*62*
なんか書いてると私が夕貴をいじめてるようにしか思えなくなってきました。
夕貴には幸せになってて欲しかったのにな。
これのどこがハッピーエンドなんだろう。
とりあえず書けるとこまで書きました。
清桜の馬鹿ヤロ――――!!←え
式は順調に終わり、会場はすっかりもぬけの殻になっていた。でも僕は、いまだにその場から動けずにいた。バタバタと足音が聞こえたので、顔をあげてそのほうを見ると、息を切らせた静香先輩と青葉先輩の姿が見えた。何も言わずただそのほうへ振り向いた僕の腕をつかんだ静香先輩の顔は後悔にあふれていた。ずきりと、胸に何かが走る。今すぐこの場から走って逃げだしたい衝動に駆られる。けど、僕の足は棒になってしまったかのように動かない。だって、知りたいから。
「夕貴君……ごめん、ごめんね!!僕……いえばよかった……てっきり知ってるんだと思って……。でも、夕貴君かなしいだろうし、わざわざ僕がその話題持ち出すのも駄目だと思っていわなかった……ほんとにごめんね!」
「何のこと……ですか……?」
嫌だ。聞きたくない。
聞かせて、知りたい。
やめてやめてやめて。
「っ……。本当に知らないんだ。じゃ、お別れもいってない?なんで、どうして清桜!!」
「静香……」
「っ……。いい?落ち着いて聞いてね。清桜は昨日、出発しちゃったんだ……」
「え?」
出発?どこに……。
「アメリカに……」
アメリカ?え、アメリカって、アメリカ合衆国?なんで?静香先輩は、つらそうに僕にすべてを話してくれた。そして、僕の頭は真っ白になった。
*** *** ***
あの後、僕はどうしたのかあまり覚えてない。気がついたら、学校の屋上にある庭園の芝生の上に腰をおろして、沈んでいく夕日を眺めていた。今もまだ、頭は混乱していた。正直此処は本当に現実の世界なんだろうかと、疑ってさえいる。夢だったらいいのに。
「夕貴、こんなとこいたんだ。……まだ肌寒いよ?風邪ひいたら大変だから、もう寮に帰ろ?」
その声がした方に顔を向けると、すっかり眉根を下げた顔をした朝貴が歩いてきていた。でも僕は、ふいっと顔をそらす。そしてまた夕日を見つめる。
「いいよ。朝貴は龍弥先輩のところ行きなよ。僕はもうちょっとここに居るから」
「だから、風邪ひいちゃうから中に入ろう?ね?」
「……風邪ひいたら、清ちゃん戻ってきてくれるかな」
「夕貴?」
「心配顔で、駆け込んできて。薬は飲んだの?医者にはいった?熱あるの?って、必死に聞いてきてくれるんだろうな」
「夕貴……」
「アメリカだって……なんでなんだろ……。だって清ちゃん、隣の市の大学受けたんだよ?なのに、アメリカに行っちゃった。すごく……遠いところだよね。僕、お別れも言えなかった。お見送りにも行けなかった……」
ぎゅっと、腕に抱えていた黒い筒を抱きしめる。
「それって……」
「清ちゃんがもらうはずだった卒業証書。置いてっちゃったんだって。さっき静香先輩が渡してくれた。いないんだって……なんかこれ見たら……思うしかなくて……。だって、一昨日は居たんだよ。僕の隣に。手の触れられる距離に。……手だってつないだのに……、抱きしめてくれたのに……もういないんだなんて思えないよ……」
「っ……」
朝貴は、ドカッと僕の横に座ると、そのまま僕を抱きしめた。やさしく、頭を撫でられる。
「我慢すんなよ!俺の前でも我慢とか……すんなよ!!淳とか静香とかの前じゃ強がってたんだな?夕貴いっつもそうだ!!周りのこと気にして、気遣って、いつも我慢する!よくないよそれ……。泣きたかったら泣いて良いんだよ。清桜に、いっぱい文句言っていいんだよ。だって……だって清桜が悪いんだからね、我慢しないで?遠慮もしないで。そうされてる方が心配だよ」
「でも……だって……っ……いなく……なっちゃった……。っく……清ちゃん……清ちゃ……うっ……ぐすっ……うわあああああああああああああああああああっ」
あんなに大きな声をあげて、盛大に泣いたのはいつ以来だろう。朝貴にしがみついて、何度も清ちゃんの名前を呼んだ。それでも、あの人は此処に来てくれはしない。泣き疲れて眠るまで、僕の涙が止まることはなかった。
人知れずアメリカに行くとか、あいつはなんなんだって感じですよね。
一番夕貴を傷つけてるのは清桜。
だけど、彼だってそれを望んでやったわけじゃないってことだけは覚えてていてほしいです。
夕貴も清桜も、どちらもいろんなものに縛られてるんです。
一筋縄じゃいかない感じになっちゃいました。
次回4日更新予定。