表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/18

lemon04初恋と初カレはベツモノ

「もう掃除なんてイッショーやんないんだからぁっっ!!!」


放課後。罰則最終日ということで新たに増やされた雑巾がけ。

窓と床と実験台と水道。。。


あと半分というところまでは調子よく手際よくやってたんだけど。

さすがに一人でこれだけ掃除するってのは……

ましてやいつも森田に掃除してもらってるあたしなんかには到底無理なこと。

管理人と清掃員はなにしてんだか……。



「遠吠えなら山でしろ。うるせえバカ」


空気を凍らせるようなその声が響いた。

見るとドア付近にソイツが立っている。

遠吠えって失礼な。勝手に犬にすんなぁーっ。


「残念だが。今日は7時には門が閉まる。ソレまでに掃除しろ。

ま、学校に残りたけりゃ7時を過ぎようが俺のしったことではないが」


そ、そ、そ、そっそれってつまり夜の学校でしょ!?

む、ムリムリ!!そんなの怖すぎるヨッ!!!

だって音楽室いったらベートーベンいるんでしょ!?トイレには花子さんいるんでいしょっ!?!?


「1秒でも遅れれば校門は自動で閉まる」


機械だからね。そりゃそうでしょうよ。とか冷静に言ってらんないってばぁ~

だけど夜の学校なんておことわりだ。

絶対!ぜったい!ずぇーったいっ!7時までにおわらせるんだから!!


☆☆☆


長谷川のバカ!ドS!鬼!

7時になれば自動的に閉じ込められる。

長谷川なら容赦なくほったらかしにして帰るんだろうな。


「手伝おっか??」

「へっ??」


額に汗をにじませ、椅子にのって窓のサンを拭こうとしてると

聞こえてきた声。


あっ。。。早川くんだ。


「いや…コレ罰則だから。それに悪いし。うん…」


ほんとはものすんごーく手伝ってほしくてたまんないんだけど。

時計の長針も短針も両方が6を指している。


「あと30分じゃ間に合わないだろ。それに届いてないし」


と、天井近くの格子を指差してわらった。

だ、だって…背が低いんだもん!!


ほら貸して、と半ば取り上げるように雑巾を手に取ると

軽く手を伸ばしてらくらくと拭いてしまう。


「早川くん、背が高いんだねー。いいなぁ~」


自分が小さいからか余計にそう思ってしまう。

隣の芝生はあおい。。。ちょっと違うか(笑)


「だってオレ、オトコだし。てか…オレのこと知ってたんだ?」


あ、は、は。。。だって。だって。


早川くんって超超超モテモテなんだよ!?!?

なにやらせても1番で。バスケ部なんだけど、キャプテンだし。

で、おまけにルックスもいい。

しかも長谷川みたいにそれを鼻にかけたりしない。

今みたいに優しいしね。


「あたりまえじゃん。早川くんこそ。あたしのこと知ってるの??」


今度は向こうが目を皿にしている。


「もちろん。オレいつも光…並木に数学負けてるもん。しかも1点差とかで。

名前と顔ぐらいいい加減覚えるって」


そう小さく笑う彼にあたしも笑ってしまった。


「じゃぁ。お互い知ってたけど知らなかった、みたいな?」


「どっちよソレ。でもまぁ確かに。なんか初めて喋った気がしないね」


幼馴染と久しぶりに会って喋ったみたいな。そんな感覚に近かった。

でもこんなカッコイイ子とこうやって話せるなんて。

罰則も案外悪いもんじゃないって思ったり。


「長谷川も。並木のこと相当気に入ってるんだね。」


なんか。とんでもない誤解をしてる人がここにいますけど。。。


「気に入ってるんじゃなくて。その逆。めっちゃ嫌われてるもん。

この罰則だってアクビ一回で一週間の掃除だよ?ありえないでしょ」


もう慣れてしまって感覚が麻痺してるあたし。それも怖い事なんだけどね。

でも思い返せばこの罰則だって重過ぎるのだ。


「ほんっと。ムカツクやつ」


「でもさ。長谷川って並木のこと好きだと思うよ」


はいぃぃぃっ!?!?!?


「今なんてっ!?」


「だから。並木のこと、……」


「喋ってる場合か。バカどもが」


パリーン。空気がついに割れた。


「あと、5分」


げっ…。本気でヤバイって。


「俺はお前の罰を与えたつもりはないが」

長谷川の目が無造作に早川君に向けられる。

「ちょっと。手伝ってくれてるんだから。いいでしょ」


「よくない。早川。帰れ」

本気で怒ってるように聞こえた。


「だから。あたしが頼んだんだってば」


「早川みたいな優等生にこんなことをさせてる俺が

あとで怒られる」


それは反論できないくらい強い押しだった。


「じゃ、またな」


「あっ…ありがとね!」


あわててお礼を言ったけど、早川君はもう視界にはいなかった。

せっかく楽しかったのに。


「3分」

「えっ待って待って!!!いますぐでるから!!」


そう騒いでる間に長谷川まで行ってしまって。。。

ホントに閉じ込められたらどうしよう。

あいつならやりかねないよ。


あわてて3階の階段を駆け下り、もうダッシュした。


「3・2・…。なんだつまらん」


…間に合ったみたいだ。

教師でもあろうものがつまらんとは何よ。つまらんって。

こっちは息切れするほどしんどいってのに。


「じゃ、さようなら」

「待て」


待てといわれて待つバカがどこにいるんでしょうか。


でもあたしは待ってしまった。


「送ってやる。のれ」


暗闇に溶け込んだ真っ黒のベンツ。

教師なんていう安月給の職のクセにどうやって買うのだろうか。

学校内でも長谷川は坊ちゃんらしいという噂もある。

私立の教師はそうでもないのか……。


なんてどうでもいい事を考えていると。


「お前ん家のシトロエンじゃないと不満か」


「なんで知ってんですか」


そう聞くとフッと不適に笑い、助手席のドアをあけてくれた。

意外にも紳士的な行動の裏に何かあるんじゃないか、と身構えた。










評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