46 姉として妹として
俺は四人を一km四方の隔離空間で覆う。
『お前はこの戦い、二人の勝率はどれくらいだと思う?』
十中八九アルシアとメロディアの勝ちだろうな。
お前はどう思うんだ? ルイーザ
『私も同意見だよ』
「……姉々はどんな時でも私の味方でいてくれたよね。そんな姉々が私は大好きだった……。だから、今日は姉々に勝って私の成長した姿を見て欲しい」
レイナと向かい合って、意を決したようにアルシアが言う。
「アル……。お姉ちゃんに勝てるかしらね?」
アルシアを愛称で呼び一拍置いた後、レイナは笑顔で言う。
「絶対に勝つよ……じゃないとこの半年間が無駄になっちゃうから」
そんな二人のやり取りをシェリルは優しい笑顔をして見ていた。
「それじゃあ、お話はこれ迄にして始めましょうか。行くわよ、アルシア、メロディア」
腰の剣に手をかけてレイナは言う。
「「うん!」」
アルシアとメロディアはお互いの顔を見合わせ頷く。
四人は同時に飛び出して行き熾烈な攻防戦が始まる。
半年前に戦った時とは大違いだな。
あの時、レイナとシェリルと戦う事を戸惑っていたのが嘘みたいだ。
あの時と同様、アルシアVSレイナ、メロディアVSシェリルの戦いになっていた。
アルシア、メロディアはシェリルがまだ神器を使っていないので、アルシア達は神の加護を使って戦っている。
『いい感じに戦えているな』
アルシア達の戦いを見てルイーザが言う。
当然だろ? 誰が修行してやったと思ってる。
――が、アルシアはレイナの攻撃を受けて後方に吹っ飛んでいた。
そうでもねぇや。全然、そうでもなかったわ。
『メロディアとシェリルは今の所は互角だな』
あぁ、今の所は、な……。
まぁ、本当の戦いは神器を使ってからだがな……。
さぁて、どうなるかね。この勝負。
「どうして神器を使わないの? シェリル姉」
シェリルに向けて炎の弾を飛ばしメロディアは言う。
「少しでもメロの成長のした姿が見たいからかな」
魔法でメロディアと同じ炎の弾を飛ばしシェリルは言う。
「それじゃあ、よく見ててね! 私の成長した姿!」
笑顔でメロディアは言う。
メロディアの言葉を聞いてシェリルは心底嬉しそうにしていた。
その横ではメロディアやシェリルと同様、アルシアとレイナが嬉しそうにして戦っていた。
四人が戦いを開始してから三十分が経過した。
何方の戦いも拮抗している。
後の事を考えるとそろそろ神器を使った方が良さそうだが……。
「さて、そろそろ神器を使おうかな」
シェリルはそう言うと手元に魔法陣を展開し神器を取り出す。
「神器解放! 全てを従えし魔術の王女!」
シェリルが神器解放した姿を見てアルシアとメロディアは、懐から俺の貸した神器を取り出し、身に着けこう言う。
「「神器解放!」」
「変化する鎧!」
「龍の手!」
シェリルとレイナは眼前のアルシアとメロディアの姿を見て驚いた表情をしていた。
そして、一拍置いた後シェリルがこう言う。
「なるほど、ゼローグ殿から神器を借りたのか……」
シェリルはそう述べた後、俺に視線を移す。
反応からするにこの手は読めなかったか?
いや、そんな筈はないか。
アルシアとメロディアの勝てる可能性があったのは、この方法だけだったからな。
予想できない筈がない。
「行くよ、姉々!」
アルシアとレイナの戦いが激化する一方でメロディアとシェリルの戦いも熾烈を極めていた。
シェリルは無数の魔法陣を展開しそこから火、水、風、地属性の攻撃をメロディアに向けて放つ!
メロディアはそれ等の攻撃を背中から伸ばした龍の手で防ぎ、神の加護で反撃する。
アルシアの方は防御の鎧でレイナの攻撃を防ぎ、神の加護を使って攻撃していた。
自分の攻撃が全て防がれる状況にレイナは歯噛みしていた。
ここからが本番だ。
如何に早くレイナを下し、シェリルとの二体一の戦いに持ち込めるかが鍵になる――。
だが、そう簡単にはいかないだろうな。
アリストレア王国の騎士団団長になる条件が、フィリナ王国と同様ならレイナも神の加護を使える事になる。
そうなったら、少しばかり厄介だ。
『十中八九アルシアとメロディアが勝つんだろ?』
ルイーザは言う。
十中八九だろ? 絶対に勝てる訳じゃないさ。
勝つか負けるかはアルシアとメロディア次第だ。
二人の姉への想い次第だ。
半年の修行でやれる事はやった。
この先どうなるかは俺にも分からん。
『……。私達には祈る事しかできない訳か』
そういう事だ。




