*38*
文化祭から三ヶ月後。年明けを迎えた最初の登校日。つまり始業式の日、夕貴は鏡の前で自分の顔とにらめっこをしていた。黒く染めていた髪の毛は、地毛の薄茶色に戻し、カラーコンタクトをはずして青い瞳の姿だ。つまり北條夕貴の姿に戻ったのである。その後ろから、黒髪黒眼がひょっこり顔を出す。
「ほら!やっぱ夕貴はその格好が一番だって」
「かなぁ……。朝貴も制服似合ってるね。やっぱ朝貴は何を着ても似合うからいいな」
「なーにいってんだよ。俺が似合うなら夕貴だって似合ってるに決まってんじゃん。やっと、夕貴と一緒に学校行ける」
「うん」
朝貴は、驚きの回復を遂げ、立って歩け、さらには走り回れるほどにまでになっていた。医師も驚いていたほどの回復なのだ。もともと運動神経は抜群だったからかもしれないのだが、ほとんどは朝貴自身の努力の成果だろう。この学期から編入することが決まり、空き部屋がなかったため、もともとの朝貴として使っていた寮の部屋を朝貴と夕貴の二人で使っている。同じベットで寝ているが、全く抵抗もない。まぁ、当たり前といえば当たり前だし、兄弟だし、仲の良さの表れともいえる。
「なんかドキドキする……大丈夫かな。みんな理解してくれるかな……」
「大丈夫だって。清桜がうまくやるって言ってたんだろ?」
「うん、俺が説明するから大丈夫―って言ってたから」
「なら大丈夫だよ。夕貴は何も心配してなくていいんだ!んじゃ、そろそろ行くか」
「うん」
僕らはそろって、まずは生徒会室に向かった。僕らのことを知ってるのは今の時点では清ちゃんだけ。だから榊原先輩とか青葉先輩。澪先輩に静香先輩には最初に話そうって、清ちゃんと話していた。生徒会室に付くと、その部屋の前で清ちゃんが待っていた。
「おはようございます、会長」
「あーまた会長とか言う。おはよう夕貴。それに朝貴も」
「俺はついでかよー!!」
「そんなことないけどね。やっぱ、夕貴はその姿じゃないとね」
「だろだろー!」
「そ……かな」
そして、僕らはそろって生徒会室に入った。中には四人が待っていた。僕と朝貴を見た瞬間少なからず四人は驚いて目を丸くしていた。でも、会長……清ちゃんがかいつまんで僕らのことを説明したら、なんか納得してくれたみたいだった。いいのかな、そんなにあっさりと。
「へぇ、夕貴君ってハーフだったんだ」
「はい、母はドイツ人だったみたいです。あの……なんでそんなにあっさりとなっとくというか、受け入れてくれたんですか」
「朝貴は朝貴。夕貴は夕貴。どっちも好き」
「え?」
朝貴と夕貴の間に入り込んだ澪が二人の腕を握りそう言った。驚く夕貴は周りを見回す。ほかの三人も同じ意見のようだった。その後、始業式で清桜は夕貴が今まで家庭の事情(あまり深くは話さず、飽くまで家庭の書事情とだけ伝えた)で朝貴として通っていたこと、その事情が解決したのでこれからは夕貴としてこの学園で生活すること。そして新しく北條朝貴は転入生としてこの学園に加わると説明した。ここでも、特に反対する声は聞こえず、それどころか人気の高い夕貴がいなくならずに済んで喜んでいるようでもあった。もちろん、瓜二つの朝貴も歓迎されている。
僕、今すごく幸せだな。だって、みんなが僕の存在を認めてくれてる。それがすごくうれしい。今まで、僕なんか生きてたってって思ってたけど、此処にいられて良かったって思う。
こみあげてくる涙を必死でこらえる。それでもあふれ出てきそうな涙が、夕貴の大きな瞳の端にたまる。潤む視界、それでも夕貴は心から笑っていた。
2年も寝てたやつが3カ月で復活できるわけがない。
事はもう、私も思ってましたが……
このままじゃ時間的におかしくなるので、驚異的な復活を遂げさせました。
本当にすみません。
もう文化祭なんかやるから……
でもやりたかったので仕方がないです。
ではこれから頑張って恋愛小説になるように頑張ります!