51 いつの日も変わらぬオモイデ
『おい、ゼローグ! 急がないとレイナは本当に死ぬぞ!』
わーってるよ、直ぐに行く……。
今は十二神よりもレイナをどうにかしねぇとな。
俺はアルシア達のいる場所まで空間移動で移動する。
「嫌だよ、死んじゃ嫌だよ姉々……。姉々に話したい事が沢山あるのに……」
両目から大粒の涙を流し震える声でアルシアは言う。
「妹不幸な姉でごめんなさい……最後に一つ貴方に伝えたい事が……」
アルシアの手を取りレイナは言う。
「最後なんて言わないでよ! そんなの聞きたくないよ!」
「アルシア……貴方の事を世界で一番、愛しているわ……。貴方は私の、自慢の、妹……」
アルシアの頬に手を添え涙を流しレイナは言う。
不味い――っ!
刹那、俺は瞬時にレイナの時間を止めた。
そうしないとレイナは死んでいたからだ……。
なんとかギリギリで間に合った様で良かった。これ以上、アルシアの悲しむ顔は見たくないからな……。
「姉々ぇぇえぇええええ!」
レイナが死んだと思ったアルシアが叫ぶ。
アルシア達から一歩離れた所に居た俺は、一歩前に出てこう言う。
「レイナはまだ死んでないぜ」
「え? 本当? ゼロちゃん……」
俺の言葉を聞いてアルシアが初めに反応し
た。
「あぁ、レイナはまだ助かるよ」
アルシアに歩み寄り俺は言う。
それを知ってアルシアは大声で泣き叫ぶ。
シェリルも感極まって涙を流し、小さな声で「良かった……」と呟いていた。
俺はアルシアをそっと抱き締めこう言う。
「レイナは必ず助ける。だから心配すんな」
さて、先ずは場所を移さないとな。
こんな場所じゃあ、まともな治療も出来ないからな。
「王都に行くぞ。あそこならレイナを助けられる」
アルシアを頭を撫で立ち上がり俺は言う。
「どうして王都なの?」
涙を拭いメロディアが聞いてくる。
「行けば分かるさ」
俺は空間移動でアリアがいるであろう執務室に移動した。
俺の予想した通りアリアは部屋で仕事をしている所だった。
「仕事中に悪いな。手を貸してくれるか? 説明は後でするから」
「……分かったよ。それじゃあ直ぐに医務室に……」
事情を察したのかアリアは直ぐに承諾してくれた。
俺達は王宮の医務室に入ると、レイナをベッドに寝かせた。
胸に穴の空いたレイナを見てアリアはこう言う。
「私の宿した神の加護治癒の能力で彼女を治せばいいんだね?」
アリアは既に動きやすい服に着替えている。
準備万端の様だ。
後はアリア任せるしかない。
「さぁ、俺達は部屋を出よう」
俺は残りのメンバーを医務室から外に出るよう促し、レイナの身体にかけた時間停止の能力を解除した。
医務室から出て別の部屋で待ってる時、俺はふと気になった事がありアルシアに聞いてみる。
「なぁ、聞いてもいいか? どうしてレイナの事を姉々と呼ばなくなった事を」
「うん、いいよ。……幼い頃、私はパパやママの絵を描いたり、テストで良い点をとってもパパやママは、仕事が忙しいって私の事を全然見てはくれなかったの。その時はすっごく寂しくて……だから、あの頃はパパやママに私の事を見てほしくて、イタズラばっかりしてたんだ」
壁にもたれ掛かり寂しそうな顔をしてアルシアは言う。
「ハハハ、今とは正反対だな……。それで?」
今のアルシアからは想像ができず笑みを溢した。
「王宮の人が私を叱る中、姉々だけが私の事を褒めてくれたの。その時にこの人は私の事を、見てくれる人だって思ったんだ」
寂しそうな顔をしたと思ったら、今度は嬉しそうな顔をしてアルシアは言う。
「それから姉々は私が勉強に困っていると、こっそり答えを教えてくれたり。宿題を夜遅くまで手伝ったくれたりしたんだ。何時も私を助けてくれて、私の味方でいてくれた。そんな姉々が私は大好きだった。だけど、国を出る時に姉々も一緒に行こうと言ったら、王を守るのが私の役目って言って、一緒来てはくれなかった。それで、私は姉々の事なんか大嫌いって言っちゃったんだ。本当は姉々の事が大好きなのに……」
今度は嬉しそうな顔から、悲しそうな顔に変わりアルシアは言う。
