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二畳半幸福当選者

作者: うたなりや

断腸だんちょうの思い、というのが適切な表現であったように思う。



時刻は夕方の5時頃だったろうか。

その時私は読書の真っ最中であり、2年に一度出会えるかどうかの秀逸な文章にページを繰る手を止められないでいた。



しかしながら、あと一刻の内には、尻に執拗しつようにムチ打たれる馬車馬の如く、せかせかと働きにバイトへ行かねばならないため、後ろ髪引かれながらも、泣く泣くしおりを本に滑り込ませることに成功した。



いつもなら2限のみで、退屈かつ平和の象徴である学校の終わるこの日を、全力で怠惰に過ごすべく、綿密な計画を立てたうえで惰眠をむさぼるはずであったのに、今日ときたらどうであるか。



なぜこのよき日にバイトなどという、世界から見れば矮小わいしょうな小遣い稼ぎに甘んじねばならぬのか。



これは全力で責任を追及する必要がある。責任者は誰だ。私だ。



結論から言おう。

私はこの日、シフトに入ってはいなかった。

より正確に言えば、入っていると勘違いして、間抜けにものこのこ出て行ったのである。



蒸し暑さが尾を引く中、ナイアガラの滝もかくやというくらい汗をしたたらせながら、バイト先の飲食店である、炭火むにゃむにゃにたどり着いた。


すると店長がいつものごとく、遺影の様な不健康極まりない顔つきで、今日のシフトを見ながらつぶやいた。



「あれ~、おまえ、今日入ってたっけ・・・」



その一言で全てに得心のいった私は、かろやかにきびすを返し、ヘリウムガスをその体がはじけ飛びそうなくらいに注入された風船の様な足取りで、その場を後にしようとした。



しかしそこで店長が、声を文字通り音速で投げつけてきたのである。



「入っていけや」



アルバイトたちに押されぎみではあるが、店長として店の中である程度の権力を有している彼の言葉は、私のふわふわとした歩みを止めるのに十分であった。



嫌ダネ・・・



とは口にできず、そのまま入ることになった。私は協調的な人間なのである。



よくよく店長に話を聞いてみると、どうやら本来入るはずだった人物が(ここでは仮にSと呼ぼう)時間を過ぎても来ず、電話をかけても出ず、グリストの掃除はどうしようか、おれは休憩できるのか、などと悩んだあげく、どうしようもなくなって本日のシフトとにらめっこしているところに、私とうカモが、ネギどころかカセットコンロまで担いで現れたというわけらしい。



・・・Sへの、執拗なオニ電が始まった



怒り心頭した私は、ナニかにかれたかのごとく、あるいは失ったナニかを取り戻そうとするかの如く、Sへ電話をかけ続けた。



もちろん、その間も仕事の手を止めることはない。

寝不足に血走った(まなこ)の奥に狂気の火を灯し、中々電話に出ないSに苛立ちつつも、注文の入った料理を作り、洗い物をし、漬物を盛り、電話をかけ続けた。



どうして電話に出ないのか、あるいは出られないのか、もはやそんなことはどうでもいい。いや、はなから興味などない。



Sの携帯電話の着信履歴を、私の名前でいっぱいに埋め尽くすという不毛かつ無駄な行為に取りつかれ、もはや本来の目的など露ほども思い出せなくなった頃、ふと我に返り、虚しくなった。



増えていくのは盛り終わった漬物と心労ばかりで、減っていくのは携帯の電池と、仕込んだばかりのモツ煮であることに気づいたからである。うむ、うまい。



こうしてモツ煮のおかげで冷静さを取り戻してみると、今度は逆にSのことが心配になってきた。



・・・Sへの、執拗なオニ電が始まった



もちろん、その間も仕事の手を止めることはない。

寝不足に血走った(まなこ)の奥で揺らめく狂気のほのおを眼薬で鎮火し、中々電話に出ないSを案じつつも、出来上がった料理を運び、空いた皿を下げ、レジを打ち、電話をかけ続けた。



どうして電話に出ないのか、あるいは出られないのか、もはやそんなことはどうでもいい。いや、はなから興味などない。



Sの携帯電話の着信履歴を、私の名前でいっぱいに埋め尽くすという不毛かつ無駄な行為に取りつかれ、もはや本来の目的などミジンコの足の先ほども思い出せなくなった頃、ふと我に返り、虚しくなった。



