7話 『疑問』
少女は、紫色の瞳をしていた。父親と同じ瞳の色だ。メルは母親に似てグレーだった。髪の色も、少女は銀色だった。それも父親譲りだ。メルは金髪である。
僕って美人だったんだなぁ
そんなことを1人で考えていた。今はどんな女性に成長しているのだろう?
人形使いの頂点に立つ、ハントハーベンマスター
想像がつかないな...
1年後、前世の僕は、世界を滅ぼす...
たくさんの人を殺して...
処刑される...
その前に僕が、彼女を暗殺する...
そして、世界を救い、僕の呪いも解かれる...
言葉にすれば簡単だ。だが、現実はそう甘くはない。
色々な情報を集め、僕自身も強くならなければならない。
前世がマスターなら、僕だってなれるはずだ!
そして、彼女を止めなければならない!何としても、必ずやり遂げて見せる
僕は心に誓った
「おまたせー!夕食にしようぜ!」
勢いよく、メルが飛び込んで来た。本当にメルは元気がいい
「何見てた?」
メルは僕が眺めていた写真を覗き込む。
「これ、俺が5歳の時のだ! 隣が、さっき話してた姉ちゃんのリヒト! 3つ上なんだ、懐かしいなぁ」
メルは目を細めて写真を見つめた。
「メルはいくつなの?」
僕は何気に聞いてみた。
「15歳、ミコトは?」
「同じだ、僕も15になったばかりだよ」
「偶然だな! 俺ら、親友になれそうじゃん!」
メルは嬉しそうに笑った。
じゃあ、前世の僕は今18歳か、名前は リヒト
よし!
「本当だね! 僕ら親友だ! これからずっと! あらためて、よろしく、メル!」
僕も笑顔で答えた。
下に降りると、いい匂いがただよっていた。メルのお母さんがご馳走を用意してくれたらしい。メルも手伝わされたと、階段を下りながらぼやいていたが、いつもの事らしい。
「さあ、さあ、座ってちょうだい! 夕食にしましょう!」
テーブルに置ききれないほどの料理が並んでいる。どれも美味しそうだ!
「いただきます!!」
僕とメルは、競うように料理を平らげた、こんなに楽しい食事は久しぶりの事だった。
「育ち盛りだものね、たくさん食べてね、おかわりもしてちょうだいね」
メルのお母さんはコロコロ笑った。本当に優しくて朗らかな女性だった。
デザートには手作りのお菓子が用意された。カップのチョコレートケーキ、苺のタルト、アップルパイだ。
僕は苺のタルトをとってメルに渡した。本当に、無意識だった。
メルは驚いた様子で
「なんで、苺のタルトってわかったんだ?」
と、言い出した。
「え?好きだよね?それ…」
そこまで言って、ハッとした。
「何でしってる? 俺、さっき話したっけ?」
メルは不思議そうに僕を見る。
「あ、ああ! 何となく、メルは苺のタルトかな? って、思っちゃって、僕、案外、カンがいいというか...」
「すげーな、ミコト! 大当たり! やっぱ、親友だわ!」
メルは感心したように、タルトを頬張りながら笑った。
「だろ?」
僕も、笑いながら答えた。
良かった、メルが単純で、でも、無意識だった。前世の記憶がメルの好みを覚えていたのだろうか?
僕は、少しずつではあるが、何かが変わっていくような気がした。