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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
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*清桜 in飛行機*

さて今回から番外編?

本編では語られなかった夕貴のほかの(おもに清桜)人たちの

お話を載せます。


今回はアメリカ行きの飛行機の中の清桜です。

一応一話完結で、時系列は更新されるのとは関係なしのバラバラです。


 親に勝手に入れられたアメリカの大学内――――

 周りに居るのは、日本ではあまり見れないような外見をした人間ばかり。たとえここが世界中から人が集まる国だったとしても、俺にとってどうでもよかった。だってあの子がいないから。あの子がいないならどこに居たって同じ。ゴミ捨て場にいようが、なんだって一緒だ。

 要は興味がない。

 一応、勉強はしているけどそれは自分のためだと理由つけないとやる気が出ない。

 俺がアメリカなんてところに来なきゃいけなくなったのは、簡単にいえば全部親のせい。一時俺は夕貴に言った通り、黎暁学園のある市の隣の市にある大学に受かっていた。だがそれを親が勝手に辞退させた。自主退学とでもいえば聞こえがいいのかもしれないが、俺がそれを知ったのは、寮に届いた一通の茶封筒でだった。あいつらは直接俺に何の連絡もなしに行った。そして、有無を言わさずアメリカにある大学への入学をさせられた。あの封筒を開いた時、俺はあとどれほど夕貴といられるんだろうかと、不安になった。あの笑顔が、俺を苦しめる。離れたくなんかないのに。離れなきゃいけないのか。

卒業式間際、夕貴と出かけたあの日。あの日が最後だろうと、俺はずっと思っていた。だから、せめて夕貴を一日笑顔でいさせてあげようと、行ったことがないだろう水族館へと連れてった。案の定、夕貴は初めて訪れる水族館に目を輝かせて、今まで見た中でも一番なんじゃないかってほどの笑顔を浮かべていた。この笑顔を間近で見られるのもあと数時間なんだ。そう思うと、悔しくてたまらなくなった。できるなら、このまま夕貴を連れ去ってどこへでも、それこそアメリカにでも行ってしまいたかった。ここに。この日本に、夕貴を一人で残して行ってしまわなきゃいけないなんて、俺はしたくない。けど、俺にはもう、どうしようもなかった。きっとこのことを朝貴なんかに言ったら、是が非でも何とかしようとするだろう。一応朝貴が次期代表になっている。だから、朝貴にもそれなりの権力に似たものはある。でも、朝貴の力を借りて、それが夕貴のためだと親たちに知られたら。夕貴の立場が悪くなるのも容易に考えられる。それはいやだ。やっと夕貴は夕貴として、ふつうに学校生活を楽しんでいるのに、それを俺は壊したくない。

 

『これは全部夕貴のため』

 

 そう自分に偽りの理由を、まじないのように繰り返し言い聞かせて俺は飛行機に乗った。

 飛行機の窓の下。君はそのどこかに居る。また会えるその日がいつかは、俺にもわからない。けど、必ずまた君のもとに帰るから。そしたら君は会ってくれるだろうか。その時は俺を怒って。嫌いだと言われてもかまわない。俺はそれだけの事をしたんだから。明日の卒業式、きっと君は知るんだろう。ぼそりと、静香にはこぼしたから。いずれ聞くことになる。直接なんか言えないよ。俺、夕貴が泣いてるの一番ダメなんだ。泣かせてるのは俺なんだけど、もうそれすらいやで。


「結局聞けなかったな……。こんな俺のどこが好きになったのか……。聞けるのは、何年後かな……」


 もう、窓の外は一面白い雲で覆われてしまった。夕貴、ごめんね。こんな俺を好きにさせちゃって。ありがとう。また会うその日まで、さようなら。

 俺の気分とは裏腹にその日は憎らしいほどの快晴だった。

清桜がヘタレな気がして仕方がないのですが。

本当はもう少しこう……頼れるような感じにしたかったんですが……


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