*53*
本が入ってる紙袋を抱えて、清ちゃんとショッピングモールの中を歩く。おしゃれなアパレルショップとか、雑貨屋さんとか店舗数はかなりあるみたい。一日じゃ全部回れそうにないね。一人じゃ迷子になりそう。
「どこに何の店があるかわかんなくなるねぇ……」
「ほんとだね。迷子になりそう……」
「迷子のお知らせをしまーすって?夕貴迷子になったらちゃんと迷子センター行くんだよ。迎えに行ってあげるから」
「ならないもん!!……朝貴はなりそうだけどね……」
「あぁ……うん、だろうね。そしたらあいつが迎えに行くさ、うん」
「どうして清ちゃん、龍弥先輩と仲悪いの?」
「全部が気に食わないから」
やめて!そんな笑顔でそんなこと言うのやめて!清ちゃんってあんまり人の事嫌ったりしなさそうなのに、ていうかそんなに嫌ってるの龍弥先輩だけな気がするよ。
「あ……」
(ぎゅるるるるるるる)
「いっ!!」
「ぷははは、食べ物屋さん見ただけでおなかの音なるってどんだけっ……」
「だ……だって……」
もうお昼時じゃん。それに、すごくいいにおいするし……。わー、ラーメン屋さんに、洋食レストランに、お蕎麦屋さん、ハンバーガーショップ、すごーい。共通の席を囲むようにお店が並んでる。10件はあるけど、全部違うジャンルのお店。
「お昼にしようか」
「うん!」
「ほんと元気になるんだから……。何食べる?」
「全部!」
「……初めてだよそんな答え帰ってくるの」
「だ、だめ?」
「どこか一軒のお店にしてるとうれしいかなーって。頼むの大変だよ。せめて二軒ね?」
「うー、じゃあ、ラーメンとハンバーガー」
「はいはい、頼んでくるから夕貴は席取ってて」
「うん」
えーと、開いてる席……開いてる席は……あ、あった!
なんとか、2人用のテーブルを確保。結構こんでるお昼時に、席を取れたのは運が良かったと思う。清ちゃんが戻ってくるまで、さっき買った小説を読むことにする。
小説を数ページほど読んだところで、清ちゃんがごはんと一緒に戻ってきた。むっ、清ちゃんカルボナーラなんだ。おいしそうだな―……。温泉卵乗っかってる。あれ割って麺に絡めて食べると何とも言えないくらいおいしい……。って、なんでぼくはまた人のご飯を!!
「お待たせ……ってどうかしたの?」
「なんでもない!!なんでもないから!!おなかすいたんだよ!!さ、食べよ!!」
「そう?」
ぱきっと、割り箸を割ってまずはラーメンから。伸びちゃうと美味しくないからね。ラーメンをすすって……あ、温泉卵割れた。中から美味しい黄身がとろーって……。いやいや、ラーメンの味付け卵で我慢するんだ。こっちも半熟だし。うん、おいしい。あ、フォークでくるくるして……うわー、おいしそ……。そしてそれが清ちゃんの口に……あれ……。なんでぼくの方に向けてくるの?
「清ちゃん?」
「夕貴、ガン見してるから。そんなことしなくてもちゃんと上げるからさ」
「え……」
そ、そんなに見てたの僕?うわっ、はずかしい。あれは清ちゃんのだって思ってたのにな。う、すごくいいにおいがする。おいしそう。黄身もいっぱい絡まってて……でも……。
「せ、清ちゃんのだからいい。僕これだけあるから……」
「でも食べたいんでしょ?ほら、遠慮せずに、あーん」
「あ……あーんって!!やだっ、恥ずかしいからいい……」
「ほら、早くしないと落ちちゃうよ、あーん」
「う……あ……んあー」
「ふふ、おいしい?」
僕はそれにもぐもぐしながら頷く。なんでこんな人目に付くところで、男が男にあーんしてもらってるんだろう……。恥ずかしい。顔熱い。でも、おいしい。
「ベーコンも食べる?」
「でも、清ちゃんのなくな……もぐもぐ……」
別に食べさせてほしくて口あけたわけじゃないのに……。ベーコン厚切りでおいしい。でも、清ちゃんの無くなっちゃいそう。清ちゃんだっておなかすいてるはずなのに。
ふと、僕の視線が手をつけてないハンバーガーに向く。包み紙を向いてそれを半分こする。そして包み紙に半分包んでそれを清ちゃんのお盆の上に置いた。
「夕貴?」
「僕もらったから……清ちゃんそれじゃ足りないから……。僕満腹でもそれじゃ嬉しくない……から……。だから、ハンバーガーあげる。半分じゃ足りない?なら全部上げるから……。だから、清ちゃんもおなかいっぱいにならなきゃ……うれしくない……から、それはあげるの……」
「っ……」
清ちゃん口に手を当ててるけど、嫌だったのかな。でも、僕ばっかりもらうのは嫌だからな。うれしいけど、ぼくはいままでいっぱいもらってくるばかりだったから、少しずつお返しできたらいいな。
「はぁー……夕貴、ほんとにかわいい……」
「んぐ?」
「なんでもないよ、ありがとう」
「う、うん」
面と向かってお礼を言われると、照れちゃうんだけどな。あ、ラーメン伸びちゃうや。
食べ物の話が多い気がしないわけでもないのですが……
夕貴なので仕方がないですね。
あーんしてもらって真っ赤でもぐもぐしてるのはかわいいです。
やっと少しだけど恋人っぽいことしてくれました。