13話 騎士団 2
ふぇーースランプになりかけた。
先ほどの熱き語らいの中で僕が「身を守れる程度の力をつけたい」と言っていたら、なんとユーフリート直々に指南してくれると言うので、僕ら2人は武器庫に移動した。
手始めに武器の説明を受けた後、自分に合った武器を選んでいる最中である。目の前には剣やメイス、槍やアックスなど様々な武器が並んでいる。
「さあカルタ、どれを使いたい? どうせなら使いたい武器で戦いたいよな。どれを選んでも問題無いぜ、俺は指導も1級品だからな」
「こんなに堂々と自画自賛する人初めてだよ。そうだなぁ、使いたいっとなると、やっぱり刀だけどショートソードにしようかな」
僕の答えが意外だったのかユーフリートは目を丸くした。
「それでいいのか? お前ならもっとバスターソードとかクレイモアとか大物を選ぶかと思ったぜ」
カッコいいんだけどね、実用性のある方が僕は好きなんだ。
「それも好きだけど、デカイし腕力がないから支えられないしスキが大きい。僕は重い一撃より小回りの利く手数の多い方を選ぶよ。実用性のある方が好きなんだよ」
「そうか、それがお前が選ぶ武器なんだな。それじゃあ今日からビシバシ鍛えてやるぜ!」
「お、お手柔らかに」
稽古をつけてくれるのはとてもありがたいのだが、どうにも生きていられるか心配だ。
そんな心配をよそにユーフリートは「ちょっと待ってくれよ」と、目の前に並べているものではなく後ろに整備されているラックからデザインの違うショートソードを僕に渡す。
さっきの剣はシンプルな騎士団で支給されている武器だったが、渡された剣はデザインがさっきより凝ったものだった。それになぜか手に馴染む。
「これは?」
「これはな、そんじょそこらの安物とは違う業物だぜ。ぶっちゃけて言えば団の支給武器より良いもんだ。私物だがお前にやるよ」
ほほほ、本当ですか⁉︎ マジですか!
「え、ええーーー! いいの? 一生懸命集めてたんだろ 。いきなりこんな良い物貰ってしまって勿体ないような気がする」
素人には釣り合わない代物だ。これは俗に言う宝の持ち腐れとか豚に真珠だろう。
「構わないさ。武器ってもんは使ってナンボの道具だぜ? ただの飾りじゃなきゃ使ってやりたいんだ。だからそれはお前が使ってくれ。ただし……」
随分勿体振り、最高に良い笑顔を見せるユーフリート。
あ、はいはいお馴染み、嫌な予感がするなぁ〜。
僕は呆れ半分諦め半分の溜息をついた。
「はぁ〜」
「露骨に嫌な顔するなよ! ひでぇーな。それでまぁカルタには、騎士見習いになってもらう!」
騎士見習いだと? 何を言っているのだこの人は。
「まだピンと来ねーようだな。説明しよう! 騎士見習いとは騎士になる為に必要な前段階の事である。これにならないと騎士になれないんだぜ。将来の保険を掛けておいたんだから感謝しろよ」
むむむ、なんとも言えない。
「でも雑用とかさせられるのでしょう?」
「いや、俺が認めさえすればいつでも騎士にしてやるから問題無いぜ。ただしーー相応の実力を身につけられたらの話だ」
デスヨネー
「分かった。なるよ、騎士見習いに」
「じゃあ決まりだな、この剣はお前のだ……っと待てよ。良いこと思いついたぜ」
えっまた⁉︎ この人普段は寝ることと悪知恵が働くことしか出来ないのかよ。
「この剣はやっぱ俺が良いと言うまでお預けだ。頃合いを見て試験をするから合格したら正式に授けるさ」
ああ、結局こうなるのね。
名残惜しいがこの剣を返却する。
仕方ない、こんなことされたんじゃユーフリートの度肝を抜かすほど上手くなってやるしかないじゃん!
