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夕焼けに桜咲く  作者: 朝比奈 黎兎
第5章 2年前の
36/73

*35*

 訪れた沈黙は長く、夕貴は次第に居心地の悪さを感じていた。すべてを明かした今、もうここにはいられないのだ。本来、此処に入学するはずなのは朝貴だった。朝貴が目覚めたのだから、夕貴が此処に通う必要はもうない。もう、此処にいる理由すらない。

 夕貴はそのまま立ち去ろうとした。しかし、行動する前に清桜が夕貴の腕を掴んだ。


「どこ、行く気?」

「どこって……家に帰るんです。朝貴が起きた今、もう僕がここにいる必要はないですし……。朝貴、まだ通えないかも知れませんけど。でも……たぶん僕がここに通うことは、あの人がゆるさないでしょうから」

「……夕貴はそれでいいわけ?」

「今更、嫌とも思いません」

「……じゃ、俺がヤダ」

「会長……」

「2年も夕貴のこと放って置いた俺が、こんなこといえないかもしれないけどさ。でも、せっかく一緒に居られるんだったらさ、俺は今のままが良い」

「……」

「あの2年は戻らないけど、俺の過ちが許されるわけないけど、でも……。こうして触れられるほど近くに、隣に夕貴がいる。今のままでいたい」

「でも……」

「安心して、夕貴がここ通いたいならなんとかできるから。だから何の心配もないよ。だからさ、夕貴はもう、誰かの指図で動くことない。自分のやりたいようにやっていいんだよ」


 やりたいようにやる。今までそんなことできなかったのは事実。いつもあの人のいいなりになるばかりで、いつの間にか自分がやりたいこととか、夢とか、そんなこと考えないようになっていた。だから、今そう言われても、すぐにやりたいことなんて思いつかない。今僕はどうしたいんだろう。何ですぐに答えが出てこないんだろう。僕はここからいなくなりたいのか……。違う。じゃあ、此処にいたい?そう。でも……ううん、もう僕は周りを気にすることないのかもしれない。誰にも縛られず、自分がやりたい子尾をかなえてもいいのかな。


「……たい……此処にいたいです。いていいなら、みんながいて、僕のこと認めて受け入れてくれる人たちがいる……此処に……この学校にいたい……」

「うん、なら帰るのは家じゃなくて寮だね。まだ朝貴がどうするかわかんないけど、ちゃんと夕貴は此処の学生だから。あとは俺に任せて」

「なんで……何で僕にそんなことまでして……」

「ちっさい頃にね約束したんだよ」

「約……束?」

「さ、寮に帰ろうか。そろそろ時間だし。夕貴まだ本調子じゃないでしょ?お酒飲んじゃって」

「ぅ……はい」


 なんかはぐらかされた感じがするけど、でも此処にいられるんだよね。此処にいていいんだよね。そう思えただけで、なんか心が軽くなった気がする。でも、一つ引っ掛かることがある。

僕と会長は小さい頃……昔から知り合いだったみたいなのに、なんで僕はそれに覚えがないんだろう。ただ……誰か顔がわからない誰かと指切りをした覚えがあるんだ。あの人は誰なんだろう。そういえば、祭りの時とか、フランスに行ったときも誰かの姿がちらついてた……。凄く大切な思い出が僕の中からこぼれ落ちてしまってる。

 あれ、待てよ。もしかして−−−−


「会長……それ違うんじゃないんですか」

「え?」

「会長が昔約束したのは……僕じゃなくて、朝貴なんじゃないですか?僕ら瓜二つだから、会長勘違いしてるとか……」

「間違えないよ……夕貴の事だけは。何があっても、どこにいようと、何年経っても……間違えない」

「でも、じゃあなんで……だって、会長……朝貴の事が……好き……なんですよね?」

「……は?」

「だっ………だってずっと、僕に『朝貴は俺の』とか言ってたし……。だから、僕が朝貴のふりしてるの利用して、朝貴に言えないからって僕にそういって……」

「俺、一度も朝貴が好きとは言ってないでしょ?」

「?でも、俺のってそういう意味も含んだ言葉じゃ……」

「まぁ、そうとも取れるけど。でもそういった時って少なからず誰か居たでしょ?いきなり俺がそこで、夕貴なんて言ったらいろいろややこしいじゃん。だから、ね」

「……」

「俺が初めてこの学園で夕貴に言ったことが、ほんとの俺の気持ちだから」

「はじめて……?それって、あの入学式の日の……」


 入学式の日、僕は会長に呼び出されて、生徒会室に行った。そこで僕は突然会計に任命された。もちろん、何故?と理由を知りたくなった。だから聞いた。そしたら会長はこんなことを言ってそれに答えたんだった……。


『君のことが好きだから』


 確かに、朝貴とも言ってない。けど、そういう会長の目はしっかりと僕を見つめてた。

清桜ずるいですね。

ずるがしこい男なんですかね。


うまく翻弄されちゃってる夕貴ですね。


もう少し……もう少しってところまで来た気がします。

書きたい終わりのところまで何とか頑張ろう。



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