9話 ギルド
そよかぜ亭の炒飯定食をペロリと平らげた僕はそろそろ情報収集に移ろうと考えていた。
「ごちそうさまでした!」
「私にも何か言う事ない? 二重の意味でね」
セリーナが笑みを見せる。
その笑みが妙に怖いです。
二重の意味?
2つもあったかな?
ここへ連れてきてくれたことに感謝してる。
しかしほかに思いつかない。
ジョークにしてはよく分からないから何か意味があるはず。
「本当に思いつかない?」
「思いつかないです」
僕は大事な何かを忘れているような…
「じゃあ聞くけど、あなたお金は?」
「マジでご馳走になりました‼︎」
失念してた。
今現在、無一文じゃん。
そういえば爺さんはちゃんと旅の資金入れてくれてたかな?
ああ、せめてさっき確認しておけばよかった。
「借り1つ、ね」
「…はい」
これは文句は言えない。
まさかここまでの策士だったとは、侮っていた。
生温い環境で育ったが故に遅れをとるとは……
「うふふ。セリーナちゃん、そろそろ可哀想だよ?」
「そうね。ごめんごめん、嘘だよ。ここへ連れてきたのはさっきのお礼がしたかったからなの」
お、お礼?
借りができた事は、まあこういう事もあると諦めてたし、そもそもお金の事忘れてたし、薄々悪ノリしてるなぁとは思っててわざとオーバーリアクションをしてたけど、なんでそのノリに乗ったんだっけ?
「美味しそうに食べてる姿を見たらなんかからかいたくなっちゃって、ついね」
ゴメンね! っとウィンクするセリーナ。
あざと可愛い!
っとそろそろ本題に入らないと!
「ソフィちゃん、今時間ある?」
「カルタがソフィを口説いてるぅー」
セリーナが横から「小さい女の子が良いのね」とか言ってくるけど違いますからね!
うっ急に寒気が!
なんかいきなり周りから痛い目線が刺さるような気がする。
気のせい、だよね?
「ち、違うよ。まずは身近な人から情報収集しょうかと思っただけだよ。それで、どう?」
考え込むソフィちゃん。
セリーナと違いソフィちゃんは仕草が可愛らしい。
なびく尻尾とピクピク動く猫耳触りたいと思うのは僕だけではないはず。
「えっと今は父さんに少し時間をもらっているけど、まだ今はお客さんが多いしそろそろ戻らないと。1時間もすればお客さんも減ると思うのでその時で良ければ」
「ありがとう、十分だよ」
こうして僕らはソフィちゃんと1時間後に落ち合う約束をして、ひとまずそよかぜ亭をあとにした。
「これからどうする? どこ行きたい?」
う〜む、どうしようかな?
とりあえずはアレかな。
「旅でよくお世話になる場所を教えて」
「カルタならそう言うと思った。それじゃあ冒険者にとって必要不可欠な場所へ行きますよー」
おっこれは、予想が正しければアレがあるはず!
ゲームとかでも重要な場所のアレだろう。
「お願いします!」
セリーナについて行くこと数分後、3階建の大きな建物の前まで辿り着いた。
『冒険者の巣窟 どんな依頼も報酬次第で引き受けます』
ギルド ウィルドン王国支部【ウィンドブレーカー 】
ギルドきたーーーーー!
「うぉーー! ギルドだ! やっぱここだよねぇ」
テンション上がるわ!
「はしゃぎ過ぎじゃない? でももうさすがにこのリアクションにも慣れてきたよね。これはこれで残念かも」
セリーナが溜め息をついている。
どうかしたのかな?
「どうかした?セリーナ」
「え?ああいや、なんでもないです」
どうして敬語に?