僕の闘志が静かに燃える。
ある程度やる事を終えた僕ら2人は、まだセリーナ達がいる芝が綺麗に整えられた稽古場に戻った。もう何回目なのか分からないが、セリーナはヨハンさんと手合わせを続けていたので、ひと段落するまで僕らは2人を見ていることにした。
セリーナもヨハンさんもすごい打ち合いを繰り広げている。これだけでは互角にも見えるが、必死さを隠しているセリーナと余裕を見せるヨハンさんではその実力差は素人の僕にも分かった。
ついにセリーナが打ち負け膝をつく。同時にヨハンさんがセリーナの喉元に剣先を向ける。決着がついたらしい。
決着がついたことを確認してから僕ら2人はセリーナたちのそばへ向かった。
「こんなの初めて見たけど迫力が凄いなぁ。セリーナもヨハンさんも強いね」
「なかなか良かったぞ姫、ヨハンはいつも通りだな。まぁカルタには良い刺激になったろうな」
僕らは2人に労いの言葉を贈った。
本当に凄かった。今までは本の表現力をイメージしたり、アニメーションや映画の演出では見たことがあったが、実際に目で見ると気迫の伝わり方が全然違う。演技の世界か現実の世界かの違いもあるだろう。
2人の労いにセリーナはあまり良い顔はしない。ヨハンさんはいつも通り笑顔だ。
「あまり嬉しくないよ。副団長様はまだまだ余裕だったでしょ! くーやーしーいー!」
地団駄を踏み悔しがるセリーナだが、僕からすると十分凄いと思う。相手は副団長で相手に余裕があったとしても付いて行ける力がある。年齢差や経験の差があるだろうに食い付いて行く粘り強さは尊敬する。
あれ? 僕はセリーナより4歳も年上なんだけどなぁ。別に精神年齢が低いとかそんなんじゃないんだからね。
そうだ、生まれ育った環境のせいにしておこう。
「姫様はまだ左の脇が開いています。下段からの薙にも弱い。指摘すべき部分は沢山あります。今の私に勝つなら後5年は欲しいですね」
「うう……」
おおっと手厳しい。ヨハンさんの顔から笑みは消え真剣な表情をしている。セリーナは俯いてしまったが、この厳しさが今後自分の命を守る力をつけて欲しいという優しさなのだろう。
僕もこれからこんな世界に踏み込もうとしていたのか。改めて気を引き締めないと!
しかし、セリーナの凹みように耐えかねたのかヨハンさんは笑顔を見せこう言った。
「はぁ、仕方ありませんね。1つだけ褒められるとすれば、攻撃に対する反応速度です。スキはあれど攻撃に反応し対処しようとする姿勢は上達しました。あとは技術を向上させ、スキを減らすよう心掛けて下さい」
「本当ですか……やった!」
褒められたセリーナ小さくガッツポーズをする。
「さあカルタ、お前には姫様より強くなってもらわないとなぁ。あんなの見せられちゃ男としては負けられねーよなぁ。女性に守られる男って、格好悪いよなぁ」
ユーフリートが隣で厭味ったらしくつぶやく。一言一言が僕の心に粘着質な棘が刺さる。
ぐぬっ、言ってくれるじゃないか、ちくしょーーーーー!
「わわ、分かってるよ。それくらい、よ、余裕だし。クソーーーーー!」
「ほほう、余裕とな。覚悟しろよ、俺はヨハンほど甘くはないぞ。さあさあ俺たちもやるぞー!」
そう言ってユーフリートはいつの間にか持って来ていた2本の木剣の片方を渡される。
そりゃさすがに初めから真剣でやらないよな。
ユーフリートから木剣を受け取る。
「カルタ君、団長の稽古を受けて無事で終えられた者はいませんから死ぬ気で頑張ってください。でも、安心してください。強くなれること(と毎回逃げたくなること)は保証しますよ。私も団長に1から叩き込まれた者の1人です」
いま小声でさらっと聞きたくない事実までも聞かされたぞ。
ウィンクをしながら「応援してます」と言うヨハンさん。貴方だけはまともだと信じていたのにそんな憐れみを貰っても全然嬉しくないですよ。
この気持ちを晴らすためにセリーナからありがたいお言葉を頂こうかと思い、さっき居た所を見たが居らず、団員が稽古している所からテンションの高い声が聞こえた。セリーナはヨハンさんから褒められたことが相当嬉しかったのか自慢して回っていた。
ああ、団員の方々の顔が引き攣っている。でも良かった、彼女の残念な姿に引くのは僕だけじゃなかったんだ。
なんか別の意味で安心してしまった。
さぁ特訓の始まりだ!
「とりあえず柔軟体操やってから俺考案のスペシャル基礎体力コース3セット後に素振り100本。それから………」
訂正、さぁ地獄の特訓の始まりだこのヤロー!
この話の後半をボツにしたので大変でした。危うく話が進まず鬱展開に入りかけたのでヤバかった。
さて次回……お楽しみに
思いつかなかった。




