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Lv.0の出産準備再挑戦

 母親経験値0な、母親業LV.0な私は、さっそく分からない事は経験者に尋ねるのが一番だと思い、子供が居る知り合いや親に、赤ちゃんの道具について聞いてみた。その結果――。


「ベビーベッドは、ほとんど物置で使わなかったかな。でも下の子ができたらいるよ。上の子がさわりたがるから」

「首が座るまでは一緒じゃない方が安全だよ。潰しちゃうと怖いし」

「ベビーベッドじゃなくて、自分の隣で寝かしていたよ」

「ハイローチェアはうちの子は嫌がって全然使えなかったかな」

「○○ちゃんの所は、日中はハイロ―チェアに乗せていたし、便利みたいよ。抱っこし続けるのも大変だし、ゆすれば泣きやむから」

「ハイロ―チェアとか、すぐに使えなくなりますよ」

 

 ……あれれ? おかしーな。

 何だか同じ商品の話をしているはずなのに、意見が真っ向からぶつかっちゃってる気がするんだけど。名探偵もびっくりな、真実は一つじゃない状況に、私の脳みそは早速ぷすぷすと煙を上げそうになる。これが推理小説なら誰かが嘘をついているになるのだろうけれど、もちろんこんな事で私に嘘をついてメリットがある人は一人もいない。

 聞いた相手は皆子育て経験ありの人達なのに、ベビーベッド一つでも使った、使わなかったと意見が分かれてしまった。何でだ?

 

 落ち着いて考えれば分かる事なのだけれど、大人の性格が十人十色であるように、赤ちゃんも色んな性格の子が居て、成長いたってはそれぞれかなり差があるのだ。ハイロ―チェアでぐっすり眠れる大物な子もいれば、母親の抱っこでなければ眠れない繊細な子もいて当たり前。そして赤ちゃんを育てた経験がある方と言っても、育てたのは自分の子だけで、テレビ番組で取り上げられるような子沢山の大家族でなければ、一人か二人、多くても三人程度。なので、意見は自分が育てた子供に対してどうだったかになる。

 だから感想はその子供の性格がどうだったかで変わってしまう。


「――と、いう具合で、いるかどうか分からないんだけど。子供の買い物どうしよう」

 職場の人や友人に色々聞いて回っても、結局答えを出せなかった私は、まず旦那に相談をした。

「俺も分かんないし。でも、まだ早くない? 買ってもどこに置いておくの?」

 ですよねー。

 私が母親LV.0なら、旦那も同じく父親LV.0なのだ。未経験同士、要るのか要らないのかなんて答えを出せない。そしてまだ、父親になる実感がわいていなかった彼は、赤ちゃん用品なんて必要ないと思ったようだ。

 どこに置いておくもなにも、最終的にはどこかに置かなければならないのだけれど、旦那も私も仕事が忙しく、そのスペースを作る時間も中々取れずにいた。このころの私は、産休を取るべきか辞めるべきかで悩んでおり、さらに会社の方が色々新しい事を始めてゴタゴタしていたので、そちらばかりに気を取られ、中々出産準備に時間を裂けずにいた。最悪、産む前日まで勤めるのは難しいだろうし、会社を休んでから準備しても大丈夫だろうと、性別が判明してすぐに赤ちゃん用品店へ行ったわりにのんびり構えていた。


 とはいえ、LV.0同士が話し合った結果だけで動くのは流石に怖い。0+0は0なのだ。なので私の母親にも相談をした。

「ベビーベッドもハイロ―チェアもあった方がいいわよ。私も色々用意してもらったもの」

 そう言って、色々母親が使っていた品を紙に書き出してくれた。中には買って貰ったけれど、結局使わなかったものもあったそうで、やっぱり初めて買いそろえる時に完璧な結果を出すのは難しいようだ。

「それとね、こんな言い方はあれだけど。赤ちゃんがちゃんと産めるかどうか分からないから、あまり早くに買いそろえておくのは良くないわよ」

 母親に言われて、私はこの時初めて、この妊娠の結果が必ず出産に繋がるとは限らないのだと気が付いた。

 どうやら私の祖母が死産を経験しているようで、とてもその事を悔やんでいたらしく、私の母もそれを心配したようだ。実際私の周りでも、流産をしてしまったと言う話はけっこう聞いていた。

 妊娠するだけでも奇跡なのだけれど、妊娠しても無事に生まれるまでは何があるかは結局誰にも分からない。だからちゃんと産めるという事は当たり前の事ではなく、まぎれもない奇跡なのだ。


「……うん。分かった」

 私は死んでしまうかもしれないなんて言わないで欲しいと思うよりも、ちゃんとお腹の子が産まれる為の事を、私はできているだろうかと反省した。

 仕事をしていた方が家にいるよりも体を動かすから出産の時に楽になると聞いていたので、私は妊娠してからも仕事を続けている事はいい事だと思っていた。実際私のようなタイプが家に居たら、一日中ネットをしたり漫画や小説を読んでダラダラ過ごし、食事も適当になると思うので働いていた方が赤ちゃんの為にもいいだろう。でもそれと赤ちゃんの事をそっちのけで仕事の事ばかり考えているのは違うなと思えた。何もしなくても生まれると思っていたけれど、何もしなくて生まれなかった時に私は後悔せずにはいられないだろう。

