lemon02ドキドキな一日
退屈ドMAXなこの時間。
もちろん長谷川の理科の授業中なんだけど。
昨日はあくびでとばっちりを受けたから、なんとかあくびは抑えてるけど。
気を抜けば100発くらい平気でしそうだ。
「出席番号24。誰だ」
低い声が唸るように質問をだした。
しかもあたしだ。
「はいっ」
やっばー。聞いてなかったよ。どうしよう…。
ちらっととなりをみると綺麗なノートが目に入る。
よしよし。。。ちょっと拝借しまして……
「えーっと……H2プラス……」
読み上げた化学式に間違いはなかった。
だから……
「正解」
あたしに向けられたいつもと違う柔らかな視線と声。
あたしは…これが嫌いじゃない。
長谷川なんてだいっきらいだけど。この時だけは特別なんだ。
いつクールな人が向けられる優しさってそれだけでドキッとしてしまうのに。その相手が容姿端麗な教師とくればなおさらだ。そんなものに柄にもなくドキッなんて騒いでるあたしの心臓とか、熱く火照ってる頬とか。どうなってるんだろうアタシ。
てゆうか優しさがこれだけ問題を引き起こしてるってどうなの?
席に収まってからもまだうるさい心臓。
一体どうなってるんだろあたしってば。。。どこか___恋愛というネジでも緩んでるのだろうか。
☆☆☆
掃除だ…。
部活をやっていないあたしは放課後第一理科室へ直行した。
「んもぅっ!メンドクサイなぁ」
ブツブツ文句をいいながら理科室のドアノブに手をかけた。
-----が。___
完全にあたしの体は硬直してしまった。
「……あっ………んんっ………///」
中から聞こえてくるあまーい声と音。
___…………コ、コレって……つまり……
そういうコトだよね………???…ウソ。。。マジデスカ……
もちろん気分は最悪で。。。
これ出て行くまで待っとくの?
ソレはソレで延々と聞かされるわけでしょ??
あぁーーーーーっもうっ!!どうすればいいのっ。。。
どうしようもなく一人であーだコーダ悩んでいると。
「何してる。さっさと掃除しろ」
後ろからカツッカツッと近づく靴音。
…どうしましょ…。
「えっと…その……なんていうか……」
あたしの一歩手前で立ち止まりあたしを見下ろす。
「どうした」
「だからっっ///えーっと……」
なんだかこっちが恥ずかしくなってきてうつむいてしまった。
あたしからじゃ見えないけど
長谷川からなら窓から見えるはず。
「そういうことか」
フッと笑うと勢いよくドアを蹴りあけた。
……。。。
「お前ら!ヤルならヤルで場所考えろ!」
「キャーっサイテーっ!!」
サイテーなのはどっちだ!!
2人の男女はあわてて乱れた服装を直して出て行った。
ほんっと最悪の気分だ。
「何ボケッとしてる。掃除だ掃除」
「はっハイっっ」
あたし緊張してる??なんで??
ほうきを手に取り、セッセと働いてる間、長谷川はずっと
実験の片付けをしていた。
サボらず働いてたけど。だけど。
窓から見える夕焼けはそれはそれはキレイで。
その西日が照らす長谷川の顔はもっとキレイで思わず見とれてしまった。
悔しいけど認めたくないけど。カレは
容姿端麗だ。
女の子が騒ぐのも無理はないとさえ思う。
ダメダメ!掃除しなきゃ!そう思ってまた手を動かし始めたのに……
「うっうわぁっ」
あたしはその場から飛び退いた。
「何だ」
「え?あー……その。何でもないです」
バカだ。近くにいただけなのに。
さっきのカップルのせいで動揺してしまった。
===おちつけ、あたし!!
だけどそれは長谷川にもバレたのか。
「お前。さっきのヤツらのせいで上がってんだろ」
でも__
ふわっと笑ったその目は
いつもみたいな冷たい視線じゃなく。質問に答えた時よりももっと優しいまなざしだった。
「せん…せ???」
スッを伸びてきた腕。それは背中に回り
耳元で聞こえた囁き声
「無防備にもほどがあるな。からかいがいがあってよろしい」
はい…?なにそれ。ほめてます?
言葉はいつもの皮肉っぽい一言。
なのにそれが甘く優しく聞こえたのはあたしの気のせいだろうか。