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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
第9章 卒業と夕焼け
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*61*

卒業式当日です。

***   ***   ***


 卒業証書授与式当日。


 その日はよく晴れた日だった。青く澄んだ空に、白い一本の飛行機雲が伸びていく。あの飛行機はどこへ行くんだろう。そんなことを考えながら、僕は体育館の中に足を踏み入れた。しっかりと飾り付けられた館内。そして、ステージの上の方には、白く大きな板に達筆な字で『卒業証書授与式』と書かれて吊る下げられていた。ステージにはきれいな花が豪勢に飾られている。きれいに並べられた椅子の間を僕はステージの方に向かって歩いて行った。


「おはようございます」

「はよ。今日も早いじゃんか」

「青葉先輩も珍しいですね」

「いっちょまえにいうようになったなこいつ」

「まだ眠いよー」

「朝貴もおはよう。朝部屋にいないからびっくりしたよ」

「んー、龍弥にたたき起こされた。頭たんこぶできてるかも」

「ほんとにたたかれたのかよ」

「あれ、澪先輩は?」

「まだ寝てるんじゃねーの?」

「相変わらずですね。……とうとう、今日になっちゃった」


 ステージの上から、僕らは館内を見渡す。館内には最後の打ち合わせに走る生徒と教師がまばらにいるだけだ。


「夕貴、清桜に会ってきた?」

「ううん。今朝は会わないできたんだ。会ったら……笑顔でなんかいられないから。朝貴がうらやましいや」

「だって龍弥、進路なんもないんだもん。しばらくニートだよ」

「ちゃんと家の仕事するんだろ?」

「それって今までのまんまだよ?少しはなんか夢を持てって感じじゃん?」

「そうだね……青葉先輩は?」

「来るなって言われた」

「え?」

「意地でも留年したくなるから顔見せないでって。こぶしを握り締めて言われたら俺は引くしかないだろ?」

「そ……そうですね」


 そして、式は始まった。卒業生の入場、開式の言葉、来賓紹介、校長の式辞。式は順調に進んでいる。

 でも、此処で僕は気がついた。清ちゃんが見当たらない。目玉の卒業証書授与でも、清ちゃんの名前が呼ばれない。壁際で、式の進行を見守りながら、会場内を見渡すけど、みつからない。そして、卒業生の言葉。

 僕はステージに現れた人物を見て、驚きを隠せなかった。現れたのは、清ちゃんではなく――――榊原先輩。


「あれ、なんで榊原先輩が出てんだ?」

「清桜じゃなかったの?」


 隣に居る青葉先輩や朝貴も不審に思ったみたいで、思わず言葉を漏らしていた。


「――――卒業生代表、近衛清桜……代読」


 その後、僕は式のことなんかどうでもよくなっていた。どうして清ちゃんがここに居ないのか、それだけが頭の中で渦巻いていた。


会うこともなく、別れの日の前に訪れていた別れの時。


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