*19*
夏休みなのにこんなにテンションあがらない子も珍しいですよね。
そしてそれでなのか、暗い。話が暗いです・・・たぶん・・・
学校での朝貴が別人のようです・・・
殺風景な和室。そこが朝貴の自室だった。部屋の隅に畳んで積まれた布団、8段の引き出しがある和箪笥。座布団に、ひざ下の高さまでの勉強机代わりにしている机。どれもこれもきれいにしてあるのは、おそらく河合達のおかげだろう。朝貴は懐かしい自分の部屋を見回し、ホッと胸をなでおろすと、布団のわきに持っていたカバンを置き、机の上にペットボトルを置いた。暑さのせいで、ペットボトルの周りには水滴が生じ、机の板にもそれが滴り落ちている。朝貴は座布団に腰を下ろすとそのままこてんと頭を机の上に乗せた。静かすぎる。離れにあるからというわけではなく、ここへは河合たち以外誰も近づかないのだ。だからこそ、ここは静かなのだ。朝貴は帰ってきてしまったせいなのか、茹だる気持ちを押さえ、鞄から夏休みの課題の教科書類を取り出す。この家にいて何もすることがない朝貴は、早速数学に取り掛かることにした。
かりかりとペンがノートの上をつづる音以外、静かなのは相変わらずだった。もうかれこれ何時間数学をやり続けているのだろうか。夏休み一ヶ月間用になのか、目いっぱい数学それ以外の教科も課題を出された。もう日は傾き始めて、室内も暗くなってきていた。だが集中しているのか、朝貴は電気をつけずにいまだ課題に取り組んでいた。そこへ、河合が現れる。
「あ、やっぱりいたんですね。明かりつけないと目を悪くしますよ?」
「・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・朝貴君?」
「・・・・え・・・・あ・・・・河合さん?」
「相変わらずの熱中ぶりで。学校でもそうだとすれば、成績はよろしいようですね。」
「あ、成績表だね。はい、これが今学期のだって。んー・・・もうちょっと英語が・・・。」
「・・・というより、英語以外は満点じゃないですか・・・。」
「あはは・・・英語はね、長文がよくわかんないんだ。単語とかは暗記しちゃえばなんとかなるけどさ。過去形とか過去分詞形?とかさ、よくわかんないもん。」
「それでも89点なら合格点でしょう?」
「そうかなぁ・・・だってさ、朝貴だよ。朝貴なんだよ。」
「・・・・あまりそういう風にお考えになられるのはよくないですよ。」
「ん・・・・そだね・・・。僕は僕だもんね・・・・。えへへ・・・最近よくこう考えちゃうから駄目だよね。」
そう。ここに来るといつも思う。僕は僕で・・・僕なんだと。はたから聞いたらなにそれ、といわれるだろうけど。僕にとってはこの世において最も重要なこと。僕の存在意義。自分が何者なのか。それを明確に知るってホントに大事だと思う。
「ね・・・河合さん最近あの病院に行った?」
「ええ、つい先週行きましたよ。」
「その・・・ど・・・だった?」
「ご自分でご覧になられた方が・・・・。」
「わかってるよ。・・・ほんとはすごく会いたい・・・会って、学校の事とかいっぱい話したい。だって、僕の事一番わかってくれてるの――――だけなんだもんだから・・・会いたい。けど、会いに行くの・・・・怖いから・・・。」
「・・・・・お元気でしたよ。意識が戻らない以外は・・・・・・。」
「そか・・・まだおきてないんだ。」
ああ・・・僕は罰あたり。だって、ずっとこのまま目が覚めないで・・・なんて思ってる。だめだね。でも、一度知ってしまった世界。僕が触れることなどないはずだった世界。そんな世界から簡単には身を引けないよ。願うなら、ずっとずっといたい。あの暖かくてにぎやかで、楽しい世界に。
「朝貴君が来てくれることを楽しみにしていると思いますよ?」
「まさか・・・僕のせいで寝てるのに?意識戻らないでずっとそのままなのに?僕は恨まれてるよ。」
そう、恨まれるようなことを僕はしてしまった。
あの日から僕は思う。
なぜあの迫りくる銀色の鋭い刃から逃れてしまったんだろうって。
あのとき逃れなかったら
僕が病院のベットにいたはずなんだよね・・・・
ごめんね
僕・・・沈まなくて・・・・・・・・・・・・・・・・
いろいろ伏線をいれてます・・・
が、それをどう物語の中で解き明かしていくかが難しいです・・・
ばしばし物語にできるよう頑張ります・・・