歓迎会
ややすると僕を乗せた不審船は島に着いた。
「あっちぃ」日差しが東京と違う。着の身着のまま。裸足の僕は取り敢えずスウェットの上を脱ぎTシャツ姿になった。スウェット上は腰に巻きつける。僕の数少ない装備だ。
同じ船には僕と同じ境遇だと思われる人が二人居た。コミュ症の僕は声をかけることも出来ず、僕らはそのままトボトボとメイドの後について行く。
「ここです」そこは廃校であった。僕ともう一人は裸足であったので運動場の水飲み場で足の裏を洗ってからスリッパを履いた。入り口に待たせた感じになっているのでやや急いで戻ると。
「急いで戻ってくるなんて、エッラ〜イ」
「えっ」
「ご主人様達には心遣いが出来るようになってもらいますよ〜」
「は〜い」一人だけ靴を履いていた引きこもり仲間が片手を上げて返事をした。こいつ何?
僕達が戻るとメイドは僕らを食堂に案内した。なんでも、歓迎会が開かれるのだとか。
歓迎会と言っても先輩は居なかった。塾生は船で到着した僕ら三人が全て。自立塾側もメガネのメイド長とポケモンのタケシのような大人の男。それと紅茶を運んできたメイドの三人だけである。
「これで全員ですか?」
「うちはあっとほーむが売りでねぇ」「それとメイド」
「自立塾への補助金も打ち切られちゃって、誰もこんな離島まで来てくれないし」なるほど。
「そこで拉致監禁と」
「そこ、人聞きが悪い」ビシっと注意された。
「あのアトラクションには毎度シビレるでゴザルよ」身悶えしながら眼鏡の山下っぽい生徒が何か言っている。メイドに手を振って手を振り返されたりしてるし。
「山下さんはうちの常連でね」
「自立失敗してるじゃん」
「きみきみぃ、パトレイバーの熊耳さんは定期的にレイバーの免許試験受け直してたでしょ。あれと同じ感じよ」「よしっ」あまり良くないと思う。
「まぁ、うちも経営が軌道に乗ったら山下さんにはご遠慮願うけどね」「ヒギィ」なんか身悶えてますけど。
僕はもう一人の丸メガネをかけた囲碁を打ちそうな刈上げ頭の塾生へと目を向ける。
「…」「…」会話の取っ掛かりさえ無い。
「はい、そんな感じでお腹も空いているでしょうから、お食事にしましょ」
「わーい」全身で喜びを表現する山下氏。
運ばれてきた食事はオムライスにカフェラテ。ピザもあるけどこれって冷凍じでしょ。プラスチックの容器に乗ったドリアも運ばれてきた。僕は思わず温泉ペンギンとエビスビールを探した。
まぁ、元々美食家でも無いので淡々と食べる。山下氏はメイドのケチャップアートに大興奮。もう一人の刈上げ眼鏡は青白い顔して表情を変えること無く黙々と食べていた。ドローンを飛ばしたいのかな??