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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
第9章 卒業と夕焼け
64/73

*63*


前半朝貴視点

後半夕貴視点になります。


泣き疲れたのか、夕貴は寝ちゃった。同じ体格の夕貴を支えるのは結構大変だけど、俺は何とか持ちこたえる。こんなに泣いた夕貴を見たのは初めてかもしれない。今まで押しとどめていたものすべてを吐き出したかのようだった。それほど今回の事はつらくて悲しかったんだろうな。

 そこに、新たな足音が聞こえてきた。


「お帰り。ごめんね、急に頼んで」

「そいつのために動かされることなんかもう慣れた。ほら貸せよ、お前じゃ無理だろ」

「うん、悪いけど僕らの部屋までよろしくね、龍弥」

「ったく、卒業したんだけどな俺は」

「まだここの学生だろ」


 夕貴を龍弥に渡して、俺はその横を歩く。


「それで、わかった?」

「あぁ、あのくそがアメリカなんぞに行った理由ははっきりとわかった。あいつ――――」


 龍弥が調べてくれたことで、俺は清桜の行動の真意と原因を知った。そして、やっぱり清桜に対して怒りを抱かずを得なかった。だって、大事な弟を泣かせたから。悲しませて傷つけた。


「今度会ったら殴ってやる。馬鹿清桜」

「そうしろ。俺は止めない」

「だって、清桜がしたことすべて、夕貴のためになってないよ?違う?俺に言ってくれればよかったんだ。そうすれば何とかなったかもしれないのに」

「それはだめだとわかったんだろう」

「なんで?」

「お前が動けば確かに事はうまくいったかもしれない。だけど、それで思い通りに行かなかったあいつの親が、それすべて夕貴こいつがいたせいだ、と結論付けたら厄介だろ?ますますこいつの評価は下がる。あいつはそれを嫌がったんだろうな」

「でもさ……こんなのないよ……。夕貴、すごく幸せそうだったのにな……。やっと笑って、一緒に居られてたのにな……」

「お前だけは、いなくなるなよ」

「……うん」


 でもきっと、俺じゃ清桜の代わりになんかなれないんだ。なれないんだよ清桜。



***   ***   ***




 夢を見た。僕はなぜかアメリカに居た。そして、視界のずっと先で、清ちゃんと知らない女の人が歩いているのが見えている。すごく楽しそうで、僕は悲しくなった。そして、泣きながら目が覚める。春休みに入って、家に帰ったけど僕はそれ以来、自室にこもって泣いてた。泣くしかなかった。どうしようもないくらい悲しくてさびしくて。泣いて、おさまって、また泣いてを繰り返す日々。もう一週間以上このままだった。朝貴にも河合さんにも会わず、ときどき遊びに来てくれてた静香先輩たちにすら、僕は顔を合せなかった。だってみんな、清ちゃんを思い起こせるから。

 そんな日々が続いていたとある日のことだった。その日はやけに朝から家じゅうが騒がしかった。けど、僕は正直どうでもよかったから、相変わらずだった。

 部屋に近づいてくる足音。言い争っているような声。そのうちの一つは朝貴のものだ。もう一個は……あの人か。今度は何をしてこの家を混乱させるのかな。それともまた僕を殺しに来たのかもしれない。だったらいっそここで死んでしまってもいいかもしれない。死んだら、天国にいる顔も知らないお母さんに会えるだろうか。一緒に、そばにいられるだろうか。それはそれで嬉しいかもしれない。首からかけた、あのオレンジ色のネックレスが、布団の上に襟元から出てきていた。そこには清ちゃんにもらったあのリングもある。チェーンに一緒に通してみたんだ。僕はそれをただぼんやりと眺めていた。

 部屋の入口の引き戸が、力強く開かれる。そして、堂々と部屋の中に入ってきたその人は、布団の上でうずくまって泣いていた僕を見下ろす。少しだけ、目が合う。ひどく怒りを含んだその瞳はまっすぐ僕に向けられている。


「あんたさえいなければ!!私は!!」

「やめろよ!!夕貴!!夕貴逃げろよ!!おい、夕貴を離せよ!!触んな!!」


 痛いくらいに右手首をつかみ上げられる。力の抜けきった僕の体は、女の力でも簡単に持ち上げられるようで、僕は膝が床に就いたままだらりとぶら下がったような状態になった。でも、僕はずっと胸元で揺れるネックレスを見つめたままだった。もう、どうなってもいい。会える以外なら、僕は何も望まないよ。だから、朝貴もそんなに必死になって止めようとしなくていいからね。どうせ会えないんだ。


「そこまでですよ。いつまでもあなたの思い通りに行くと思ったら、大間違いですから」


 突然聞こえてきた、柔らかな男性の声。無気力だった夕貴も、止めるのに必死だった朝貴も、夕貴に罵声を浴びせていた女も、開かれたままだった入口の方を見た。そこに居たのは、河合と、彼に付き添われ杖をついた男だった。朝貴と夕貴は、その人の姿を見て、驚き、二人同時につぶやいた。


「お父……さん?」


 それは、数年ぶりにみた父親本人だった。


若干暗い話ですね。

うーん、せっかくいちゃいちゃ書けると思ったんですけど

気付いたらこうなってたんですね。

どうなることやら


そして、救世主?夕貴と朝貴のお父さん登場です。

お父さんの挽回は此処からです。

頑張れ~!!

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