19話 恐怖の果てに 後編
やべぇ、進まねぇ
僕はいつの間にか、地面で寝ていた。
土埃を全身に被っている。
僕は霞む目をゆっくりと見開ける。
さっきまで首を一つ刈られ苦痛に悶えていたケルベロスが、こちらを見ている。
刈られた首からは、泥が血液の様に流れ出していた。
この状況は何なんだ⁉︎
今しがた態勢を整えるため立ち上がった、ハズだ。
それにしても体が、特に腹部が妙に暖かくて寒い。
変な感覚だ。
「は、はは。何なんだよ、何で……」
腹部に手を当てて見てみると……
真っ赤だった。
赤色の絵の具を握りつぶしたかの様に赤い。
“血”だ。
感覚を、痛みを再び認識するのは容易だった。
「あ、あああ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」
痛い。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い!
「痛ぃ! 怖ぃ! ……死にたくないよぉ‼︎」
死への恐怖。
故に心からの叫び。
慢心していた自分に後悔する。
「ああぁ、ああぁ、痛ぃ、痛いょ。はぁ、はぁ、たす、けて」
誰に求めている訳でもないが、助けられたいと言う本能がそう言わせていた。
腹部には2つの穴が空いていた。
内臓もいくつか損傷あるいは貫通しているのだろう。
十中八九ケルベロスにやられたのだ。
油断から生じた致命傷。
治療しようにも僕は回復魔法は使えない。
使えていたとしても、今の不安定な精神状態では発動出来ていないだろう。
使える人はこの闘技場にいるだろうが、結界があってこちら側に入ることは出来ない。
ああ、死ぬのか……
痛い痛いと叫ぶのとは裏腹に、頭の中ではさっぱりしていた。
どうしてこんなことになったのか。
声の主は一体何者なのか。
謎は多いが残念ながら見たかった様々なものや風景、旅が出来なかった。
せっかくのチャンスだったのにな。
友だちもたくさん出来たのにな。
もう、何も出来ないもかな。
ケルベロスは今までで一番醜く笑っていた。
そして僕の方へゆっくりと時間をかけて歩み寄る冥界の番犬。
―――私の見込み違い、だったのかしら? 前の彼は本当に優秀で私を出し抜くことのできた唯一の存在だったけど、結局はそのまま逃げられちゃったのよね。そして今回は、失敗っと。嫌ね、長生きの弊害? それともまだ、楽しませてくれるのかしら?
ケルベロスは僕の目と鼻の先で止まった。
二つの顔が僕を見下ろしている。
前脚を振り上げた。
でももし、一つだけ我が儘が言えるなら、僕は……
生きたい。
生きて世界を旅したい。
僕の大切な友達と一緒に。
「―――だから!」
パリン、と割れた音がした。
とりあえずこんにちは、オムレットです。
あはは、辛い。
そんなことより、次回で闘技場の闘いは終わりです。
ホント、バトル ムズカシイ。
はいじゃあ次回!
とうとうこの闘いも決着。
このまま勝つのはケルベロスか?
それとも……
お楽しみに〜




