プロローグsweet kiss
いつものように。
静かに近寄ると褐色の綺麗な目を細めゆっくり顔を近づける。
その整った顔は何回間近に見ても慣れなくて。あたしの心臓はうるさく騒ぐ。
ふわっとミントの香りが鼻をなでる。
トクトクと規則正しい鼓動があたしの耳に押し付けられる。
腕の中から見上げると稀な優しい笑顔が見下ろしていた。
その褐色の瞳がきゅっと細まった。
いつものキスのパターンに。
そっと身を委ねるように目を閉じたのに_。
「たまにはお前からしろ」
降ってくる言葉はその男らしい含みを持たせた言い方で。
あたしはサクラの木にもたせかけていた背中をスッと伸ばした。
「なんでよ////バカ……」
こうやっていじめてあたしで遊ぶんだから。
一気にキョリを縮めたカレは優しく唇に触れてきた。
この手馴れた感じがむかつくけど。甘いキスにあたしの思考は完全に停止している。
甘くそれは蛇のようにあたしを可愛がる。
スッと離れたかと思うと囁かれた。
「___卒業おめでとう__」
「-----ありがと__」
低い声で甘い顔でそんな顔で言わないでよ。
「幸せにしてやる」
相変わらず強引だけどすごくすごく嬉しかった。
「もう__充分すぎるくらい__幸せだから___」
思わず出てしまった本音。それに満足したみたい。
さらに甘く甘く舌を絡めてくる。
この男_。あたしからファーストキスを奪ったやつ。
ドSでサイテーなやつだけど。
__あたしはこいつに惚れたんだ。