増えていくのは打ち終わった伝票と乳酸ばかりで、減っていくのは私の心と、揚げたばかりのごぼうチップであることに気づいたからである。うむ、うまい。



かくしてごぼうチップのおかげで、再び冷静さを取り戻してみると、いささか、飽きた。



私は携帯を放り出すと、この債務さいむ不履行をいかにして取り立てるかを考え始めた。



しかし、暇を持て余した同僚たちからの心無い言葉の数々により、この重要かつ崇高すうこうなる思索は中断を余儀なくされた。



私の敬愛する唾棄だきすべき大学の友人ならば、あらゆる意味においてこの状況を楽しめたのだろうかと、ふと思ったが、思っただけである。



かように、絶賛人間不信におちいりかけていた私ではあるが、そこで奇跡が起こった。



普段めんどうなことはあまりやろうとしないように見える店長が、グリストの掃除をやり始めたのである。



飲食用語に不慣れな貴兄貴女のために解説しよう。

グリストとは、カレーを作ろうとして失敗したシェフが、開き直って、あたかもとんこつスープであるかのように見せかけた汁を、うっかり5年程煮込んでしまったという見た目をした、ゴミである。



ようするに、未曾有みぞうの腐臭がする液体状のゴミである。



自分で書いていて非常に気持ち悪くなった喩えではあるが、適切不適切を問わず、これ以上にさい穿うがった説明はないであろういう自負をもっている。どうでもいいが、重要なので覚えておいてほしい。

しかしあまりに気持ち悪くなってきたので、とりあえずグリ○トと、伏字にしてアプローチしていきたいと思う。



話を戻すと、この激しく香るゴミのスープの処理を、いつもはバイトにやらせる店長が自ら行ったのである。



作業の途中、店長が巨大なボール使って放流した水が、私の靴をなめるように侵食したことは許そう。さらには、床を跳ね返った水が私の前かけに世界地図をプリントしそうになったことも許そう。



ただただ私は店長の優しさに涙を流したのである。嘘である。



そして店長はグリ○ト掃除を終えると、何処(いずこ)へと去っていき、それ以降どこで何をしていたかは知らない。



閑話休題



とりあえず、私はゴミ捨てに行くことにした。

まだまだ営業が終わるまでには時間があったが、早く帰るための布石を打つことはやぶさかではないのだ。



この後忙しくなる可能性など、米軍基地が明日沖縄から消えて無くなるぐらいあるはずも無いので、大そうな余裕と無責任さを以って私はゴミ袋とダンボールをカートに積み始めた。



むろん、さっき店長がぬるぬると片づけたグリ○トもそこに含まれていた。

本来ならばグリ○トは別口で持っていかねばならないのであるが、何故か店長が普通のゴミと一緒にしれっと混ぜていたので、私も空気を読んで、わずかに残っていた良心とともに闇に葬ることにした。



ゴミ袋を積み終えると、私の前には文字通りの山が出来上がっていた。

カートの許容量をはるかに超えるゴミは天を突かんとする若草山の勢いで、カートのふたが閉まらなかったのは言うまでもない。一部で誇張あり。



私にとっては取るに足らない日常の些事であるので、数瞬の後に待ち受ける悲劇に忸怩じくじたる思いを以って反省するなど、夢想するべくもなく、さして気にせずカートを押して歩き始めた。



この時私は3つの間違いを犯したことを率直に認めよう。


1つ目は、先日行き損ねた長浜ラーメンの味について妄想していたこと。

2つ目は、ダンボールをカートのふたに挟んで積んでいたこと。

そして3つ目は、前をよく見ていなかったことである。



カートで扉を押し開いた次の瞬間、扉によって押し戻されたダンボールが、酒屋の扉を勢いよく開ける西部劇のガンマンよろしく、カートのふたを跳ね上げたのである。



不意をついて襲来したゴミカートのふたによって、私はあごを強打した。



私は衝動的に生まれてきたことを謝りそうになったが、賢明にも堪えることができた。いや、何かにつけてポケモンポケモンとわめく素晴らしい友人のように、素直に自らの誕生をび、己を開放してやるべきだったのかもしれない。



だがしかし、仮に謝ったところで誰が許してくれるというのか。

20を幾ばくか過ぎたムサい男を抱きしめて、“もういいんだよ”と囁きかけてくれる変態、もとい寛大な人間がいるはずもないし、自分で自分を許すなどという気持の悪いことを試そうという気にもなれない。

