*39*
年も明け、再び変わらぬ学校生活が始まってから数日が経った。まだ冬休みの余韻から覚めないのか、学校内はどこかゆっくりと時間が流れているようにも思えて来る。夕貴は朝貴とともに図書室にいた。いくら身体が驚異的な回復を遂げても、頭の中身はそうは行かないのだ。入院していた2年もの間の勉強はちんぷんかんぷんだった朝貴は、夕貴に特別授業をしてもらっている。
「でね、x=25になってそれで……」
「むむ……なんで25?」
「なんでって……こことここかけてさらにここにこれを代入して……」
「そか、こっちがこうなって……よし、あとは自分でできる!!」
「そう。じゃ、またわかんないとこあったら……」
「いんすーぶんかいってなんだ?」
「……」
朝貴、物覚え悪いんだよね。一度身につけば忘れないのに。それまでがほんっとに大変なんだ
「なーなー、数学どこまでやればいい?」
「そのページで今日は最後」
そう夕貴が言った。その言葉に朝貴は、じゃああと3問だなっと嬉しそうに笑顔を見せる。甘いよ、朝貴。数学は終わりだけどまだ国語があるからね。古典の基礎くらい覚えてね。
静かな図書室の中には、夕貴達以外にも生徒の数はある。受験シーズンのせいか、朝貴の様にひたすらペンを動かす姿が多い。
「そーいえばさ」
「なに?」
「夕貴は清桜に冬休み会った?」
「会ってないよ。でも、なんで?」
「んー、べつに。ならいいや」
「何?気になるよ」
「ねぇねぇ、此処の答えの方が気になるんだけど」
「って、そこさっきと同じだよ!?ひっくしゅ……」
「あれれ?夕貴風邪?」
「わかんないけど……最近さらに冷え込んできてるからそれでかも……」
「お薬あるの?」
「最近は調子良かったからないけど……平気だよ多分。あったかくして寝れば平気……」
「じゃないよねいつも」
幼少のころから繰り返されてきたやり取りだったためか、朝貴にはすぐにわかってしまう。いつも大丈夫しか言わない夕貴だが、そういうときは必ず体調を崩すか、悪化させるかのどちらかになる
「だ、大丈夫だよ。それに……今週末は出かけたいし……だから絶対風邪ひかないから」
「出かけるの?ひとりで?」
「ううん、清ちゃんと一緒だけど」
「デート?」
「ちっ……違うょ!!僕がほしいものあって、それで買い物行きたいなって思ったんだけど。僕土地勘ないから、一人じゃいけないなって思って。最初は朝貴を誘おうって思ってたんだよ?でも……」
「あはは!今週末は、俺検査だっけ」
「だから無理じゃん。で、静香先輩とかも考えたんだけど、何か気が引けるって言うか。なんか最近静香先輩元気ないし、澪先輩もどこか変だから……。だから清ちゃんに頼んでみたらいいよって言ってくれたんだ。ただそれだけだよ」
「なーんだつまんない!」
「つまんなくないよ。っくしゅ!!うー、朝貴ごめん、今日はこれでおしまいにしよう?」
「ほんとに大丈夫?ホットミルク作ってやるな!」
「ありがと」
僕は朝貴とともに寮に戻った。
お気づきの方もいると思いますが此処で宣伝←
本作とリンクした『和も洋も甘いもの』連載中です。
このお話にもちょくちょく?出てきてる静香先輩と淳のお話です。
近日良介と澪のお話も問う公開しできたらいいなと思ってます。
(タイトル未定ですのでそれが決まり次第ですが……)
本作を一応優先で、ほか2作品はぼちぼち更新してきます。
とかいいつつ、本作があまり進んではいないんですが。
がんばります。