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未来を繋ぐハントハーベン  作者: 小雨 紫音
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3話 『呪われた過去』

その刹那、血まみれの床に魔法陣のようなものが現れた。青白く光っている!

僕は恐れおののきながら、動かない体を引きずり後ろへと下がろうとした。すると、魔法陣の真ん中辺りから白い手が伸びてきて、僕の足首を掴んだ!


「うわっ!!」


僕はそのまま、魔法陣の中に引きずり込まれて行ったのだった。




ロウの焼けるような臭いがする。どうやら、冷たい床の上のようだ。立て続けに何が起きているのか、理解しようにも、思考が止まっていて、動けずにいた。


「やっと、みつけた!!」


「初めまして、だわね!」


甲高い、少女の声


僕は固まったまま、声のする方を見た。

綺麗な金髪の華奢な少女が微笑みかけている。

なんだろう?これも幻覚かな?


「やだ! 怪我してる! まさか、ゲートを抜けてきたせい?!」


少女は、僕に駆け寄ってきて、心配そうに傷の状態を確認してきた。

近くで見ると、ちょっとつり目のグレーの瞳にすらりとした鼻だちで、なかなかの美人だった。


「いっ、いや!!これは、違うから!」


僕はドギマギして少女の手をさえぎった。


「そうなの?でも、酷い傷!向こうで手当てをしましょう。」


そういうと、少女は、僕の手を引いて、隣の明かりのついた部屋へと連れて行った。

振り返り、今、僕がいた場所をみると、石の床に魔法陣が描いてありロウソクが立てられていた。ロウソクの炎が、不気味にゆらゆらと揺れている。


「ここに座って!早く」


少女の言うがままに、だまって、椅子に腰をおろした。少女は救急箱みたいなものを抱えてきて、手当てをはじめた。


「自己紹介が遅れたけど、私、メルって、言うの。よろしく。あなたの前世の妹なんだけどね。」


「へ?」


僕はほんとに間抜けな声を出してしまった。この子は何をいいだすのだろう...


「実はすごく嬉しくて、もう、倒れそうなの!だってね、千年もかかったの!あなたを見つけるの。奇跡としか言いようがないわ!異世界とのゲートがつながるなんて!」


うん?

異世界...

ゲート...

千年?!


どの単語も全然しっくりこない。マジでこの子、何言ってんだろう...


メルは僕の頭に包帯を巻きながら、どんどんヒートアップしていく。


「私は前世の記憶を継承しながら転生を繰り返してきたの!この世界を取り戻すために!ずっと、研究を続けてきたのよ、千年もの間!!わかる?」


わかる?って、言われても...


「服脱いで!」


「...えっ?」


「早く、血まみれで、気持ち悪い!」


「あ、あぁ、すみません……」


僕は、メルが持ってきてくれたタオルで体を拭いて、白い麻布で作られたような作務衣っぽい服に着替えた。


「それで、どこまではなしたっけ?」


「千年も、研究してた…って」


「そうよ!そうそう!今、この世界はモルテっていう化け物だらけなの、私たち生き残った数人が森の奥に結界をはって、そこで必死に今まで生きてきたの!なんで、この世界が滅んだかわかる?」


いやいや、絶対わからないでしょう。僕には...

そう、返したいのをぐっとこらえて、首を振る。


「あなたのせいよ!」


「へぇ??」


僕はまたもや、すっとんきょうな声を出した。


「はい!手当て終わりー」


メルはそう言うと僕の顔を見てニッコリ笑った。


「あ、ありがとう…」


 僕はモゾモゾと小さい声でお礼を言った。

メルはちょっと悲しそうに微笑むと、また、話をはじめた。


「いつもね、あなたが転生した場所は突き止めるのよ。でも、どうしてもこちらの世界とは繋がらない。そうこうしているうちに、あなたはいつも殺されてしまう。

 今回は間に合ってよかった。でも、どうして、ゲートが開けたんだろう?なにか、ゲートを開く鍵でもあったのかしら?」


「あの…どうして、僕はいつも、殺される?のですか?」


素直に疑問に思ったことを口に出した。


「あなたにはね、呪いがかけられているの。もがき苦しみながら死んでいくという呪いがね。15歳になると、発動するのよ、どんどん不幸が襲ってきて死に至るの。」


僕は、ゾッとした。では、母が死んでしまったのも

僕にかけられた呪いのせいなのか?


「ど、どうして、そんな呪いを僕が…」


「あなたが、過去に犯した悪行のせいよ。あなたは、大勢の人を殺した。たくさんの人に恨まれたのよ。そして、呪いをかけられ処刑された。」


 僕はそんなに酷い人間だったのか……だから、こんな苦しい思いをするのも当然だというのか..

突然に色々な情報が頭の中に飛び込んできて、うまく処理できないでいる。今のこの状況もすこしづつではあるが、理解しようとはしているものの


えっと

さっきまで僕は、健二に縛られ、バットで叩かれて…

それから…

それから…

健二が突然、苦しみ出して…


血を吹き出して

し、し、死んだ……



「うわぁぁぁ!!」


急に現実に引き戻された!