 なのでプレママの勉強会的なものを全てサボっていた私は、次の産院での勉強会には出席しようと思った。最終的にその勉強会も出席しそびれ、一カ月後にすみませんと謝って参加させてもらうぐらい、結局仕事ばかりしていたのだけれど、それでも参加しなければと思える程度にはちゃんと自分の中に響いた。


 と、ちゃんと反省はしたけれど、私は元来のんきものだ。

 旦那に買うのは早いと言われ、母親にもあまり早く買わない方がいいと言われた為、まだ買わなくてもいいかと思い色々分からないものは購入をせず放置した。

 放置して、放置して、だんだん予定日が近づくにつれ、とうとう母親からまだ買わないのかと言われ重い腰を上げた。最終的にベビーベッドは出産一週間前に購入したぐらいゆっくりだった。

 その時、同じくのんびり構えていた旦那に、「産むとすぐ動けないだろうから、寝室に入る大きさ計って、私と息子がアパートに帰る前に買っておいて」と頼んだ結果、こりゃ不味いと思ったようで、無理だから日曜日に一緒に買いに行こうと言われ、慌てて買う事になった。

 店の人は私の大きなお腹を見て、もうすぐ出産ですかとたずねられ、予定日は一週間後ですと言ったら

少しギョッとされた。偶々予定日になっても生まれていない方が来店されていたので、あの方も中々産まれないそうですよと誤魔化されたけれど、たぶん今更ベッド?!と思われたと思う。

 

 そんなのんきものな出産準備だったけれど、チャイルドシートとベビーカーとハイロ―チェアと、ついでに抱っこ紐の購入だけはちょっと早かった。

 というのも、チャイルドシートは絶対必要だけれど、そこそこいい値段がしていたので、ちゃんと下見に行こうと旦那を休みの日に連れ出したからだ。

 しかしLV.0が二人そろっても、やっぱりLV.0なので、結局違いが分からない。ぐるぐる見て回るけれど初回戦の時の様に全然進まないので、店員に声をかけて、チャイルドシートの違いをたずねた。

「もうすぐ発売のこのチャイルドシートは0カ月から使えるのでいいですよ。さらに同じメーカーのベビーカーももうすぐ発売で、この形だと前向きでも対面にでもどちらに出もなる上に、オート四輪で小回りが利くんです。やってみて下さい。それにオート四輪タイプはとても重いんですが、これは比較的軽いんです。それに、今ご予約するとキャッシュバックがメーカーからありまして、このベビーカーには抱っこ紐がそのまま取り付けられるんですよ――」

 ……店員さん。

 貴方は神様ですか?!

 さっぱり分からないLV.0にとって、店員の言葉はまさに、この業界のすべてを知り尽くした猛者の発言に聞こえた。ベビーカーの向きなんてどれも同じでしょと、根本から分かっていなかった身としては、協力な助っ人だった。

「ハイロ―チェアはですね、この二台が最新式で入眠率も他のよりもいいんですよ。どちらもNO.1となっていますが、これはアンケートの取り方が違ってですね、病院でよく使われているのがこちらで、母親からの人気が高いのがこちらですね」

 おおおっ。

 そうなのか。これを使えばそんなによく寝るのか。ん? でもそんな一日中これで寝かせてもいいの? 日中使うものだと思たけど、そもそも赤ちゃんってどれぐらい寝るんだろう? 聞くのは恥ずかしいし、後でネットで調べよう。


 とはいえ、店員は商売人。普通に考えて、商品の悪い事なんて言わないだろうし、高くて最新式をできるだけ売ろうとするだろう。

 しかし、LV.0にはそれを正しいかどうか判断する材料がない。

 でもこれらは最初から買うと決めていたし、まあ、これでいいかと思う事にした。

 言われた事が本当なのかを一から調べるのが面倒だった私達は、結局言われるままにホイホイと購入した。結論から言えば、チャイルドシートなどは息子に弟か妹ができた時も使うつもりなので、最新式を買っておいて正解だったとは思う。それにこの場で即決していなかったら、きっとベッドと同じく出産一週間前にようやく動いてどうしようになっていた気がするので、良かったのだろう。

 ただし、大勢の福沢諭吉様とお別れする事になったので、結構痛い出費だった。

 ここで一つ大きな失敗した事と言えば、呑気ものの私達は、買って満足してしまい、早めに買った事もあって、そのまま放置してしまった。その為、退院日に慌てて旦那がチャイルドシートを取り出し、アレ? これってどうやって使うんだと苦戦する事になったのだった。

 装備品の事前確認は大切である。


 そんなこんなで、LV.0の出産準備再挑戦は進んで行き、気がつけば結局主産後に慌てて追加で買る事になったのだった。 

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