「それが原因で姉々と呼ばなくなったんだな」
アルシアの話しを聞き終えると、部屋の扉を開けたアリアはこう言う。
「ゼローグ、手を貸してくれ!」
「ん? あぁ、分かった」
俺は三人を残して医務室に入る。
「すまない、最善は尽くしたんだが……」
暗い顔をしてアリアは言う。
レイナの遺体の前に行き俺はボソリと呟く。
「俺はまた守れないのか……」
気づいたら俺は両目から涙を流していた。
「ゼローグ……」
アリアは言う。
「俺は、……俺はもう二度と約束を違う訳にはいかないんだよ! もう二度と大切な奴を失う訳にはいかないんだよ! もう二度とあんな思いすんのはごめんなんだよ! もう二度と……俺は……」
レイナを死なせ約束を守れなかったと吐露し俺は叫んだ。
「くっそぉぉぉおぉおおおおおおッッ!!」
医務室に俺の叫びが木霊する。
「すまなかった、私の力及ばず……」
後ろから俺を抱き締めアリアは言う。
セシリア……俺は、お前との約束を破るぞ……。
「……アリア、悪いが今から俺がする事は見なかった事にしてくれ……」
神妙な面持ちで俺が言うとアリアは黙って頷く。
*****
俺は医務室から出て別の部屋に居るアルシア達を呼び行く。
「三人とも医務室に来てくれ」
三人を連れて医務室に入るとそこには――。
「姉々!」
アルシアは最愛の姉の名を呼び、抱き締める。
「アル……!」
上半身を起こしたレイナもまた最愛の妹の名を呼んだ。
二人は滝のように涙を流しお互いの名前を呼び合う。
メロディアはシェリルに抱きつき、二人共レイナが助かったと知って涙を流していた。
俺やアリアも含めここに居る全員が、涙を流し二人の再会を喜んだ。
俺達はアリアに礼を言った後、アリアの手配してくれた馬車に乗り屋敷へと帰る所だった。
俺は馬車は操縦し中から四人の幸せそうに話す声が聞こえてくる。
「そういえば、姉々私達に渡したい物があるって言ってなかった?」
アルシアは言う。
「あ、そうだった! これが貴方達に渡したかった物よ」
レイナは言う。
それに続きシェリルが言う。
「こっちが神弓カストール、こっちが神琴ポリュデウケース。そして、これは二つで一つの神器でもあるの。名は双神ジェミニ」
「渡したい物って神器だったのかよッ!」
驚きのあまり俺は声を上げた。
衝撃すぎるんだけど!
「そうよ? ……はい、カストールはアルに、ポリュデウケースはメロに……」
神器を渡された二人は一層嬉しそうにしていた。
馬車を走らせ途中で休憩を挟み漸く屋敷の前に着いた。
すると、アルシアとメロディアが何かを言いたそうにして俺の下に来た。
まぁ、想像はつくけどな。
「私達、姉々達と一緒に屋敷で暮らしたい!」
やっぱりな。
だけど、エスフィールの事もあるしな、それに何より部屋が足りねぇ……。
今でさえ住人が多くて大変なのだ。
アルシアとメロディアは懇願するように俺を見る。
その二人の姿を見てふと王宮でアルシアが話していた事を思い出した……。
大好きだった姉のレイナと別れる際、アルシアは悲しみに明け暮れた筈だ。
ここで、俺が断ればまたアルシアは悲しい思いを……。
「……はぁ……分かったから、そんな顔で見るな……ただし、条件がある。レイナとシェリルにはこれから毎日、俺と全力で戦り合ってもらうぜ。特にシェリル!」
レイナとシェリルに指を指し俺は言う。
「ありがとう! ゼロちゃん」
「ありがとう! 団長!」
アルシアとメロディアは抱き合ってその場で飛び跳ねていた。
「ありがとう……」
俺の下に来たレイナは言う。
「礼なら二人に言いな」
飛び跳ねて喜ぶ二人を見て俺は言う。
「えぇ、そうね。……だけど、ありがとう」
優しい表情でレイナは再び礼を言う。
……なぁ、セシリア。俺はお前との約束守れたのかな……。
漸く三章が終わった……。
今回のサブタイトル、アルシアとメロディアの二人の姉への想いがサブタイトルになっていて、オモイデがカタカナなのは、いつの日も変わらぬ思い出と、いつの日も変わらぬ想いで、の二つの意味になる訳です!




