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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
第8章 オレンジ色の
58/73

*57*

 カフェのボックス席で、僕は念願のチョコバナナパフェを食べている。その横にはいちごパフェもある。メニューの写真につられちゃったんだよ。おいしそうだったんだもん。清ちゃんはコーヒーだけ。おなかすかないのかな?僕よりおっきいのにさ。それとも胃は小さいのかな?燃費いいのかな?


「なに、さっきから俺のこと見つめちゃって。心配しなくてもパフェ横取りしないからゆっくり食べなよ」

「そ、そんなこと心配してないよ!!清ちゃんは……そういうことしないでしょ?」

「まぁね。早く食べないと、いちごパフェのイチゴアイスとけちゃうよ?」

「わっ!はぐはぐ!!」

「ぷっくくくく……。ほんと、夕貴は昔から変わらないね」

「むっ、……成長してないってこと?」

「怒んない怒んない。そうじゃなくてさ、なんていうか……なんだろう。とにかく、昔のままなんだよ」

「よくわかんない」


 首をかしげる僕の返答に清ちゃんはただ笑ってた。


「いいんだよ。それで。そうじゃなきゃいやだっていうのが本音かな。夕貴が夕貴でいてくれたから、変わらずにいてくれたから。俺はそれだけでいい」

「清ちゃん?」

「なんて……ただの俺の願望だけどさ」

「え?」

「変わんないでほしい……ずっと。ずっと俺の事を想っててほしいなってね。べつに強いたりはしないけどさ。夕貴の好きなようにすればいいんだから。俺は、夕貴には反対しないから。ま、危ないこととかには反対するけどさ」

「ど……どうしたの?急にそんなこと……」

「そうだね。なんだろうね。想いが通じ合って、今までの感謝とかがわき上がってきたからかも。昔は俺、すっごく反抗期長くてさ。家になんか帰りたくなくて、学校から帰ってまず行くのが夕貴の家だった。あの時間が俺は好きだったんだよ。別になんてことない学校の話をさ、面白そうに聞く夕貴といたら、俺までなんか楽しくてさ。最初は学校に行けない夕貴のためにとか思ってたのに、いつの間にか俺のためにいってたんじゃないかって思えてくるんだよね。ほんと、俺は夕貴なしじゃいられないくらいにさ。だから高校はいってからの2年間は地獄だったな。なんにも楽しくないの。今思い出したらおかしくて笑えちゃうくらいにね」

「そうだったんだ……。でも、それは僕もそうだったよ。朝貴からも学校の話聞いてたけど。どっちかって言うと朝貴のはお土産目当てだったからさ。清ちゃんの話聞くの楽しみだったよ、僕も」

「そう?んで、これはそのお礼と俺の気持ち」


 そういって、清ちゃんがテーブルの上にとりだしたのは、小さな箱。青い包装紙に白いリボン。リボンには小さな造花がいくつもついていた。


「これって……もしかしてさっきの……」

「そう。実はさ、俺ここに来たことあるんだよね。オープン初日に」

「え、そうだったの?」

「実はここ、うちの系列」

「……清ちゃんの家って本当に何でもやってるんだね」

「馬鹿みたいにね。お前も将来いくつも会社を持つようになるんだからとか云々でさ、オープン記念式典みたいなのに呼ばれたわけ。眠くてかなわなかったよ。で、そん時にあの店にはいってさ。ちょっと値段は安いけど、物はいいし、いろいろ融通も利くってことで、ちょっとオーダーしてたんだよ。今日できてて良かった」

「これ……僕にだったの?」

「え、俺が誰にあげるっていうのそれ」

「アクセサリーなんて、僕は似合わないから。てっきり女の人にでもあげるんだなって思って……」

「妬いちゃった?」

「……かもしれない……」

「っ……。あぁ、やば。ほんともう……素直だよねぇ夕貴は」

「へ?あ、開けていい?」

「ん……だめ。寮の部屋帰ってからにしてね?」

「うん、わかった。ありがとう」

「いいって、ほんとに安もんだし」


 それから、夕方になって外で朝貴たちと合流して僕らは寮へと帰った。

 寮の自分の部屋に戻って、朝貴がお風呂に入ってるうちにこっそり清ちゃんからもらった箱を開けてみる。そして、さらにその中にあった小さな箱を開く。その中にあったのはシルバーのリングだった。しかも、僕の指にぴったりのそれ。中央に小さな石がきらめいている。とても安ものには見えないけどいくらしたのとは聞くのはだめだしな。

 そしてふと、自分がそれを左手の薬指に付けてしまっていることに気がつく。気がついて、一人ソファで赤面した。恥ずかしくてはずそうとしていたらそばに置いていた携帯が震えた。メールだった。それも清ちゃんからのメール。


【いつか、ちゃんとした本物……絶対、夕貴にあげるから。待ってて】


 たったそれだけの文章。だけど、僕はすごくうれしかった。


「もう……これで十分だよぉ……。清ちゃん、大好き……」


 その時は、僕もあげてもいいのかな。清ちゃんの指の大きさ知らないけど。でも、どうせなら一人でしているより、ペアで付けたいって思うんだ。いいよね。だから、待ってるよ。その時が来るのを、僕はこのリングと一緒に待ってるから。

 うれしくて、幸せで胸がいっぱいのまま、僕は自分の薬指にはめているリングにキスを落とした。


リングとかの知識はあまり詳しくないので適当です。


安ものといったって、清桜が本当に安いものを夕貴にあげるわけないと思います。

多分そこそこの値段でしょう。


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