*30*
日が西に傾き完全に地平線の彼方へと消えた。夜空にはまばらに星の光がきらめいている。盛り上がりを見せた『黎暁祭』も終わりを迎えようとしていた。今は全校生徒が一つの体育館に集まり、後夜祭を楽しんでいた。いつもは何もない普通の体育館なのだが、今日は深紅の布で飾り立てられ、床にはじゅうたんまで敷かれていて、とてもそのようには見えなかった。館内には丸いテーブルに白いテーブルクロスがかけられたものが数十個置かれ、軽食や飲み物が置かれていた。制服に着替えた朝貴はこれまた制服に着替えている恵一とともに、後夜祭をそれなりに楽しんでいた。そこらへんの軽食をぱくつきつつ、近くにあったグラスに入った飲み物を飲む。
「文化祭って大変なんだね」
「やっとわかったか?それにしてもうちのクラス大繁盛だったな。午後来たお客さん、アリスいないのーって残念がってたぜ?」
「うっ……」
「そしたら写真部の人っちがきてさ、朝貴の写真焼き増ししたやつ……500枚くらいかな……それ、勝手に配っちゃった!」
「は?はあああああああああああああああ!?写真って何?まさかあのアリス着てるの取られた奴!?現像するの早っ!?て、500枚全部!?」
「いや、クラスにあと30枚くらい残ってるけど、欲しい?」
「いらないよ!!うわあああ……あんな格好残したくなかったのにぃ……」
「そういえば、その写真、会長ももらってったけど……」
「え?」
「あと、三王先輩だっけ?あの空手部主将の。あの人も10枚くらい……」
「恵一、僕ちょっと用事が出来たから行ってくるね。うん、もしかしたら戻ってこないかもしれないけど、その時は気にしなくていいからね」
「おう、俺ほかのやつのとこ行ってくっからいいぜ。がんばってこいよー!」
何をどう頑張るのかは不明だがとりあえず朝貴は、この広い体育館の中を探しに行くことにした。出来ればその写真は回収したいものだ。うん、そして焚火でもして燃やしてしまいたい。
しかしこの黎暁学園。生徒の数がやたらと多い。その中からあの2人を探し出すのは骨が折れることこの上ない。あたりをきょろきょろと見回しつつ、朝貴は体育館の中を徘徊する。しかし、何か不思議な気分になっているのは気のせいだろうか。床が柔らかいというか、ぐらぐら揺れているような気もするし、気を抜くとポケっとしてしまう。疲れが出てきてるのだろう。そうおもい、朝貴はさらに歩みを進めた。それがいけなかったのだろうか。歩みを進めていた朝貴の足がもつれた。
「うきゃっ!?」
バランスを崩し、朝貴は片足で何とか踏ん張ろうとするが、どんどん壁の方へ進んでしまう。そしてとうとう体が傾き倒れ込む。が、そこにあったやや小さい窓がなぜかあいていて、朝貴の小柄な体は、そこをうまく通り、外へと飛び出してしまった。
「うやあああああ!!?」
「はぁ?ちょ……」
朝貴はそのまま数十センチの高さから落ちた。だが、硬い地面には落ちず、何か……というよりは誰かの上に落ちた。
「あたたたたた……」
「お前……いい度胸してんなぁ?」
「え……なんでこんなところに……?」
金髪の人とはあんまりいい思い出がないんですが。この学園の風紀委員長さんがいました。しかも僕、その上にまたがっちゃってます。どうしよう。怖いんですけど。にらんできてるんですけど。僕会長と静香先輩探してただけなんですけど、なんでこんな怖い危険な人に会わなきゃいけないんですかっ!!
「俺がどこにいようと勝手だろ?風紀委員はそれなりにいろいろ仕事があったんだよ、もう文化祭も終わったんだ、静かにゆっくりさせろ」
「じゃ……じゃあ、寮に戻ればいいんじゃないんですか?あ……」
「1年のくせに生意気言うようになったなぁ?」
この人と話すときは言葉を選んだほうがいいねっ!
「じゃ、僕これで……」
「ほぉ?上級生にぶつっか……いや、のしかかってきて謝罪の言葉もねぇのか?」
「うぐぅ……ごめんなさい。じゃ、さようなら」
あの、あやまったんですけど。何で離してくれないんですかぁ!?
「あのぉ……」
「お前、やっぱ目、青いんだな」
「え?」
その言葉に驚いた朝貴の瞳は今、片方が黒。そして、もう片方は澄んだ空色になっていた。
龍弥の口悪すぎますね。不良だな。
そして、口悪いキャラってセリフが一発変換できなくてめんどくさいです。
でも今回の朝貴が体育館の窓から落ちて、龍弥の上にまたがっちゃう話は描きたかったので、書けてよかったです。
龍弥も結構朝貴とは関係がないわけじゃないので、これから出番があります。
ですが相変わらずの危険人物なので、どうなることやら……。
そういえば、このお話って登場人物紹介ありませんでしたね。
話のラストで、朝貴の目が青いとか書いてますが……
清桜の髪が紫だとか、龍弥は金だとかありますが、朝貴ってそんなに外見の話書いてた……気がしません。探せばあるかもしれませんが……
実はカラコン入れてました。
黒い奴です。もとは両方青い澄んだ空色?の瞳です。
この理由も後にかけていけたらいいですね。