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アマオト  作者: SHIRANE
3/4

Section1 「明日」


『昨日は今日の記憶。明日は今日の夢。』 詩人 ハリール・ジブラーン


■2029年2月26日 11:40■

「はい、筆記用具を置いて後ろから回収をして下さい」

チャイムと同時に先生がクラス全員に促す。

クラス全員が一堂に会し、チャイムと同時に終わりを告げる行事。

こんな書き方をしたら、大体の行事が当てはまる事はさておき…。

『学年末考査』が終わりを告げ、各々が輪を作り集まっている。

春一も荷物をカバンに直して伸びをしていると、夏雫が駆け寄ってきた。

「テストの出来、どうだった? 私はイマイチだったよ―」

そういう事を言いながら、顔はニヤニヤしている。

「お前がそういう顔してる時、ろくなことないな…」

「それより、負けた時の事忘れてないでしょうね?」

ずいっ、と顔を寄せて来て一瞬ドキリ。

したのを表には出さず、話に慌てて答える。

「遊びに連れて行けってやつだろ!」

まるで言質を取ったかのように勝ち誇って春一に言い放つ。

「もう準備しておきなさいよ。春一に勝ち目何て万が一もないから!」

確かにそうだが、一応反論はしておく。

「でもな、もしかしたら……」

「冬佳はテストどうだった?」

「聞けよ!?」

春一には目もくれず、次は冬佳にテストの出来を聞いている。

そこに、別の意味でニヤニヤした秋希がやって来た。

「そうか…ついに春一もデレたか…」

「おいシュウ、少し顔貸せよ。向こうで…話し合おうぜ?」

「冗談じゃんか! これでも喜んでんだぞ?」

仲の良さそうに(実際良いが)している春一たちを横目に、

春一番が吹き抜けていく。

例年より少し早い…と朝のニュースで言っていた気がする。

春の訪れを肌で感じる、そんな季節が始まった。


■2029年3月5日 10:00■

「嘘だろ……」

春一たちは、先日受けた学年末テストの返却に学校を訪れていた。

今回も、いつも成績はそれほど悪くない春一だが、今回は飛び抜けていた。

飛び抜けて……数学が悪く、国語が異様なほど出来が良かった。

しかし、その更に上を行く人物がすぐ隣にいる。

「だから言ったでしょ? 準備しときなさいって」

夏雫は普段から成績がクラスで…という枠組みを通り越して、

学年で10番以内に食い込んでくる事もよくある。

その夏雫の返却された通知表に書かれた順位は――。

「今回は自信もあったけど、1番とは思わなかったな!」

そう、学年1位。

しかも、英語を除きオール満点というおまけつき。

「何で、今回はこんなに良かったんだ?」

「それは……」

春一の問いに夏雫が俯いて何かを呟いている。

夏雫を覗き込もうとすると急に顔を上げて、

「そんなことより、どこに連れて行ってくれんの!?」

逆ギレ気味に春一に食って掛かった。

「わかったよ。来週の週末の予定空けとけよ」

「うん、期待してるからね!」

笑顔を見せた夏雫に、春一は内心ドキドキが止まらなかった。

そんな春一を見透かしているのか、いつものメンバーは。

「ついに、夏雫もデレたわ」

「デレたな」

「デレたわね」

「「3人ともうるさい!!」」

「だから、反応まで合わせなくてもいいのに……」

「「………」」

琴夏のダメ押しに、それ以後2人は沈黙してしまった。

夏雫は用事があると先に帰った後、春一と3人は屋上に集まった。


■2029年3月5日 11:15■

「で、どんな予定を立ててるの?」

「うん……」

春一VS他3人の構図で、デートプランを練っていた。

正確には、『春一のプランをダメ出しする会』みたいだ。

「そこは春一にはハードルが高いかも……」

「だよねー春一には無理だって!」

「鏡で顔を見てきた方がいいな!」

「そうだよな…。シュウだけ、2回死ね」

秋希だけ強く当たられているのは気のせいとして、

来週に控えたデートプランは見事に迷走し続け、最終的に……。


■2029年3月17日 9:55■

春一は、目の前にある正方形型の機械のボタンを押し込んだ。

押し込んで戻すと、軽快な音が鳴り中から人が出てくる。

俗にいう「インターホン」と言うものである。

「ごめん! 待った?」

「今来たところ…ってか、インターホン鳴らしたのさっきだろ?」

「そうだっけ?」

そう言いながらも夏雫は終始ニヤニヤしている。

「で、今日はどこに連れてってくれるの?」

「今日はプラナスの方に行こうと思ってる」

「プラナス? そう言えば、改装してから行ってないね……」

以前デパートだった場所を大手グループが買収・改装を施し、

今年2月に同じ場所にリニューアルオープンした。

食料品から衣料品、日用雑貨に本、映画館もある大型複合施設だ。

「折角だから歩いて行こうか?」

「そうだね…行こ!」

