lemon09 恋の足音
__光環、あんたってホントに鈍感だね__。
そういわれても言い返す言葉がないあたし。
確かに疎いほうではあるとは思うけど。そんなに鈍感かな?
あのメールはとりあえず無視して放置してある。だってなんて返信すればいいのか分からないし。
てゆーかあたし。。。長谷川にアド教えたことないんだけど。なんで知ってるんだっっ。。。
塾のテキストに顔を隠し、ひそひそと萌が何かを伝えてくる。
は・せ・が・わ。と唇が動く。
長谷川。でしょ?それがなんなのよ。
首をひねって見せるとイラだったようにささやく。
「長谷川の好きな人。あたし知ってる」
そう言ってにやりと笑う。べ、べつに知りたくないしっ。興味ないもん。知ったところで得なことないし。あんなヤツぜんっぜん気になんかしてませんから。
「教えてあげよっか」
「いい。なんかどーでもよくなったし」
「ウソばっか。顔に書いてるじゃん。知りたいですって」
書いてるわけ無いし。
だいたい…。。なんで長谷川のスキな人なんかあたしが知らないといけないのよ。
あんなやつどーでもいいんだから。
「ホントは気になってるくせに」
「じゃぁ聞くけど。キスされて抱きしめられて気にならないってほうが変だと思わない?」
つい。そう言い返してしまった。
「ほら。それが答え、でしょ」
答え……。??ソレハどういう……ことでしょーか。
全ての会話があたしの頭の中を渦巻く。
ココ最近のセンセとの会話がなんどもなんどもリピートされてしまう。
…弱いくせに強がりで……勉強だけは生意気に出来やがる……
あたしは……勉強が出来ないわけじゃない……
……好きな女には。キスするのも緊張する……
あの時。かすかに震えてた唇___それが答えだと言うのなら__
バチッと頭の中で弾けたとんでもない考え。なんかあたしとんだ勘違い女、みたいなこと思いついてませんか???でもあたしはブルっと頭を振ってそれを頭から追い払った。
「ないよ。萌。今萌が考えてるようなことは絶対ないから」
「さぁ?どうかしらね。相手はあの長谷川よ」
だからこそ、じゃない。センセはあたしみたいな女、ましてやガキんちょに手ださないでしょ。
☆☆☆
塾が終わり、萌に行ってあげなさいといわれたものの。
だいたい、サドオトコが何を言いたいのか。あたしになんか分かるわけないでしょ。
あーぁっ!!どんだけ国語を勉強しても人の心だけは読解できない。
結局躊躇しているあたし。
まさか。長谷川が…そんなわけ……ねぇ…??
ぶらっと駅前の公園のベンチに腰掛ける。
もうあんまりヒトはいないけど明るいから大丈夫だろう。
時計は9時半を指している。
「そんなわけ……ないよね……」
長谷川があたしを好きなんてありえない。
そう言葉にしてみると少しせつない気もしないことはない。
なんなんだ。この気持ちは。どうしてこんな感情が湧いてくるのよ。振り回されすぎだ。あたし。
仮にも早川君なんてステキな子があたしを好きだと言ってくれてるのに。
それが嬉しいと感じたのに。素直に喜べないあたしはどうして?
どうしてセンセの顔が頭にうかぶの?
しかも。。どうしてあんなメール一通でこんなとこであいつを待ってるのよ。
いったいあたしのキモチはどうなってるんだろう。ありえない。何を期待してこんなとこで一人で待ってるのよ。
馬鹿じゃないの、あたし。早く帰らなきゃ。
そう思ってベンチから腰を上げた。