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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
第9章 卒業と夕焼け
66/73

*65*


本編最終話です。


 僕は、河合さんが運転する車の助手席に乗り、久しぶりに外へと出た。そしてお父さんに教えてもらった場所に向かう。いつまでもふさぎこんでるのはあの日以来やめた。それはたぶん清ちゃんも望んではいないと思ったから。いつかきっとまた僕らは会える。そう信じて、とりあえず元気でいようと思う。

 あの日のあとはすごかった。あの人が北條家からいなくなって正式にお父さんが実権を握るようになった。おかげで企業は大混乱。河合さん達も寝る間がなかったくらい働いてたらしい。僕はぐっすり寝てたくさん食べてたんだけどね。それでもまだ残っている問題は山積みらしく、その合間を縫って今日、河合さんに来てもらったんだ。


「ありがとう、河合さん」

「お礼を言われるほどの事じゃないですよ。一つ提案なんですが、清桜君の居場所、探しますか?」


 河合さんにはすっかり僕と清ちゃんの仲はお見通しみたい。だから隠してないんだ。今ではいい相談相手になってくれてる。


「ううん、いいよ」

「いいんですか?」

「うん、僕は清ちゃんを信じてる。いつかきっと戻ってきてくれて、ちゃんと理由話してくれると思うから。ちょっと怒って、そのあと許してあげるんだ。お見送りできなかったから、今度はちゃんと出迎えてあげるんだ」

「そうですか」

「だから僕もそれまでいっぱい勉強して、将来やりたいこと見つけて。清ちゃんに恥ずかしくない大人になるんだ」

「夕貴君なら大丈夫ですよ」

「河合さん、今までそばに居てくれてありがとう。これからもよろしくね」

「こちらこそ」


 林のような場所の前で車は止まった。ここなのかと思っていた夕貴に河合が一つの封筒を渡した。


「ここからお墓までの地図です。夕貴君のお母さんのお墓の場所は、朋貴様と夕貴君のみしか知ることはできない機密条項だそうですから。しっかりお参りしてきてください。僕はここで待ってます」

「うん……じゃ、行ってくるね」


 一人で車を降りて、僕は歩きだした。茂みの中へ入り、階段を上る。さらにそこからわき道にそれて、道なのかどうかも怪しいけもの道をひたすら進む。クマとかでないかな。大丈夫だよね。そんな危ないところにお母さんのお墓とか建てないよね。迷わないように地図をしっかりと見つめる。数分後、僕は目の前に広がる光景に思わず目を見開いていた。

 視界の奥に広がる大海原。きれいな空とどこまでも続いている。そして、その前にある白い石造りのお墓。西洋風な作りなのは、お母さんのためなんだろうか。きれいなお花が供えてあった。あ、僕手ぶらだ。どうしよう。ごめんね、次は持ってくるから。


「えと……はじめまして……じゃあ、おかしいか。久しぶり、お母さん。ごめんね、ずっと来なかったね僕。僕はお母さんの顔を見ないまま育っちゃった。写真もないんだってね。でもね、みんな僕はお母さんそっくりって言うんだ。お父さんもすごくきれいな人で、結婚できてよかったって言ってた。……おかあさん、か。今まで、生まれてきたことを後悔したことはない、とは言えない。でもそれはお母さんのせいとかじゃないよ。今まで本当にいろんなことがあったんだ。天国から見ててくれた?心配かけちゃってたらごめんなさい。でも、もう大丈夫……だから。……お母さんには隠し事出来ないか。じゃ、お母さんには全部話すね。僕お付き合いしてる人いるんだ。って言っても男の人だけど。すごく大好きな人。僕の運命を変えてくれたって言ったら大げさかもしれないけど、本当に全部清ちゃんのおかげだから。でも、今は遠くに居るんだ。」


 穏やかな春の日和。温かな風が頬をかすめる。花のいい芳香が、風に乗って僕の方へとやってきた。話しながら、清ちゃんと過ごした一年を振り返る。けど、涙は出ない。それどころか自然と言葉があふれてくる。


「今もさびしくないわけじゃない、訳がわからないし、全然このことを信じられてないところもある。けど、それでも僕は清ちゃんが……近衛清桜が好きだから。何年たっても、どれだけ離れてても、この気持ちが変わることはないから。だから、進むことにしたんだ。自分の意志で、前に進む。これも、清ちゃんが僕に教えてくれた。だから、ちゃんと自分で選んで、生きてこうと思うから。お母さん、生んでくれてありがとう。お父さんとお母さんの子供に生まれてきてよかった。朝貴と兄弟になれてよかった。大事な人ができてよかった。もう、生まれてこなきゃよかったとか思わない。これからは、夕貴として、一生懸命楽しんで生きてこうって思うよ。お母さん……」


 この広がる海のずっと先に、貴方はいるんだよね。まだ、会うときじゃないって思う。でもきっとまた会える時が来るから。


「清ちゃん、どれだけ誰かが邪魔しようとも。どれだけ離れようとも。僕はあなたが好きです。また会えるその時を、僕は楽しみにしてるからね」


 アメリカに居る、としかわからない。住所もわからない。連絡先もわかんない。携帯は解約されてるみたいでつながらなかった。河合さんがいっていたように、頼めば簡単に居所がわかるかもしれない。けど、そんなことしないよ。会いたいけど、我慢する。なぜって?しつこいかもしれないけど、清ちゃんが好きだから。遊びに行ったわけじゃない。きっと頑張ってる。なら僕はそれを邪魔してはいけないんだ。清ちゃんが言って行かなかったのは、それに没頭するために、少しでも早くまた会えるようにするためにだと思う。なんでも一途なんだよ。あっちこっちに手を出してもいいと思うけど、それをしないのが清ちゃんだもんね。だから、僕は連絡しないよ。でもね、僕は引っ越さないし、携帯も変えない。だから、戻ってきて。そして一番に僕に会いに来て。


「貴方は、夕日を昇らせた。ずっと沈んでく運命だった夕日ぼくを。だから沈まないからね。僕は意地でもとどまって輝き続けてるから。あなたが迷わず戻ってこれるように」


 夕日よ昇れ。貴方の目印になるために。夕日は明日への、僕の希望の光だから――――。




待つことを選んだ夕貴。


そしてこれが最後のお話。

ですが……


まだ完結設定にはしません。

この後のお話を載せたいと思います。

これじゃ、ハッピーエンドなのかどうかもよくわからない終わり方ですので。


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