まあいっか。
僕らはギルドに入った。
右側に受付窓口が幾つかあり、あそこがクエストの手続きなどをするところらしい。
右奥には武装した者たちが何人かいる。
依頼の掲示板があるみたいなので後で見に行ってみようかな。
左側はちょっとした酒場になっていたり、テーブルや椅子がたくさんある。
左奥には別の掲示板がある。
「左奥の掲示板はなに?」
「あれはね、パートナーとかパーティの募集をしているのよ。結構あの掲示板を活用する人は多いみたい」
なるほど、あの掲示板を使えばその土地の冒険者とパーティを組んだりできそうだな。
詳しいことは受付で聞けばいいか。
僕は近くの受付窓口に座った。
「あのーすいませーん」
すぐに奥から犬顔のスラッとした女性が現れた。
「どうされました?」
いかにも受付の人って感じがする人だ。
「ギルドについて詳しく聞こうと思いまして」
「わかりました。あなたは冒険者になられる方、ということで宜しいでしょうか?」
「ええまぁ。ただ今日はギルドとか冒険者がどういうものか知りたいので伺いました」
「は、はぁ」
まぁそうなるよな。
一般常識的なことを聞かせろ、と言っているのと同じだからね。
例えば、『学校って何か教えて下さい』みたいな感じに思われてるのかな。
絶対頭おかしい人だと思われてる。
そこでセリーナが僕の横に来てフォローをくれる。
「この人はワケありで今は我々の客人なのです。怪しい者ではないので安心して下さい」
「ひ、姫様⁉︎ そ、そうですか。姫様がそう仰るなら間違いはありませんね」
おお、さすがお姫様。
なんか勿体無い身分の使い方の様に思えてきた。
早くこの世界の事を、特に一般常識を覚えなければ。
セリーナのおかげで僕への警戒心が薄くなったところで説明を始める受付の女性。
「それではギルドについてお話ししますね」
ギルドは、冒険をする者の旅のサポートや情報の提供などの支援をする機関です。
依頼者が報酬を出して仕事を冒険者へ依頼したものがクエストです。
クエストはジャンル別に分けられ、それぞれに番号が付けられています。
冒険者は受付で手続きの後クエストが開始ですが自分のランク以下のクエストしか受けられません。
クエストの依頼は貴族でも、農民でも、商人でも、冒険者も出来ます。
冒険者には身分の証明になるプレートがあり、ランク分けがされています。
ランクは下からレッド、オレンジ、グリーン、ブルー、インディゴ、バイオレットとなっており、基本的には皆レッドから出発です。
昇格するには一定数のクエストを完了する等により、昇格試験を合格すことが必要ですが、レッドから オレンジに上がるのに試験はありません。
また、特別なランクであるブラック・ホワイトという存在もいます。
ブラックは指名手配、ホワイトは英雄だと思って下さい。
冒険者には特典があり、特定の宿屋で料金が割引になることがあります。
「――という感じです。」
なるほど、色でランク付けされているんだな。
特典とかもあるし、冒険者って結構優遇されているようだ。
「ありがとうございます。よくわかりました。あ、最後に冒険者になるにはお金って必要ですよね?」
入会金はこういう所でも発生するハズ。
「ええ、ギルドへの入会金として銀貨3枚が必要です。もし著名な方の紹介状があれば銀貨1枚と銅貨7枚に割引です」
「ふむふむ、なるほど。了解です。少し時間がかかりますが今度冒険者申請しに来ますね」
国王に頼んだら書いてくれるかな? それよりお金の価値がわからん。
とにかく資金も必要だしバイトもした方がいいかな。
「え?カルタは今申請しないの? 資金ならコッチで工面するよ?」
それではだめなんですよ。
「さすがに客人という立場で何でもかんでも甘えたらダメだと思うんだ。少しずつでも自分でやらなきゃ」
「うーん、そういうものかな? 甘えられるときに甘えた方がいいと私は思うなぁ」
これが日本人って奴なんですよ。
ってわからないよな。
受付のお姉さんにお礼を言い、僕らはギルドをウロウロと見学し満足した後に頃合いを見てそよかぜ亭へと向かった。
ソフィちゃんはケットシーと人間のハーフでセリーナの1つ下です。
ギルドの詳細は、機会があればもっと詳しい設定資料を出した時にお見せします。
色々と設定にはこだわっているつもりです。
さて次回、ソフィちゃんにインタビュー!
あ、いや、安心してください。ロリコンじゃないですよ?
それからもし、こうして欲しいという展開など要望があれば出来る限り取り入れます。
別にアイデアはまだまだありますが自分以外のアイデアも聞きたいと思いまして…