せいぜいが、然るべき所に即刻通報されるのが必定というものであろう。



この時私が喉まででかかった言葉を、胃液と一緒に飲み込んだ理性と勇気を、後の私は英断であったと喝采をおくるに違いない。



かくして、波乱に満ちた思索の旅、もといゴミ捨てを終えた私は店へと帰還した。



店へ戻ると何故かオーダーストップも近い時間になっていた。不思議であった。



それから後のことはあまり覚えていない。



洗い物に傷ついた両手を気遣かってハンドクリームを塗りたくっていた気もするし、鼻唄を歌いながら、素晴らしく流れるような手つきで、米のツヤを出すのに精を出していた気もする。はたまた巨大な冷蔵庫に入って涼んでいた気もするが、いずれにせよ、気がするだけである。



ともすれば、閉店の時間を迎えていた。



前述の文章だけを見ると、一見、私があたかも不真面目なバイトであるかのように、読者の皆様方の目には映るであろう。



むしろ実情は正のつく反対で、私が仕事に対してあまりに情熱的であるが故に、時間がまるで低空を飛行する矢のように過ぎさっていっただけに過ぎない。決して怠惰からくる意識の断絶ではない。寝てなどいない。



閑話休題



とにかく、閉店という一つの区切りを迎えたので、この後の私の行動を可能な限り簡潔にまとめておくことにしよう。



私という人間は非常に紳士的かつ諧謔的かいぎゃくてき(つまりユーモアに充ち溢れた)な男として有名だが(物を投げないでほしい)、その斜め上をいくきまぐれな人間としても名をせている。



かと言って飽きっぽいということもなく、一度始めたものはそれなりに続ける性質である。



例えばらーめんだ。

ちなみに私はらーめんをラーメンと表記することをよしとしない。意味は特にない。



だがここでらーめんについて語るのは自粛させて頂こう。

なぜなら、一度らーめんについて語りだすと、南米を流れる某川のごとく、無数の支流に枝分かれしたあげく、何所にたどり着くかもわからない旅路を経ることになるからだ。



話を戻そう。



要は、私はらーめんが食べたくなったので、同僚のYさんを誘って長浜らーめんへ繰り出すことにした。ほかのやつらの姿はすでになかった。薄情者どもめ。



ここで物語のディテールを掘り下げるためにも、Yさんについて少しふれておくことにしよう。




彼女は非常に優れた人物で、とりわけ車のナビゲート能力に特化している。わたしが運転をしていて迷いそうになると、30秒前にはいち早く察知し、正しい方向へと導いてくれる。

おかげで、彼女が車に同乗してくれた時には、目的地へ過たずたどり着くという責任や無言の重圧から、私は手放しで解放されるのである。ハンドルからという意味では決してない。

きっと、人生のナビゲートもうまいに違いない。知らないけれど。



そしてなにより義理がたい性格をしており、私が毛ほども気にしていない様な行動に、これまで恩を感じていたらしく、この日はらーめんをおごってくれるのだという。



私は即座に受け入れた。いや、紳士らしく丁寧に断ろうとも思ったのだが、素直におごられておくのもまた、紳士のたしなみではないかと判断したのだ。物を投げないでほしい。



さらに彼女は、この、漫然と進展しているのかそうでないのよくかわからない、駄文の誕生にも深く関与している。


Sの代わりにバイトに入らなくてはならなくなった私に、いたく同情し、1本20円のサイダーをコップに注ぎ、ストレス発散の手段として、この日記を書くことを提案してくれたのである(今さらだが、これは日記なのである)。ただおもしろがっていたとも言う。



