*交差する運命*
黎暁学園を卒業して5年。僕は23歳になった。まぁ、相変わらず背は伸びず、性格も大人びるなんてこともなく、まだ職場では子供扱いされちゃってるんだけど。僕が23歳ってことは、清ちゃんは何歳になったんだろ。えっと2つ上だから……25歳か。すっかり大人びてるんだろうな。前以上にかっこよくなってるんだろうし……。か、彼女とかできてたらどうしよう。え、僕一人捨てられちゃう?どうしよ、そしたらたぶん僕ずっと独身かもしれない。あぁ、またこんなショックなこと考えちゃってるよ。今は仕事中だってば。
今日も、いつもと変わらない仕事をこなしていた時だった。売れて空いた棚に、在庫から新しく本を補充していた。
でも、その日は朝から頭がぐるぐるしていた。さえないって言うんだろうか。気付くとボーっとしてしまってることが多かった。もうすぐ休憩だし、そしたら市販の薬でも飲もうかな。そして定時であがらせてもらおう。そんな僕の後ろから、同じ仕事を担当するパートのおばさんが話しかけてきた。住吉さんは僕よりも長くここに居るから、仕事上ではすっかりお母さんみたいに面倒見てくれてる。ま、頼っちゃってるんだけどね。もう5年目なんだし、しっかりしなきゃな。
「夕貴君どうしたの?顔色良くないみたいよ?」
「そうですか?……ちょっとボーっとするだけなんで大丈夫ですよ?」
「風邪かもしれないわよ?今流行ってるみたいだし。この時期、季節の変わり目でしょ?風邪ひきやすい頃だし」
「そういえば、昨日から休んでる丸山さんも風邪だそうですね。僕も気をつけなきゃ」
「あ、そろそろ休憩にしましょ……あら、夕貴君?夕貴君!!?」
住吉さんの、あわてた声が聞こえる。どうしたんだろう。あれ、なんで目を開いてるのに、何も見えなくなるんだろう。なんで体が傾いてくるんだろう。なんでこんなに体がふわりとするんだろう。なんか、もう駄目かもしれない……。あぁ、まだ仕事残ってるのにな。
そこで、僕の意識は途絶えた。
*** *** ***
『NY行き822便に搭乗されるお客様で出国審査がまだの方は――――』
聞こえる場内アナウンス。以前の俺はそれすら聞きたくなかった。とくにあの行先は呪いたくなるほど。だが、もう俺には関係ない。重い荷物を引きずりつつ、外へと出る。まだ昼前、多少の時差ぼけは覚悟の上だし、これくらいはどうってことない。1週間徹夜なんて時期もあった以前に比べたら、こんな眠気はかわいいものだ。
「さてと……これから家に帰るのもあれだし……どうしよっかな」
あてもなく、とりあえずタクシーを捕まえて、思い浮かんだままの場所へと向かった。
23歳になろうが夕貴はあんまり変化ないですね。
こんなかわいい?23歳いますか?
あと数話で完結の予定になります。
それまでお付き合いいただきたいです。