螺旋階段を登っていく。
「そういえば名前は何て言うの?」
「妾に名前は無いよ」
「名前が無いと不便じゃないか?」
名前が無いと呼ぶ時に、何て呼べば良いのか分からないからなぁ。
「それじゃあ旦那様が、名前を付けておくれよ」
「うーん……それじゃあ唯はどうかな。あそこに君一人だけ居たから唯一の唯って意味は?」
「唯一の唯。……いい名前だ気にいったよ、旦那様。今日から妾は唯だ」
気にいってくれたようでよかった。
唯は余程気に入ったのか自分の名前を、何度も繰り返し言っていた。
階段を登り切り凛が待っている部屋に着き、隔離空間を解除すると、凛は怒った顔でこう言ってきた。
「今お兄が抱えてるのは誰? 私だってまだ、お姫様抱っこしてもらった事無いのに」
「旦那様。そこにいる生意気なのは誰かえ?」
「え……えーっと」
俺は凛に唯について説明した後、今度は唯に凛の事を説明した後、三人で出口に向かうが凛と唯は、屋敷を出るまで歩きながら舌戦を、繰り広げていた。
屋敷から出ると夜が明けようとしていた。
俺は隔離空間を解除して今までの出来事を説明した後、唯と一緒に皆で宿屋に戻り唯と凛の三人で飯を食べに行ってきた。
こんな朝方にお店がやってるわけがないので、俺達三人はマールの元に空間移動を使って押し寄せて飯をご馳走になった。
「あんなに美味しい物を、食べたのはいつぶりかなぁ」
唯と凛の三人でマールの手作り料理を食べた後、宿屋に向かう時も二人は、激しい舌戦を繰り広げていた。
俺達三人は五人が待っている一号室に着くと、唯は満足したのか俺のベッドに、大の字になって寝てしまったので、アルシア達三人は自室に戻り、梨沙とナナは自分のベッドに寝て、俺と凛は寝るスペースが無かったので仕方無く床で寝る事にした。
朝になり目がさめるとナナは既に起きていて、相変わらず凛は全裸になって寝息をたてていた。
その後、梨沙と凛が目を覚まして最後に、ベッドに寝ていた唯が目を覚ました。
「さて。どうして唯が、あそこに閉じ込められていたのか、教えてくれないか?」
朝食を食べ終えて俺達八人は、部屋に集まって唯が何故あそこに、閉じ込められていたのかを聞いていた。
「うむ。妾は何千年も前にあそこに封印された蜘蛛の妖怪、絡新婦なんだよ。旦那様」
「封印された理由は?」
「分からないよ。強いて言うなら危険だと思われたから、封印されたんだろうね」
「そうか。ありがとな唯」
それにしても幽霊屋敷とは何だったのだろうか。未だにその事について疑問が尽きなかった。
「あの屋敷は幽霊屋敷じゃなくて、妖怪屋敷だったんですね」
メロディアの言った通りあの屋敷には、八岐大蛇と絡新婦の二体の妖怪の屋敷だったのだ。
何で二体も妖怪が居たのだろうか……?
謎である……。
「これから唯さんをどうするんですか? 団長」
「まぁ、一緒に暮らせばいいんじゃないかな?」
「わっちはこんな蜘蛛女何かと、暮らしたくないでありんす!」
「妾だってこんな女狐何かと、暮らしたくないよ旦那様!」
こうしてまた二人の舌戦が始まった。
二人が仲良くする日は来るのだろうか。
それにしても何で八岐大蛇は唯を、食べなかったんだろう。




