48 秘策
アルシア、メロディア、シェリル、三人の戦いが激化する中、俺は気を失い地面に横たわるレイナを万が一に備え、隔離空間で覆った。
安全な場所とは言えこの激しい戦いに巻き込まれない保証はないからな。
これなら、確実に安全だ。
ここからはスタミナ戦だ。
体力の尽きた方が負ける。
……それにしてもシェリルの奴、臨界突破者のアルシアとメロディアを相手に互角とはね。
前に戦った時よりも強くなってやがるし。
バケモンかよ……。
『お前も大概だろう? それに、シェリルもお前にだけには言われたくないと思うぞ?』
最強のドラゴンには言われたくないね。
それに、お前と比べたら俺なんて可愛いハムスター見たいなもんだろう?
『猫くらいはあるんじゃないか?』
猫でもハムスターでもどっちでもいいさ。
俺はお前がゲロ強いドラゴンって言いたいんだよ。
『酷い言われようだな』
事実だろう? 強すぎるんだよお前は……。
この世界でお前より強い奴、居ないんじゃねぇの?
『そんな事よりいいのか? アルシア達の戦いを見なくても』
あ……。
ルイーザとの会話を中断しアルシア達の戦いに視線を移す。
三人の攻撃がぶつかる度に地面は抉られたり、クレーターができたりしていた。
もはや元の地形の面影もない。
……アルシア達がレイナ達と戦いを始めてから約二時間が経った。
アルシア達三人が戦いを始めてからで数えると約一時間。
メロディアとシェリルはまだまだ余裕そうだが、アルシアの方はレイナとの戦いに続けて、シェリルが相手の為か肩で息をしていた。まぁ、無理もねぇか。
少し休めば体力は戻るだろうし。
シェリルの臨界突破者の維持時間は以前よりも伸びてる筈だ。
アルシア達の臨界突破者の維持時間の限界は約四時間半、二時間半以内にシェリルのスタミナを削りきらないと……。
「そろそろキツくなってきたかな? アル、メロ」
余裕そうな素振りでシェリルが言う。
余裕そうなシェリルとは打って変わって、アルシアとメロディアは肩で息をしていた。
そしてシェリルはこう続ける。
「ボクの推測通りならその姿を維持出来るのは残り約一時間程だろう。アルはレイナとの戦いで体力を消耗していたし、一時間も保たないのは火を見るよりも明らかだ」
確かに明らかにアルシアは限界に近い、メロディアとシェリルはまだ立てる力があるが、アルシアは地面に片膝をついていた。
レイナとの戦いで体力を消耗し過ぎたな。
「お姉ちゃん、後は私が戦るから少し休んでて」
メロディアが言う。
「……でも」
アルシアは立ち上がろうとするが足元がふらつき倒れそうになる。
咄嗟にメロディアがアルシアの手を取り肩を貸す。
アルシアお前はよく頑張ったよ。
今はゆっくり休め……。
メロディアは少し離れた所にアルシアを寝かせる。
「もういいのかい?」
シェリルは言う。
「うん。続きを始めよう、シェリル姉」
息を整えてメロディアが言う。
「それじゃあ、ここからは全力の全力で行こうか」
全力の全力……魔法を使うって事か。
今の今までシェリルは魔法を一切使っていなかった。
でも何で今何だ? レイナの言っていた目的に関係してるのか?
「あれでもまだ本気じゃないなんて……」
全力の全力と聞いてメロディアはシェリルに畏怖の念を抱いているようだった。
「行くよ、メロ」
シェリルはそう言うと上空に極大の魔法陣を展開する!
「「「――ッ!」」」
おいおい、なんつーでかさだよ。
以前、見たやつよりの倍以上あるんじゃないか?
そして、魔法陣から様々な属性の弾が放たれる!
しかもどれも常識を遥かに逸脱した威力だ!
あの時からどんだけ強くなってるんだよ……。
『正真正銘のバケモノだな……ッ!』
全くだよ……。
メロディアは自分を中心に龍の手を幾つも伸ばしドーム状にして防御する。
豪雨の様な攻撃が止むと、メロディアを覆った龍の手はズタボロになり、中のメロディアが見える。
鎧も一部破損している様だった。
「これが、シェリル姉の全力の全力……」
破損した部分を修復してメロディアは言う。
「そう、これがボクの全力の全力、……ボクの宿した神の加護無限さ。秘策ってやつだよ」
「「「――ッ!」」」
……神の加護だと!?
まさか、神の加護の適合者はレイナだけじゃなかったのか……。
まさかシェリルが神の加護の適合者だったなんて……ッ!
無限か、あの馬鹿げた威力は神の加護を使ったからだったのか。
不味い事になったな……。
メロディアには限界突破者があるが、十秒限定の力だ……。
……ん? まてよ、神の加護? ……て事はシェリルの奴、本気で俺と戦うと言っておきながら、本気じゃなかったって事か……。
シェリルこの俺に嘘をつくとはいい度胸してるじゃねぇか。
この戦いが終わったらこの俺に嘘をついた事を、たっぷりと後悔させてやらぁ。