そうだ!あの男は、僕の目の前で血を流して、死んだんだ!


「ちょっと!大丈夫?!」


メルが、慌てて僕の手をとり落ち着かせようとした。


「に、人形が…」


そう、僕が口にした途端、メルの顔色が真っ青になった。僕から、素早く離れると、警戒したような目つきで睨んできた。


「まさか……つくったの?!」


メルの言葉は想像もしていない質問だった。


「まさかね!あなたの能力は、呪いと一緒に封印してあるんだから……」


呟くように、小さな声でメルは言った。


能力?封印?


「いや、僕は人形なんか、作ってないよ、あれは幻覚だったと思う。」


 突然のメルの怯えように何だか、不味い事を言ったような気がして僕はそう誤魔化した。

メルは暫く黙ったまま、こちらを見ていたが、気をとりなおしたように、微笑んできた。


「ねえ、お腹空いてるでしょ?」


そうだった。ぼくはもう何日も食べ物を口にしていなかった。


「うん!!実は、何も食べてなくて、お腹ぺこぺこで死にそうなんだ!」


僕は素直に言った。


「ちょっと、まってて。」


メルはそう言うと、食事の支度をはじめた。僕は、椅子に座り部屋を見渡した。木造づくりの古い家だった。彼女以外人の気配は感じなかった。


「ここには、どれくらいの人が住んでいるの?」


台所の奥の方でメルの声がした。


「もう、今は、私1人よ……」


「そう…なんだ」


メルは、テキパキと食事を作り、テーブルへと運んできた。シチューと、サラダ、お肉もあった。とてもいい匂いがする!僕は生唾を飲み込んだ。


「どうぞ、お腹いっぱい食べてね。味は、保証しないけど。」



「いただきます!」


僕は夢中で頬張った。温かな食事、すごく久しぶりの事だった。嬉しくて、涙が溢れてきた。


「泣くほど、美味しかった?」


メルは、呆れた顔で僕を見て笑った。


たらふく食べて、久々に満腹感を堪能した僕は、さっきからずっと引っかかっていた事を聞いてみることにした。


「あの、どうしてメルさんは千年もの年月、僕を探していたのですか?なんで、この世界に僕は連れてこられたのですか?」


もっともな質問だと思う。まさか、今更、何も知らない僕に責任を取れとでもいうのだろうか……


メルはお茶を一口飲むと、真っ直ぐ僕を見て話しはじめた。


「私は未来を変えたいの。この、血塗られた最悪最低の世界を平和だった頃の幸せだった日々を取り戻したい!」


「私はずっと、解決策はないか、研究を繰り返していたわ。そして、過去に戻ることの出来るゲートを作り出すことに成功したのよ。」


「でも、このゲートには、弱点があったの。過去に戻ろうとすると、必ずあなたが暴走するちょうど1年前にしか戻れないの。私が過去に戻ったところで、あなたを殺すほどの力は持ち合わせていなかった……」


「何人か試して見たけど、誰1人としてあなたを殺すことは出来なかった。」

「う、うん…」


過去の僕をみんなで殺そうとしてるんだな。なんだか、複雑な気分だ……


「暴走する前にあなたを殺してしまえば、世界は滅ばないわけだし、あなたも恐ろしい呪いをかけられて、ずっと苦しみ続けることもなくなるわ。この、任務をこなせるのは世界であなた1人だと思うの!」


「はい?」


僕は飲みかけていたお茶を吹き出しそうになった。


「待ってくれ!言いたいことは少しは分かるけど、僕は何の取り柄もない一般人なんだよ?その、過去の世界を滅ぼすような恐ろしい奴を倒せるはずがない!!」


「それは、十分承知の上よ! でも、もう、あなたに託すしか方法がないの! 過去のあなたも今のあなたも、一緒の人物じゃない? 出来ないことはないわよ」


僕は横に首を振る。


「いやだ...! 僕をもとの世界に帰して! そんなの、絶対無理!」


「帰ったところで、あなたは呪いのせいでまた、苦しむことになるのよ? あなたには、もう、死しかのこってないのよ!」


それも、イヤだ!イヤだイヤだイヤだ!!僕には選択肢が残されてはいないのか?!


「お願い!この世界を救って欲しいの!私は千年も待ってきたのよ。お願い……」


「あなただって、呪いから逃れるチャンスじゃない!現世に戻ってきたら、未来が変わってるかもしれないのよ?」


未来が変わる?

未来が変われば、もしかしたら、母さんが殺されてない未来がある?

あの男から母さんを救える未来があるかもしれないのか?


どうせ、暗黒の未来しか残されていないなら、チャレンジしてみるべきなのか...


僕の気持ちは揺らぎはじめた。本当に僕で僕自身を殺せるのか?可能なのか

どうせ駄目元でもやらないよりはマシかもしれない!

もう、僕には失うものは何ものこっていないのだから。

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