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LV.0の出産準備初挑戦

 子供が生まれるまで十月十日。突然の目まいという体調不良で妊娠発覚した私は、比較的早めに子供を授かった事に気がつけた。

 病院で教えて貰うままに母子手帳を貰いに行き、さあ、いざ出産準備だ――といきこんでみたけれど……。


 はて。一体何が必要なんだ?


 出産にあたって人それぞれ色々問題が出て来るとは思うけれど、私の場合は、まずそこからだっただった。

 ぽんと私の生活に一人家族が増えるわけだけれど、赤ちゃんというのは一体何が必要なのだろうと首を傾げる。想像してみたけれど、赤ん坊と一緒の生活なんて、弟が生まれた時以来だ。ちなみに弟とは3歳差なので、その頃の私は赤ん坊に毛が生えたぐらいの幼児だったので、もちろん記憶にない。

 良く分からないけれど、とりあえず赤ちゃん用品を売っている場所に行けばイメージがつかめるだろと、下見がてら色々買おうと一人で行ってみた。


 行ってみて分かった事は、見て回っても、赤ちゃん用品売り場は未知の領域で、さっぱり分からないという事だった。流石に初めての職業母親はこちらへなんて、チュートリアルなんて存在しない。誰だって初めてというタイミングはあって、初めての出産なんて人はこの世の中にゴロゴロいる。だから一人でも行けば、それなりに何とかなるだろうと思っていたのだけれど、子供にほとんど関わらずに生きてきた女の想像力欠如を甘く見てはいけなかった。

 手始めに分かりやすそうな子供服売り場に行ってみたけれど、大量にありすぎてどれがいいのか分からない。生まれるのは、7月頃になるから、夏服が必要だと言うのは分かる。性別も男だろうと分かっていたので、選ぶなら青か黄色あたりだ。でも……色だけじゃなくて形状も色々あるんですけど、何がどう違うの?

 これは下着? それとも普通の服?

 あれ? おむつのCMの時、赤ちゃんってパンツ丸出しじゃなかったっけ?

 ふらふら見て回ったが、疑問ばかりが浮かぶだけで、私には自分の息子が服を着ている姿を想像する事ができなかった。 

 

 普通に考えれば、紙おむつのCMだからパンツ丸出しになっているわけだけれど、この時の私は赤ん坊はマジで半裸のパンツ丸見えで生活しているに違いないと思っていた。なので、流石にパンツ丸見えで外出するわけにはいかないから、ロンパースという股下をボタンで留めている服を外出着にするのだろうと考えた。だからこれは買っておいても問題はないはずだと。

 よし買ってみようと決めてから、次に出てきた疑問は産まれたばかりの子供はどれぐらいの大きさなんだろうという事だった。

 サイズはSやMという表記ではなく、80㎝とか100㎝などの㎝で表記がしてある。なんだか、色々あるけれど、どのサイズが正解なんだと私は首を傾げた。考えに考え、たぶん一番小さい80㎝を買って行けば正解よねと、私は初めての子供用品のお買い物として、80㎝のロンパースを2着購入した。

 

 さて、その戦利品の結果は――1歳を超えた息子が、ようやく今下着として使っている。

 そう。80㎝と言うのは、おおよそ1歳ぐらいの子供の身長なのだ。そしてロンパースは、ハイハイをするようになった子供が下着として使ったりするものだった(別にハイハイ前の子供が外出着として使っても問題はないけれど)

 この時の私は、新生児は別コーナーが設けられていて、更に首や腰が据わる前と後では着るものが違ってくるという事も分かっていなかった。


 次に見て回ったのは、チャイルドシートやベビーカーコーナー。

 とりあえず、チャイルドシートだけは出産後退院時に必ず必要になる物だから、買わなければいけないよねと見に行ったのだけれど、そのコーナーにたどり着いた私は、ピシリと固まった。ん? 何か思ったよりたくさん種類があるんですけれど。

 安全なものが使いたいけれど、どれがいいの? 何が違うの? 

 金額も安くはないので、服のように思いつきでは買えない品だとここに来てようやく私は気が付いた。最終的に財布の中身を確認した私はとりあえず、保留にしパンフレットを持って帰る事にした。こうなったらネットを見ながら旦那や親に相談しようと。

 ピシリと彫刻の様に固まっていた私だったが、他のお客の邪魔にならないように選ぶのを放棄し、チャイルドシート達の前から移動した。

 それにしても、子供用品だからそれほど高くないだろうと思っていたのだけれど、その考えはとても甘かった。子供用品はしっかりお高い買い物だ。子供が赤ちゃんでいる時間なんてとても短くて、チャイルドシートなんて10年も使うわけでもないのに、何でこんなにするのか。安全を買うためびお金だとは分かっているけれど、色々散財が辛い。赤ちゃんの道具は一から集めなければいけないから、全部買いそろえた時には、一体いくらになる事か。

 他のものも見ていこうと、ハイローチェアや子供椅子、おまるにおもちゃに、風呂用品と見て回るが、結局どれも必要なのか、それともあった方が便利だよねレベルなのかさっぱり分からない。しかも家はアパートだ。こんなに沢山の赤ちゃん用品を置けるのだろうかと心配になる。

 赤ちゃん食事コーナーもあったけれど、……母乳? 粉ミルク? あれ? どうなの? どっちも必要なの? と大人と同じものは食べられないだろうなという事ぐらいは分かっていたけれど、赤ちゃんの食事がどんな感じなのか分からない。

 粉ミルクは母乳が足りなかったら買えばいいのか。あれ? でも、産んですぐに買いに行く事は出来るのだろうかと、自分の状況も想像できない。 

 赤ちゃん用品のお店に滞在すればするほど、今までの人生経験なんてまったく役立たない現実を突き付けられ、こんな何も分からない状態でちゃんと子育てできるのだろうかと不安ばかりが積もって行く。なんだろう、この未知の場所は。

 新しいロールプレイングゲームなら、必要な装備を揃える為にウロウロ時間をかけて探すか、攻略本を見て時間短縮するのだけれど……そもそも出産準備のための攻略本があるのかないのかさえ分からない。


 初めての買い出しでは、かなり長い事、店の中をウロウロウロしたにも関わらず、結局疲れただけで、ほぼ何も買わずに逃げ帰る事になった。どう考えても、失敗である。

 一体どうしたらいいのか。

 少し考えて私は出産経験がある人に聞いて回る方法を選んだ。ロールプレイングゲームだって、町の人に聞いて回るのだから、きっと子供がいる人なら完璧な答えを知っているはずだと。

 既にくたくたで、できればもう行きたくないとまで思ってしまったけれど、初めての赤ちゃん用品売り場を体験した職業母親LV.0は、出産準備リベンジ戦を覚悟するのだった。

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