49 妹の意地
臨界突破に神の加護無限か、鬼に金棒とはこの事だ。
……それにしても、妙だな……?
『妙? 一体何が妙なんだ?』
シェリルは何で無限を今更使った?
何故、二体一の時に使わなかった?
『それは、無限の力を使いこなせていないのが理由だろう? 今のシェリルがそれを物語っているじゃないか』
確かに今のシェリルはかなり疲弊している。
さっき放った攻撃を続ければ確実にメロディアに勝てるのにそれをしない。
それはつまり、あの攻撃は一発が限界という事になる。
そんな攻撃を二体一の時に使えばシェリルの敗北はほぼ確定だ。
あの攻撃が何発も放てない以上、シェリルが無闇に手の内を明かす筈がない。
自分の首を締めるだけだからな。
だから、一対一となったこの状況で使ったのだろう。
シェリルが無限の力を使いこなせていないと、結論づけるには十分な理由だ。
『それならどうして……』
だが、どうにも引っかかるんだよな……。
メロディアにスキが出来た所を狙って攻撃すれば確実に勝てた筈だ、なのに何故メロディアを警戒させる様な事を……。
『確かに言われてみれば……』
そもそも、どうして俺との戦いで無限を使わなかったんだ……?
いや、それは二人との戦いで対策を立てられるからか……。
それに、もう一つ気になる事がある。
レイナの言っていた目的ってのと、アレを渡すだけって言葉。
『レイナの目的はアルシアと戦う事だったんじゃないのか?』
いや、それはないだろう。
それが本当だとしたら、半年前の戦いで既に目的は果たしていた筈だ。
『それもそうか……まぁ、このまま考えても答えは出そうにないし、二人の戦いを見届けよう』
あぁ、そうだな。
『それに、どうやら私達がシェリルについて話している間に、お互い臨界突破者は解除されたみたいだな』
メロディアとシェリルは息も絶え絶えの中、解放した神器と神の加護を駆使して戦っていた。
まぁ、シェリルは無限の力を使う余裕はないだろうが……。
それに、メロディアのあの様子じゃ限界突破は使えないだろうな……。
戦いながら体力を回復させる事ができれば、限界突破者で勝負がつくんだがな……。
『シェリルのスキをついて渾身の一撃を喰らわせるしかないか……』
あんだけ疲弊してりゃ、お互いスキだらけだけどな。
お互い足下もおぼつかなくなっている。
立っているのがやっとだろう……。
「ふぅ……お互い体力の限界のようだね」
神器で自分の身体を支えシェリルが言う。
「うん、立っているのがやっとだよ。シェリル姉もそうでしょ?」
息を整えメロディアは言う。
「これで最後にしよう」
そう述べたシェリルは魔法陣を展開し、そこから四種の属性を組み合わせた弾を創り出す。
「うん」
それに続きメロディアもシェリルと同様に属性の能力で、四種の属性を組み合わせた弾を創り出す。
お互いは攻撃方法は同じか、姉妹だからこそかな。
二人は同時に飛び出す――。
途端、シェリルは足がもつれその場に膝を突いた!
そのスキをメロディアは見逃さなかった。
「――ッ!」
シェリルはメロディアの放った攻撃に飲まれていった――。
暫くして土煙が晴れるとシェリルは傷だらけになりながらも、嬉しそにしてこう言う。
「強くなったね……」
かなりギリギリだったな。
シェリルが無限の力を使って体力を消耗していたから、メロディアは姉に勝つことができた。
もしかしたら、勝つことが目的じゃなかったのかもな。
『それじゃあ、一体何が目的だったんだ?』
多分だけど、姉である自分達を倒せるくらいアルシア達に、強くなって欲しかったんじゃないかな……?
『確かにそれなら倒されたレイナとシェリルの満足気な顔にも説明がつくな』
四人の所に行こうか……。
俺は隔離空間を解除し四人がいる場所に駆けつける。
そして、倒れそうになったメロディアを支え俺はこう言う。
「お疲れ様」
「うん!」
笑顔でメロディアは頷いた。
二人とも始めて出会った時から本当に強くなった……。
少し離れた所からアルシアとレイナの二人が歩いていて来た。
「アルシアもお疲れ様」
俺はそう述べた後、アルシアとメロディアの頭を優しく撫でた。
『アルシア達が二人の姉に勝てたのは妹の意地なんだろうね』
かもな……。
*****
アルシア達四人の決着がついた頃、天界では――。
「ゼウス……以前、私が貴方に言った事は覚えている?」
跪くゼウスに最高神は言う。
「儂らの代行と彼を戦わせるのですね」
ゼウスは言う。
「えぇ、この戦いであの子が完全な神の領域に至る、もしくは至るきっかけになればいいのだけど……」
最高神は言う。
「それでは儂は彼らに事情を説明しに行きます」
ゼウスは立ち上がりその場を後にした――。




