01 会いたくない奴ら
レイナとシェリルの二人がここで暮らし始めてから一週間が経った。
この一週間で屋敷には色々な変化が訪れた。
先ず一つは義姉と暮らす事が決まってアルシアとメロディアは、毎日幸せそうに過ごしている。
そして、二つ目は部屋の数が圧倒的に足りねぇ。
この広間も手狭になって来ているのだ。
この屋敷に暮らしている奴の名を挙げると、俺、梨沙、凛、唯、ナナ、アルシア、メロディア、オリヴィア、レイチェル、モニカ、師匠、リーディエット、エスフィール、リアン、リィアレ、レイナ、シェリルの十七人。
……そりゃあ、こんだけ居れば手狭にもなるな。十二神との戦いが終わったら改築でもするか。
次は三つ目、なんとリアンの足が完全な物になったのだ!
最近はリアンの歩く練習をするのが俺の日課になっていた。
そして、四つ目はリーディエットとエスフィールの事だ……。
レイナとシェリルが屋敷で暮らす事が決まり、アルシアはアリストレア王国の事やレイナ達の事を説明すると、他の皆は快く許してくれた……二人を除いて。
この二人はレイナとシェリルの事をまだ許せない様だ。
まぁ、リーディエットは可愛い妹が危険に晒され、エスフィールは怖い思いをしたのだから当然ではあるが……。
俺の時もそうだったが、何かきっかけがあればもしかしたら……。
「ゼローグ殿、少しいいかな?」
神妙な面持ちでシェリルが言う。
「普通にゼローグで良いよ」
俺は言う。
「貴方に幾つか聞きたい事があるんだけど」
空いたソファーに腰掛けシェリルは言う。
「聞きたい事? そうか……ちょうどいい。俺もお前に聞きたい事があったんだ」
リアンの歩く練習を中断しソファーに座り俺は言う。
「先ず一つは君が一体何者なのか……」
一つ目の質問をするシェリル。
「それは聞かなくても、気付いてるんじゃねぇのか?」
今言った様にシェリルと始めて出会った時に、魔剣を使っていたのを見た時点で、俺の正体に気付いていた筈だ。
「それじゃあ、やっぱり君の正体は……悪魔」
シェリルは言う。
「君の本当の名前は何なんだい? ゼローグは偽名だろう?」
続けてシェリルが言う。
本当の名前……つまり、悪魔としての俺の名を知りたいって事か。
だが――。
「それには答えられねぇ」
俺の答えを聞いてシェリルは次の質問をする。
「そうか、それじゃあ、次の質問、何故ゼローグって名前にしたんだい?」
「あぁ、それはなぁ、ゼローグって名は自分への戒めなのさ。過去に犯した過ちを忘れない為に、もう二度と過ちを犯さぬ為に」
そう言うと俺は過去の自分を思い出した。
「ねぇ、ゼロちゃん。それって、どういう事なの?」
俺とシェリルの話しを聞いていたアルシアが会話に混じる。
「ゼローグはゼロとローグ二つの言葉を組み合わせた物なんだよ。昔、悪魔として過ごしていた俺は神々が畏怖する程の強さを誇った。同じ悪魔でさえ俺の力に恐れ一部の悪魔を除いて、俺に近づこうとはしなかった。俺より強い奴が一人も存在しなかった、だからゼロの名を。そして、ローグはならず者や悪党を意味する。冷徹で残虐非道な最低最悪のクソ野郎な昔の俺にピッタリだろう。……そんで、その二つの言葉を組み合わせてゼローグって名前を付けた」
我ながら皮肉な名前を付けたもんだな。
「……それじゃあ、あの短期間でどうやって二人を、臨界突破者に至らせたんだい? 臨界突破は三ヶ月で至れる様な物じゃない。君は一体、どうやって二人を……」
シェリルは過去の俺の事を追及せず次の質問に移った。
「俺は何もしてねぇさ。二人が臨界突破を使える様になるかは懸けだったからな。強いて言えば二人の義姉への想いじゃねぇか?」
アルシアとメロディアの二人の顔を交互に見て俺は言う。
「想い、か……。最後に一つ、他の突破者の居場所は分かっているのかい?」
想いと言う言葉に納得したのかシェリルは最後の質問をする。
「残り十人の内、八人は居場所が分かっているんだが、残りの二人がな……」
あごに手をやり俺は言う。
「それじゃあ、その八人は何処に?」
シェリルが八人の突破者の所在を聞く。
「フィリナ王国、ダグシアン王国、ネストレイブ王国の三国に突破者は三人、併せて九人。残り三人は各地を放浪しているんだよ」
俺は突破者の居場所を述べた後に続けてこう言う。
「そんで、その三人居る放浪者の内の一人が師匠だったのさ」
「そうだったんだぁ」
俺とシェリルの話しを聞いて梨沙は会心した様だった。
十人の突破者達の顔を思い浮かべ俺はこう言う。
「だけどなぁ、どいつもこいつも会いたくない奴らばかりだからなぁ」
「そんなに会いたくないの?」
俺の話しを聞いて梨沙が言う。
梨沙は俺や師匠以外の突破者に会ったことないからな。
はぁ……。十二神、面倒な条件をつけやがって……。
「あぁ、因みに今から会おうと思っている奴は、絶対に会いたくない突破者ランキング第一位の奴だ」
俺は梨沙の質問に答える。
「はぁ、何で一番チョロい奴が一番会いたくない奴なんだ……。やっぱ、会わないと駄目かなぁ。でもなぁ、会いたくないしなぁ。やだなぁ、何でこんな事になるかなぁ」
俺はあまりにそいつに会いたくない為に自問自答を繰り返していた。
「そんなに会いたくないないのかい?」
頭を抱える俺の顔を覗き込みシェリルが言う。
「あぁ、考えただけでも恐ろしい……」
俺は顔を上げ答える。
「そんなに怖い人なの?」
梨沙は同じ突破者の師匠に聞く。
「いいや、誰が見ても絶世の美女と感想を漏らす程の子だよ」
テーブルに置かれたお茶の入ったコップを手に取り師匠は言う。
「えっ……それなら、ゼロは喜んで会うと思うんだけど……」
俺の顔を見て梨沙は言う。
「問題なのは中身の方さ」
お茶を一口飲み師匠は言う。
「どういう事?」
首を傾げ梨沙は言う。
「まぁ、会えば分かるさ」
コップをテーブルに戻し師匠は言う。
「……さて、お話はここ迄にして俺は一人目の突破者を探しに行くが、お前達はどうする?」
俺は話しを聞いていた梨沙やシェリルに聞く。
「私行きたい」
手を挙げて梨沙は言う。
それに続けて凛と唯も手を挙げる。
「わっちも」
「妾も」
「シェリルはどうする?」
シェリルに視線を移し俺は言う。
「私は遠慮しておくよ」
首を横に振りシェリルは言う。
そんじゃ、さっさと探しに行くか。
俺はリアンを抱え三人と共に玄関に行き靴を履き空間移動で王都の広場に移動した。
ここらへんに居る筈だが……。
辺りを見渡していると背後からあいつの声が聞こえた。
ビンゴ!
「会いたかったよぉ、ダーリーン!」
そいつは抱き着こうとするが俺はそれを躱す。
そう、こいつが三人目の突破者、フィリナ王国の騎士、ムリエルプルクラ騎士団団長アイシャ・エイデン……。




