lemon06 予感
めちゃくちゃ寝不足で迎えた朝。
学校に行きたくない。というのが本音。
「森田。あたし学校休んでも……やっぱ行く。うん…何でもない」
サボろうかと思ったけど、学校には行こう。
萌や祐介も心配するだろうし。
「…どうかされましたか?」
「ううん。なんでもないよー」
車に乗るといやでも昨日のことを思い出してしまう。
その事実が夢であることを祈ったけど。
触れた柔らかい感触はカラダが覚えていた。
☆☆☆
あー。ダメだ。ぜんっぜん授業が頭に入ってこない。
今日は理科の授業はないけど、なぜか長谷川のことばかりが頭に浮かぶ。
どうにかして忘れようと、必死にかき消すがその都度より鮮明に思い出してしまうのだった。
「ねぇ。大丈夫なの?顔色悪くない?朝からずっと変だし」
あたしに気を使って何も言ってこなかった萌もお昼になってようやく
そのコトに触れてきた。
「ううん。大丈夫。いつもと一緒だよー」
「どー見ても変だって。ね?祐介?」
祐介にまで同意を求める。あー…言ってしまいたいのと
恥ずかしさから隠しておきたいのとで複雑な感情だ。
「あっ。並木。昨日あれから大丈夫だった?」
食堂に姿を現した早川くんが聞いてきた。
2人の頭にクエスチョンマークがいっぱい飛び出してたけど
当然あたしには分かった。
「オレのせいで罰則、増やされたりしてない?」
「うん。こっちこそゴメンネ。なんかとばっちり受けちゃったみたいだし」
「いや…。オレは全然いいんだけどさ。あの後……」
そこで意味深に言葉をとめた早川くん。
「えーっと…うん。なら良かった。じゃぁ」
あちゃぁ。行ってしまった。あんなとこで言いかけてやめたら
2人に質問攻めにあっちゃうじゃない。
こわごわ2人をみると案の定、ニヤリと笑みを浮かべている。
「さぁ。あのあと、の続き教えなさい。なんならもう一回早川くん、
呼び戻してきてもいいんだよ?」
いっいや…それはやめてください。
半ば脅されているあたしは祐介に助けを求めたが無駄だった。
「…えー…実ゎ……」
☆☆☆
昨日の出来事をダイ暴露したあたしは妙にスッキリした。
「なるほど。奪われちゃったんだファーストキス?」
あっ。それは違う。って、またまたこれが色気のかけらも無いモノでして…。言うのもはずかしいんdすけど。。。
「あたしのファーストキスはヒトじゃないから」
そう。あれは小6のナツのキャンプのできごとよ。
「12のときにサマーキャンプに行ったの。
そのときに牧場で牛にキスされた」
一瞬2人の目が点になった。___かと思うとゲラゲラと笑い始めた。
まぁなんとなーくこうなる事は予想できたけどさ。
そんなに笑わなくてもいいじゃない!!
牛さんに失礼でしょうが!!牛さんに謝れっ。。。
「アッハハハハ…っ!!なにそれっ!!!面白すぎでしょっ!!っハハハハ…っ」
萌ったら目に涙を浮かべて笑ってる。
「お前。今の話がマジならつくづく恋愛に運のないやつだな」
あたしの背中につめたーい滴が流れた。
背後に感じる気配。
声とそのオーラで振り向かなくともダレだか解かってしまった。
「じゃぁ。あたしたち、お邪魔みたいなんで。おっさきー」
えっ?待ってよ!全然邪魔じゃないしっ!!てゆーか居てくれたほうが
よっぽど嬉しいんですけどっ。
「ファーストキスが牛とはねぇ…」
と呟いては腹を抱えて笑う。
それだけのためにココまで来たのか。だったとしたらどれだけ暇なんだか、コイツは。
あたしは長谷川を無視して食堂を出た。
が。ついて来る。
「ちょっと。ついてこないで下さいっ」
「お前についてきたつもりはない」
あ…そっか。こっちが職員室なんだ。
「そうですか……っ///」
振り切ろうとして曲がろうとした腕を思いっきりつかまれた。
そのまま冷たい壁に押し付けられる。
昨日の残像がよみがえってきた。
「っ///はなしてよっ!!触らないでっ!!!」
全力で押しのけようとするがビクともしない。
それどころかますます力を加えてくる。
そのまま距離を縮められて思わず固く目を閉じた。
キスされる___そう身構えたのに。
それは一気に解かれた。
「無理やり、というのは俺の趣味に合わない。見逃してやる」
あっさりと引き下がられ…。なんか拍子抜けっていうか。
もちろんそれでよかったんだけど…。
「なんだ。その不満そうな顔は」
不満!?いえいえとんでもないっ。。不満どころか大満足です、ハイ。
あんたの目は節穴か、と突っ込みたくなる。
どっからどうみても安心しきった顔をしてるはずなんだけど。
「昨日のも。ムリヤリだったくせに。
てゆーか。ヒトにされたのは初めて…だったんだからっ。責任、とってよね」
「何をした責任だ」
本人が一番よく分かってるくせに。わざわざあたしの言わせようとしてくるところが
腹立つ。
「もういいですからっ」
「待て」
昨日同様。
待てといわれて待つバカは居ないはずなのに。
あたしは待ってしまった。
だから___当然よけるスキなんてあるわけもなく。
チュっと額に落とされたキス。
「こっココ学校なんですけどっ!?!?!?
何かんがえてんのっ!!信じらんないっ!!!!」
誰かに見られてたらどうすんのよっ。そっちに被害はなくても
あたしは会社背負ってんだからっ!!
「責任。とってやるよ」
「別に取っていただかなくてケッコーですっ!!」
長谷川の責任とるってのはどういうことか全く想像つかないし。
だけど。 何事もなかったように立ち去る姿は
なんとなく。すこーしだけ。
オトナのオトコというものを感じさせた。