夏雫が春一の手を引いて走り出した。

「ちょっと……待って!」

躓きそうになるのを堪え、何とかついていく。

楽しい1日が始まり、何事も無く終えるとこの時は思っていた。

いや、楽しみで一杯な2人にはその様な考えはなかったのかもしれない。

少し遠くで、近くを走る桜ラインの警笛の音が響いていた。


■2029年3月17日 10:20■

「この雑貨いいな!」

夏雫がそわそわとフロアを見て回っている。

その後ろ姿をみて、春一も同じように楽しくなってくる。

「あっ! あっちもいいなー」

そう言うと夏雫は駆けだして行ってしまった。


■2029年3月17日 13:00■

一頻買い物を終えると、予定していた映画館へ向かった。

春一と夏雫が小さかった時からやっている映画で、

懐かしいということで選んだのだが、夏雫も同じだった様だ。

映画が始まると、夏雫は食い入るようにスクリーンを見ている。

春一は夏雫を横目に心臓が拍動しているのがわかった。

昔一緒に見た映画を思い出しながら、春一もスクリーンに集中した。


■2029年3月17日 16:55■

映画を終えて食事をすると、17時を回る少し前だった。

「これからどうしよっか?」

「そうだな……公園でも行く?」

「うーん…そうだね!」

正面玄関を抜けて外に出ると、気持ちのいい風が横を吹き抜けた。

その風になびく夏雫の髪を見て、春一は少しドキリとした。

「(いつの間にか、夏雫もすっかり綺麗になったな……)」

肩まで続く綺麗な黒髪が光を反射して光を放っている…様な気がする。

2人は横断歩道を渡って、公園へと続く道を歩き始めた。


■2029年3月17日 17:15■

「この公園は変わらないね……」

夏雫が見ていたのは、小さい頃に遊んでいた遊具だ。

小さい頃はあんなに大きかった遊具が、今では小さく見える。

それだけ2人が成長したということなのか。

「昔はよくここで遊んで泥だらけになって帰ったなー」

「それでよく怒られたよね?」

「そうだったな…」

春一はふと思い出した様に、遊具の上にある高台に駆け上がった。

夏雫も後ろからゆっくりと上がってくる。

「春一、どうしたの……わぁ!」

夏雫もどうやら思い出したようだ。

「小さい頃もここでこうして夕陽見てたよな」

「うん、あの時も綺麗な夕焼けだったっけ?」

「そうだったな……」

周りには誰も居らず、公園は珍しく静かな空気に包まれている。

「夏雫……」

「どうしたん?」

「…………」

春一は3人に思い出の場所で告白をすると伝えていた。

無言の時間が数十秒続き、静寂が周りを占めていく。

色々な思い出が頭の中を駆け巡り、春一がついに口を開いた。

「また、この場所で夕陽を見ような!」

「……うん!」

「(告白は出来なかったけど、この時間が過ごせて良かったかな?)」


下に降りると、そろそろ帰ろうかということになった。

公園の出口の方へと歩いていくと、夏雫が急に駆けだした。

「早く行かないと信号が変わっちゃうよ!」

歩行者信号は青のまま、夏雫が横断歩道へと入った刹那。

右側から来ていた車がクラクションを鳴らして進入してきた。

春一は反射的に走り出した。

「夏雫!!」

時間は無情にも間に合わず、夏雫が車に撥ね飛ばされた。

慌てて駆け寄り、夏雫の肩を軽くゆする。

「夏雫!夏雫!!」

しかし、夏雫は動く気配がない。

撥ねた運転手は携帯で救急車を呼んだのか、遠くからサイレンが聞こえる。

そして騒ぎを聞きつけて周りに人も集まってくる。

春一はこのことが夢ではないかと思っていた。

しかし、刻一刻と体温を失っていく夏雫が夢ではない事を物語っている。

数分後に到着した救急車に夏雫は乗せられ、救急病院に搬送された。

陽が沈み、街は黒い闇が覆い尽くしていった。


GW最終日、皆様如何お過ごしになりましたでしょうか?

作者のSHIRANEです。


3か月ぶりの更新ですが、思い通りに書けた話かな?と思っています。

今まで書かせて頂いた作品が自衛隊や警察、消防と、

そういった職業モノ(正確には学園ものも)が多かったのですが、

今回は「恋愛×不思議」をコンセプト?に作品を展開していく予定です。

正直、どんな作品に仕上がるのか自分にもわかりません(笑)

けれど、最終的に「何だかんだ良かった」と思って頂けるような

作品に出来たらと思いますので、応援いただけると幸いです。


さて、次回の更新ですけど少しわかりません(笑)

書けたものから順次更新していく予定です。

皆さんからの感想もですけど、何かと評価して頂いてありがとうございます。

これからも楽しんで読んで頂けますよう頑張りますので、

重ねて宜しくお願いします!

それでは、皆様体調を崩されません様に……。


平成26年5月6日 SHIRANE

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