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「ごちそうさまでした!」
「よく食べたね、また。じゃ俺これ片付けてくるから夕貴はまたちょっと待ってて」
「今度は僕が行くよ?」
「いいよ。また本でも読んでて」
「ん……」
そういいつつすでにお盆をもってっちゃうんだからな。今度は僕がやろう。今度っていつ?
さっき読んでいたところは栞を挟んでいたのでそこから再び読書を再開する。やっぱり、この作家さんの本はサクサク読める。次の展開が気になって仕方がなくなるからどんどん読み進めることができる。この小説の世界観も好きだ。
次のページに行こうとして、めくった時だった。近くの雑貨屋さんの前で何度もあたりを見回す男の子の姿が目に入った。最初は何か買いに来たのかと思って気にしなかったけど、その顔があまりにも不安そうなのが気になり始めてきた。今にも泣き出しそうに、あたりをきょろきょろ。これってまさか……。
そう思った僕は小説を一旦テーブルの上においてその子の方へと向かった。
「あのさ、どうかしたのかな?」
その子の目線が合うように、しゃがんで声をかけた。3~4歳くらいかな?いきなり声を掛けられてびっくりしてたみたいだけど、その子は僕がそんな危ない人には見えなかったのか、たどたどしく話してくれた。案の定、迷子だ。どうやらお母さんと一緒にここに来たみたいだけど、はぐれちゃったらしい。話を聞いてるうちに泣き出しちゃった時は焦った。あわてて頭をなでてあげて、偶然持っていた棒付きキャンデーを上げる。
「マ……マどこにいるのかなぁっ……ぐすっ」
「きっとママも探してるし、僕も一緒に探してあげるから。だから元気出して、ね?」
「うん……」
その子の小さな手を握り、連れて歩く。こんな広いところで、迷子になるのってすごい不安だよね。怖いよね。一人で……こんな小さな時に居るのは……嫌だよね……。だから、探し出してあげたい。早く安心してほしい。僕は男の子とともに、必死にあたりを探した。
どれくらい歩いただろう。どれくらいエスカレーターを乗り降りしただろう。今僕が何階に居るかもわからない。けど、いまだにこのこのままは見つからなかった。もう、迷子センターに預けようかと思った時だった。
「智紀!!」
「ママ!!」
前方から来た女の人に、その男の子――――智紀君は元気に走って抱きついた。そっか、あの人がお母さんなんだ。よかったね、会えて。もう、はぐれちゃだめだよ。せっかくお母さんがそばにいるんだから、そのそばを離れたりしちゃだめだよ?
「お兄ちゃんありがとう!!」
「よかったね」
智紀君は元気に手を振ってくれた。その顔はもう笑顔があふれていた。智紀君のお母さんも僕に会釈をした。その顔ももちろん同じ。僕も笑顔で手を振り返した。さて、清ちゃんのところに帰ろう……。
「ここはどこ?此処は……どこ!?」
うわ、今の感動の再会が吹っ飛んだ。今度は僕が迷子だ!!どうしよう。そうだ携帯!!は……小説の横に置きっぱなし……なんて非常識なんだろう。そうだ、こういうところには見取り図とかあるよね。こういうエスカレーターのわきとかに……あった!って、わからない。現在位置はわかるけど、元のあの場所がわからない。どこからどう来たのかまるで分らない。と、とりあえず歩いてみよう。記憶を探りながら……。
*** *** ***
完全に道に迷いました。もう駄目です。だって、これで14回目の行き止まりです。なぜかトイレに来ちゃいました。別にしたくはない。どうしよう。清ちゃんのところに帰れない。迷子なんて……そんな……。トイレわきのベンチに腰掛ける。どうしよう、迷子センターに行くべきかな。でも智紀君ならまだしも、僕みたいな高校生が迷子になりましたなんて……。冗談だと思われる。絶対その場でさようならって言われるんだ。じゃ、どうするの?誰かに聞くって言ったって、なんて聞くの?さっきいたあのご飯食べるとこってなんていうの?
「……清ちゃん……」
いつだって、清ちゃんが来てくれた。けど、こんな広くて、人もいっぱいいるところから、僕を見つけ出すなんて、そんなの清ちゃんだって無理だよ。運よく朝貴たちに会わないかとも思うけど、そっちの確率も低い。いっそ、出口までいって帰ろうかな。でも、もし清ちゃんが探してたら?ずっとずっと探してくれてたのに、僕は帰ってました。なんて、そんなのあんまりだ。最低だ。じゃ、じゃあ、どうすればいいって言うの?
「……き!!……夕貴……!!夕貴!!」
「ぅえ?せ……ちゃん……?」
「夕貴!!」
うっそ。嘘嘘嘘……嘘だ……。
「いた!夕貴!!」
「んぷ!?」
声が聞こえた。僕の名前を必死に叫んでいるような声。おもむろに立ち上がって、そのほうを見る。そっちに居たのは、来るわけがないと思っていた人。いつも僕のところに来てくれる。僕を助けてくれる人。僕とその人――――清ちゃんの視線が交差する。そして、走ってきた清ちゃんは、そのままの勢いで僕に抱きついてきた。
智樹君は今後出番はない此処だけの登場のキャラ。
夕貴は一人でいる時間がとても多かったので、一人でいるときの心細さというのが誰よりもわかるんだと思います。
だから見捨てられなかったんですね。
お人よしといえばそうなのかもしれません。
清桜はなんかエスパーなんじゃないかと最近思う今日この頃……




