*55*
清桜は心配し過ぎ。
そのうち禿げるんじゃないかと私は心配している。
痛いよ。苦しいよ。でも、会えた。見つけてくれた。どうしよう、うれしい。泣きそうなほどうれしい。
「清ちゃん……」
「戻ったら本だけあったから……びっくりした。心臓止まるかと思った」
「ごめんなさい……」
「どうしたのかと思って電話したら本の横で鳴るし……」
「ごめんなさい……」
「誘拐されたかと思って……」
「それはないと思うけど……」
「なくない!あのね、夕貴だって北條家なの。お金持ちのお家の子なの。わかる?」
「う……ん、でも……」
「それに、朝貴と夕貴はすっごく似てるの、それもおわかり?」
「うん……でも……」
「間違えられるって可能性もあるの。わかってる?」
「うん……でもね……」
「いくら高校生でも誘拐されないって確証はないし、安全とも言えないんだからね?誘拐犯なんて金目当てなら何でもするって思ってないと」
「うん……心配掛けて、ごめんなさい……」
抱きしめられながら、そう言われる。そのたびに、腕の力が強くなる。困らせた。心配させた。呆れられた。やっぱり、あそこを勝手に一人で動くのはまずかったんだ。でも……、智紀君を見捨てるなんてできなかった。一人で、さびしそうで誰かを求め探してるあの姿と自分が重なってしまった。自分の居場所を探し求める自分と。自分の存在を認めてくれる人を求めてる自分と。
「まぁ、何もないのに夕貴がふらふらするわけないんだけどさ。だからこそ、連れ去られたんじゃないかって思ってさ。無事でよかった」
「ごめんなさい……もう勝手にどっか行かないから」
「俺も心配しすぎなのかもしれないけどね。でも、なんでこんなとこいるの?トイレならあそこのすぐそばにもあった気がするけど……」
迷子です。ただの迷子です。トイレはそんなに行きたくないです。
「ちょっと、歩いたら……迷子になっちゃっただけ……」
「なんだ……ただ迷っちゃっただけかぁ……」
がっくりと力を抜いた清ちゃん。そんながっかりしないでよぉ。恥ずかしいなぁ。
「でも、なんで?」
「それはね……」
僕は智紀君のお母さん探しを手伝ってあげたことを清ちゃんに話した。話し終えるとなぜかまた清ちゃんに抱きしめられたのだ。なんでだろう?
「だから夕貴好きだよ」
「え?」
「ここ広いから迷子になっちゃうんだねぇ」
「そ、そうだね。迷路みたいだもん。……すぐ見つかるだろうし、大丈夫かなって思ってたら……結構時間かかっちゃって……でも、ほおってなんか置けなくて……。でも、やっぱ清ちゃんにいっていけばよかったね……ごめんなさい……」
しょんぼり。反省します。
「……そんなしょげないしょげない。悪いけど、今度は俺の買い物付き合ってくれる?」
「うん、いいよ。ていうか、清ちゃんの行きたいとこ全然行ってないからね」
「そうだっけ?じゃあ、こっちこっち」
清ちゃんに手を引かれて僕らはまた買い物を再開した。
どんだけ清桜は夕貴中心で動いてんだか。