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第四章(1)

 心配していたシオドアとの結婚生活であるが、誓約書のおかげか可もなく不可もなくといったところで、今のところ穏やかな時間が過ぎている。彼と時間を共にするのは朝食と夕食の食事の時間くらいで、夜になれば彼はリンダがいる離れへと向かうようだが、その行動を他の者が知っているかどうかはわからない。知っていても口にしない、というのは暗黙の了解なのだろう。


 エマには私とシオドアの冷めた関係を伝えてあるし、できればアーヴィンとの仲を応援してほしいとまでお願いしてしまった。


「王弟殿下ですか? お似合いの二人じゃないですか。なぜ、くず男……失礼しました、あの人と婚約したのかって、実はクラス内でも騒がれていたんですよね。奥様は知らなかったと思いますけれど」


 エマが言ったような事実が、二年前に起こったとはもちろん知らなかった。それをエマに伝えると。


「だって、その件は禁句とされていましたからね。リーシなんて激怒してましたよ? あの子、ああ見えて奥様の大ファンだったんです。いつかは王弟妃となって、私たちをお茶会に呼んでくれないかな~なんて、夢みたいな話をしていたんです。私がロイル侯爵家で働くことになったのを知ったリーシには、心底うらやましがられましたけどね」


 そんなリーシは、今はマリネン子爵家の養子になり、子爵家の事業を手伝っていると聞く。子爵夫妻には子どもがいなかったため、学園に優秀な子がいたら紹介してほしいと、学園長には前々からお願いしていたようだ。


「リーシさんも、婚約されたみたいね」


 商売上手なマリネン子爵が、リーシの結婚相手に選んだのはミュゲ商会長の息子。貴族ではないが、経済力と人脈がある相手だ。そして何よりも、二人が学園時代から密かに想い合っていたのは、私たち級友にとっては周知の事実。しかしその噂がマリネン子爵家まで届いていたかどうかはわからない。


 ただマリネン子爵家は、子爵の遠縁の子を養子とし、そちらに継がせる予定だとか。


 つまりリーシを養子にしたことで、王都でも名を馳せるミュゲ商会と繋がりを持てるようになったというわけだ。


 マリネン子爵は穏やかな人柄であるが、わりと政略的な一面もあるらしい。


「そうなんです」

「てことは、次はエマの番かしら?」


 揶揄いを含めると、エマは大慌てで「私にはそんな予定はございません!」と顔の前で両手を振る。


「まずは、奥様ですよ。さっさとこんな家を出て、王弟殿下の元へ向かいましょうね!」


 目をキラキラさせながら拳を握るエマは、この状況を楽しんでいるようにも見えた。





 そんなエマが「王弟殿下から手紙が届きました。旦那様宛ですけど」と、アーヴィンからの手紙を手にして部屋にやってきたのは、この屋敷に来て数日経った頃。


 シオドアは公爵家を継ぐ者として、ポーレット公爵の仕事を手伝っているようだが、ロンペル子爵としてはさっぱりで、こちらの屋敷のことは私に丸投げである。結婚式を終えた後、式やパーティーに参加してくれた人へのお礼状を書くのは私の仕事ではあるけれど、彼はこれっぽっちも気にしていない。


 そのためシオドア宛の手紙であっても、私が確認したうえで必要であればシオドアに渡すものの、私のほうで判断できるものは私が対応していた。そして、シオドアには事後報告すればいい。


 これは彼が望んだことで、ロンペル子爵家に対しては無関心だといっても過言ではない。


 そんなシオドア宛てに届いたアーヴィンからの手紙は、内容も「久しぶりに戻ってきたし、お茶会を開くから夫婦で参加してほしい」というお誘いの内容であった。このシオドア宛というのは、あのとき私からアーヴィンにお願いしたものだ。


 彼から私宛に手紙が届けば、変に勘ぐって面白おかしく話を誇張する者がいるかもしれない。しかしシオドア宛であれば、そういった心配事もなくなる。


 私たち夫婦は、愛人との関係を続けるために、お互いを利用し合う関係にすぎない。



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