プロローグ 退屈な日常
「またあの夢か……なんで毎日同じ夢を見て、涙を流してんだろうなぁ」
不思議そうな顔をしている、この男の名は九条レイ十七才。
赤ん坊の時、捨てられていた所を拾われて、乳児院から養護施設行き、そこで育てられる。
黒髪の短髪、身長は百七十センチほど。
右目は黒、左目は紫のオッドアイ。
彼は幼少の頃、左目の事を気味悪がられ、高校入学後独り暮らしを始め、それ以降寝る時以外はカラコンを付けている。
「まぁ、考えたってしょうがねぇか、早く着替えて学校に行こ」
そう言い準備を整え学校に行く。
今日からまた彼の平和な一日が始まる。
平和はいい事だ、だけど余りに平和すぎると、人は退屈になる。
「なんか面白いことおきねぇかなぁ」
学校に行く途中そんな事を言ったレイ、後にその一言が現実になる事は、今の彼は知る由もない。
その後、学校に到着し靴を履き替え、自分の教室に向かう。
教室に着き自分の席に座り、授業が始まるまで本を読む。
何時もと何も変わらない。
彼の席は窓側の一番後ろの席だ。
……あっという間に時間が過ぎ、一時間目の授業が始まる。
「起立、礼、よろしくお願いします」
一時間目の授業が終わり二時間、三時間と授業を終え、あっという間に放課後となった。
教室の掃除の準備をする人や、帰る準備をする人がいる中、教室に一匹の猫が入ってきた。
「なんで学校に猫がいるんだ?」
教室にいる生徒や担任教師が不思議に思っている中、その猫は、レイに近づいていく。
「にゃあ」
猫はレイに向かって鳴くと、突如光輝きはじめ猫の姿から少女になったのだ!
身長は百六十センチほど。
目の色は黒、黒髪のポニーテールに、胸元のあいた黒を基調とした、メイド服を着ていて胸の谷間が、見えている。
「お久しぶりです。ご主人様!」
少女となった猫は嬉しそうに、笑顔でレイに言った。
「猫が人になった……」
光に気づいて他の教師や生徒が、レイの居る教室に集まりはじめる。
「何事だ?」
「それが、さっき来た猫が光輝いて、この子になったんです」
「あの、色々と聞きたいことがあるんだけど」
レイは冷静になってそう言ったが、内心とても嬉しかった、この子が猫から人になると言う、常識外れな事をしたことで、彼の退屈な日常を壊してくれたのだから。
「はい、何でも聞いて下さいご主人様」
「ご主人様って俺のこと?」
「そうですよ」
「えっと、君は一体何者?」
レイは猫だった少女に聞く。
「私は、ご主人様を連れ戻す為に、異世界から来たご主人様の、メイドにございます。ナナとお呼びください」
教師や生徒は静かに、二人の会話を聞いていだが、レイを連れ戻すと聞いて、一人の生徒が会話に交じる。
「九条くんを連れ戻すってどう言う事? 異世界って何なの?」
そう言ったのはこのクラスの、学級委員長の柊梨沙。
身長はナナよりも少し高い。
目の色は黒、髪型は茶髪のハーフアップ。
一部の髪を上げて残りを下げるスタイルだ。
教室に居る教師や生徒たちは、うんうんと頷いている。
「順番に説明しましょう」
と言って異世界について、皆に説明し始めるナナ。
「異世界とは、文字通りこの世界ではない、別の世界の事です」
「それじゃあ、九条くんを連れ戻すと言うのは?」
ここに居る全員が、聞きたかったであろう事を、梨沙が聞いた。
「率直に言います、ご主人様はこの世界の人間ではありません」
「この世界の人間じゃないから、連れ戻すの?」
「噛み砕いて説明するとそうなります。ご主人様を連れ戻す理由は二つ、一つはさっき説明した通りです」
「もう一つは?」
レイが聞くとナナは続きを話しはじめる。
「ご主人様の本当の名はゼローグ、フィリナ王国最強の騎士にして、フォルティッシムス騎士団団長なのです。ご主人様が何故記憶を失い、この世界に来てしまったのかは、私には分かりません」
淡々とレイの正体や、この世界にレイが居る理由を語るナナ。
「ご主人様にはもとの世界に戻って、七十二柱の悪魔と悪魔たちを率いる、十二人の魔王と戦ってもらいたのです」
「面白ぇ」
そう言い不敵な笑みを浮かべるレイ。
「それでは一緒に来てくれますか?」
「行くに決まってんだろ! だが、一つ聞ききたい何で猫から人になったんだ?」
レイはこの場の全員が、聞きたかったであろう事をナナに聞いた。
「それは、私が神の加護擬態の適合者だからです」
「神の加護?」
「神の加護については、元の世界に戻ったら説明します」
「そうか、じゃあ行こうぜ俺の居た世界に」
「二度と戻ってこれませんよ」
「構わないさ」
「では、行きましょう私達の世界に」
ナナが言う。
すると、何もない所から空間の裂け目の様なものが、現れる。
「この中に入って少し歩くと、私達の世界に着きます」
「すげぇな」
そう言い、裂け目の中に入ろうとした時、梨沙が大きな声でこう言った。
「待ってよ! 勝手に話を進めないで!」
梨沙が急に大きな声を出したことに、びっくりするレイや教師や生徒達。
「急に大きな声出すなよ」
「私も連れて行って」
「連れていけるわけ無いだろ」
「何がなんでも一緒に行くよ」
「何でそこまで一緒に行こうとするんだ!」
「貴方の事が好きだから!」
さっきよりも更に大きい声で言う梨沙。
その一言に驚き一瞬固まるレイ。
「だったら条件がある、俺の出す命令すべてに従うこと」
「うん」
「この意味がわかってるのか? 俺が逃げろと命じたら逃げ、俺を殺せと命じたら俺を殺すんだぞ」
「うん」
梨沙は決意を固めて力強く頷いた。
「はぁ、この条件は飲まないと思ったのになぁ……仕方ねぇ、来いよ」
一人で行くことを諦め梨沙にそう言うレイ。
「ナナ、行くぞ」
「はい、ご主人様」
こうして三人は空間の裂け目に入り、レイのいた世界へと向かうのであった。