17話 恐怖の先に 前編
2話連続のつもりでしたが、少し遅れました。
申し訳ない。
「試合、開始!」
騎士団団長ユーフリートによる開始の合図とともにバトルウルフが動き出す。
様子をうかがう様に外周から少しずつ詰めて来る。
迂闊に視線を外そうものなら勢いよく迫って来て食い殺される、と感じるほどのプレッシャーがひしひしと伝わって来る。
僕の装備は騎士見習いの制服と支給品のショートソード、セリーナから貰った治癒のネックレスだけだ。
魔法も練習して一般人が使えるレベルのものなら使えるが、まだ自在には扱えないのであまり期待できないだろう。
僕も様子を見つつ同じように外周を回り距離を一定に保つようにする。
両者にらみ合いが続いていた。
会場の客もとてつもない緊張感を感じてか誰も騒いだりしないために静かで、僕とバトルウルフの足音と息遣いだけが聞こえる。
いつ襲ってくるか分からない恐怖で震える手を必死に抑え、向かって来れば返り討ちにしてやるという意思を的に発信する。
しかしただの虚勢がそう長く効果が続くと思えない。とはいえ自分から動けば返り討ちに遭うだけだ。
額から汗が流れる。
不意にバトルウルフが足を止める。
来るか⁉
「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
闘技場全体の大気が大きく震える。
手足の先からまで脳や心臓、全身に伝わる獣の咆哮が僕を襲う!
反射的に両手で耳を押さえ剣を落とした。
肩に力が入り体が強張る。
うわっ!
足が竦み後退ってしまった。
そのすきを逃すまいとバトルウルフはものすごいスピードで突っ込んできた。
ヤバい!
殺される!
武器を拾おうとすれば食われる。
かと言って動こうにも変に力が入って上手く体が動いてくれない。
バトルウルフはあと数メートルのところで右前足を振りかぶり、顔をめがけて振り下ろす!
ザクッ
「い、生きてる……」
攻撃が来る直前に足が滑って倒れたので首が飛ばずに済んだ。
見上げるとバトルウルフの爪が壁に刺さって抜けないようだ。
逃げなきゃ!
離れないといけないのに、体が震えて起き上がれない。
――――かわいい坊や、私が助けてあげる。
「こ、この声は……」
あれ? 震えが止まった。
でも、ズキズキと頭が痛い。
どうなったのか分からないけど、助けられたみたいだ。
今のうちに武器を拾って離れよう!
体を起こし、爪を抜こうともがくバトルウルフの腹の下をくぐって十分に距離を取った。
「だれかは分からないけど助けて頂きありがとうございます」
助けられたんだから礼を言ったがどこにいるのか分からないのでその場でつぶやいた。
――――構わないわ。私はいつでもあなたを見ている。
頭痛が嘘のように消えた。
一体誰なのか分からないし、前にも一度声を聞いた気がする。
しかし今はありがたい。
まだ震えは止まらないが今は恐怖だけじゃない。
怖気づいていたら勝てないし殺される。
戦わなきゃ!
バトルウルフは壁から爪が抜けたようでこちらに向き直った。
後ろ足を蹴って勢い良く向かって来る!
後退りたくなる気持ちを押さえ、しっかり敵の動きを見る。
今度は飛び上がり両前足を広げている。
ここか!
僕は手のひらをバトルウルフの顔に向け、一瞬だけ目を瞑り叫んだ。
「魔法【ワインド】‼」
この魔法は風を起こす魔法なのだが、まだ調整が出来ない僕は出力制限が効かないので必要以上の強さの風を放ってしまう。
しかしそれが僕の狙いだ。
凄まじい威力の暴風がバトルウルフの顔面に直撃し真っ逆さまに落ちる。
よし、今だっ⁈
身体から力が入りづらい。
そうか!
制限の利かない魔法を撃ったからその分の魔力も消費して、そのせいで脱力感に襲われているのか。
よろけている間にバトルウルフは体勢を立て直して、後ろに下がった。
よく見ると徐々に腹が大きくなっている。
まさか、また咆哮か!
僕も全力で下がり、壁を背にして両手で耳を塞ぐ。
だが今度は敵をしっかりと見逃すまいと目を見開く。
「GUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
うぐぐっ!
そしてさっきと同様に向かって来て右前足を振りかぶる。
さっきとシチュエーションは同じ。
動けなくなるほど怖い。
怖いけど、今は違う。
前へ! 前へ進め!
恐怖で強張りそうな足を強引に動かす。
ザクッ
バトルウルフの爪が壁に刺さる。
今だ!
僕は件を構えて魔法陣へ勢いに任せて突き刺す。
ブスッ
「?! GYAAAAAAAAAaaaaaaa!!!!」
さっきの咆哮ほどではないが近くにいる為か、振動が凄い。
ううっ!
しかし、ここで怯んでしまえばせっかくのチャンスが水の泡だ。
「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
力の限り剣を差し込む。
―――――凄いわねぇ坊や。よく頑張ったわ、ご褒美よ。
うっひょーーーー!
バトルだーーーー!
あ、すいません。オムレットです。
待ちに待ったバトル回。
難しい!
普通にストーリーを書くのも大変なのにバトルがこんなにも難しいなんて思いませんでしたよ。
おかしくないですか?
何かおかしな文やこういう風にしたら良い、という事があれば是非ともいただきたいです。
これまでの話も何かあればお願いします。
それでは次回、一体声の主は誰なのか、何がしたいのか、カルタ君に一体何が起きるというのか!
お楽しみに!




