匂ひ
「詩のにほひ」
このにほひを 何に例へん
息のつまる 熱いため息を
血の沸きたつ 燃える思ひを
このこころを 何に例へん
管の内より 数多の針が
壁をつらぬかんと 尖先をのばす
このちからを 何に例へん
天地かへりて 風囁き
湿った影を 照りつける
この流れを 何に例へん
鼻につきて 心地よく
肺をつかみて 砕かんとす
このかほりを 何に例へん
このにほひをば 何に例へん
「影」
手をのばし
掬ひしものは
たゞの土くれ
その影の
欠けることなき
ありのまま
これなんぞやと 我問ひしかは
光り無きことと ひとの言ふらめ
「竹林」
虫の音 風の声
この音は何を呼ぶものぞ
この声は誰を導くものぞ
緑の重なり
そのまた奥の
開けた光
我は何を望もうぞ