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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
第9章 卒業と夕焼け
65/73

*64*

こんなお父さんいたらいいのに。

理想と妄想の塊な話ですね。

いまさらですけど。



 顔立ちは、朝貴と夕貴どちらにも共通した部分があるその男は間違いなく、二人の父親だった。しっかりとした視線で、目の前に居る女を見る。久々に見たその姿は、一体いつぶりなんだろうか。やや、やつれた感じがするのを見ると、彼もまた深刻な状態でいたのかもしれない。


「貴方の理想ももう今日で終わりです。僕は、あなたとの婚約を正式に破棄することにしました。もう、貴方はこの家と何のかかわりもありません。どうぞ、立ち去ってください。あぁ、この子たちは二人とも、僕の子です。貴方に親権はない。さぁ、荷物をまとめてさっさと出てってください」

「なによ!!困るのはあんたの方よ!!私がいなくなって……」

「もう、貴方に屈する理由が思いつきません。あなたのその悪巧みを打ち砕くことは、もうすでに終わってますから。今日から、北條家が経営するすべての企業の権限は僕に帰りました。さ、貴方はもうなにもありません。後日、法廷でお会いしましょう」


 それから、数人のスーツを着た男の人たちに、あの人は連れて行かれた。最後に僕らを睨みつけたあの目を、僕は一生忘れられないかもしれない。突然のことにあっけにとられていた僕と朝貴の下に、お父さんがやってきた。杖を置いて、床に座り、そっと僕らを抱きしめてくれた。


「今まですみませんでした。すべて僕の責任です。二人には本当に苦労と、迷惑をかけてしまいました。やっと一緒に暮らせますね、家族三人で」

「え、本当に?」

「すべての手続きが整うのに、結構な時間を使ってしまいましたけど。もう何にも縛られることはなくなり、何年かぶりに自由になりました。だから、僕はようやく二人のお父さんとして、生活できる。ごめんね、朝貴、夕貴」

「やった!おい、夕貴もうれしいだろ!」

「う……うん」

「……朝貴、ちょっと」

「あー俺、なんか飲み物飲んでくる―」


 ばたばたと、朝貴が走っていった音がした。僕の部屋に、お父さんと二人きり。どうしたらいいかわからなくて、座ったまま畳を見つめる。誰もいないかのように、部屋の中に沈黙が訪れる。


「なにか、悲しいことがあったんだね」

「……うん……」

「夕貴はそれで、どうしたいのかな」

「……わからないんだ……。会いたいのに、会っちゃいけない気もするし。怒ってるのか、後悔してるのか、それもよくわからなくて。考えれば考えるほど、会いたくなって。さびしくて、泣いちゃうんだ。もう、わかんない……」

「大事な人なんだね」

「うん……まだ詳しくは言えないけど……いつかお父さんにも紹介してあげる……。あげれるかな……」

「僕はいつまでも待ってるからね。……そうか、夕貴にも大事な人ができたんだね。おめでとう。で、その人は今近くに居ないんだね」

「うん、アメリカだって」

「アメリカか。僕もよく仕事でいってたな。確かに遠いね。……僕もね、すごく遠くの人とお付き合いしててね。お互い頻繁に会うなんてできない状態だったから、全然会えない日も続いたりしててね。1週間だったり、3か月だったり、1年以上会えなかったこともあったな。確かにそうしてる間は、すごくさびしくて、なんでぼくは近くにいれないんだろうって、悩んだりもした。時差もあるから、こっちは昼でもあっちは夜なんてこともあるから、まるで別世界に生きてるようで、不思議な気持でもあった。でも、僕はその人のことが好きで、大切だったから全然苦しくはなかった。確かに離れてる時はさびしいし、つらいよ。けど、同じ世界に生きてることに変わりはないんだから、また会える時を思ってるとね、自然と元気になれるんだよ。夕貴も、そうでいてほしいな。きっとその相手の人も、夕貴を悲しませたくて遠くへ行ったわけじゃないんだから、ね?」

「う……ん。それはわかるよ……。僕も、別に行かないでってわけじゃないんだ。そりゃ、近くに居てほしいけど。その人の進路に、僕が首を突っ込んじゃ駄目だと思うから。ほんとは、背中を押してあげたかった。お見送りして、笑って見送りたかった……。応援したかったのにっ……何も言われないのが一番つらくて……ふぇっ。お父さん……また会えるかな……」

「会いたいって思ってれば、絶対に会えるよ」

「会えたら……いいな」

「そうだね。お父さんも応援してるからね。……そうだ、夕貴にね一個教えておかなきゃいけないことがあるんだ」

「何?」

「夕貴の、お母さんのお墓の場所」

「え?」


次回最終話な予感です。

そしたらですね、番外編?となります。


番外編というか……その後の話です。

このままじゃねぇ……バッドエンドともなりかねん状態ですので。

本編は終わりって感じです。

いろいろ妄想しつつちまちま載せていきます。

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