その他内訳としては、主に応援と、制作に必要なエネルギー源の提供である。つまりらーめんである。



仕事が終わり、未練のかけらもなく店を後にした我々は、足取りも軽く、長浜らーめんへと向かった。


わけではなく、思いだしたようにSの住むアパートに押しかけ、近隣の住民の迷惑もかえりみず、狂ったようにインターホンを押しまくった。一部誇張あり。



彼は出てこなかった。



とりあえずやることはやったので、今度こそ長浜らーめんに向かうことにした。



この時もまた、彼女のナビゲート能力が遺憾なく発揮されたわけだが、説明がめんどうなので割愛させて頂く。



そんなこんなで目的地に到着した我々は、厳ついベンツの隣にビビリながら車を止めた後、嬉々としてらーめんを食した。写真は撮らなかった。



長浜らーめんの味については多くを語るまい。というか一切語るまい。

是非食べに行って確かめて頂きたい。はりがねは博多の心意気たい。

チャーハンはとてもおいしかった。



身体にしみ渡れよとスープを飲み干しはしなかったが、楚々(そそ)と食べ終え、会計に向かった。

らーめんは宣言通りYさんがおごってくれた。チャーハンは折半した。



悠々と会計を済ませるYさんを見て、私は決心したものである。



今度らーめんを食べにあまのじゃくへ行こうと。その時Yさんがいるかどうかはわからない。

・・・半分冗談だが、機会があれば今度は必ずこちらがおごらせて頂こうと思ったわけである。

おごられっぱなしというのは、私の信条に反するのである。



その後我々は車内ににんにくの香りを漂わせながら帰宅の途についた。



Yさんを自宅近くの公道まで送り届け、去りゆく彼女を見て私は祈った。



どうか彼氏と末永く幸せでいられますように。アーメン。



私は約束のぶつ、つまりこのどうしようもなく嘆かわしい駄文の制作に取り掛かるために、本気になったナマケモノもかくやというスピードで家路についた。法定速度は概ね遵守した。



そして私は奇っ怪な文章を完成させるべく、夜を通しつつ、不眠のまま大学の講義を振り子みたく左右に揺れながら聞き、ポケモン大好きっ子との不意の遭遇に無意味にキョドり(かなり怪しかったのではないかと思う)、待ち合わせしていた友人とは運命的なすれ違いを果たし、いささかナイーヴになった心臓をいたわりつつ、死に体の有様で自宅のベッドまで辿りついて、力尽きた延長線上に今いるわけである。



さて、ここにきてふと疑問に思ったのであるが、そもそもこの物語りと呼ぶのもはばかられる様な駄文を何故書くことになったのか、そして、書いたことに意味はあったのか、疑問に思っただけではるが、読者の皆様方のためにも、また人としても、ここは明らかにしておくべきであろうと思う。



常々私は、この文章の端々からも分かるように(そこは各自読み取ってもらいたい)、騎士道精神に溢れた紳士足らんとするも、その実情はいさぎのよいうっかり者である。つまり阿呆である。



モノをよく見ずにこうであると決め付け、勝手に納得してあげく、周囲の者までその誤解に巻き込んでいくという性質たちの悪い男なのである。



そもそもこの日、きちんと予定を確認しておけば、間違えて店に顔を出すこともなかったであろうし、土気色の顔をした店長と顔を合わすこともなければ、Sの代わりにバイトに入ることもなく、ゴミカートのふたにあごを強襲される必要なぞなかったわけである。

全てが自身の身から出たさびである。



かように困った性格をしているおかげで、立てんでもいいフラグを、そばを通った端から無自覚に乱立していき、気づいたら訳の分らない状態に陥っているということが多々あったりなかったり。



立ちまくったフラグの間を器用にすり抜けてやって来てくれる幸福には、同情と感謝の念を禁じえない。



しかしながら、危機回避(りくすへっじ)能力に関しては自他共に認めるところなので、今までは事なきを得ている。たんに逃げ足が速いだけともいう。



とどのつまり、全ては自分の責任というわけである。



これからは周りをよく見てから走り出そうと思う。と新年よろしく抱負を語ったところでそんな簡単に人間が変われるはずもなく、また同じことを繰り返すのが関の山なのだ。



畢竟ひっきょう、自分のダメ男な部分も、マリアナ海溝の如き懐の深さを以って受け入れた上で、適当納豆に生きていくべきなのだろう。



そしてまたしてもここにきて疑問に思ったことがある。今回のは非常に気になる。

何かというと、それは、私自身が駄文であると自負するこの珍妙な日記を、果たして何人が挫折ざせつせずにここまで読んでくれているのだろうということだ。



このつたない文を最後まで読んでくれるような人間が私のかくも狭い交友関係の中にいるとは、はなから思ってなどいない。

ただ、もしもこの悪辣あくらつ極まりない文章をここまで読んで、貴重な時間をむざむざ溝に捨てて下さった貴兄貴女の方々がおられるならば、あなた方のために、一つだけ有益な情報をお教えしよう。



賢明かつ愚かな読者は(いるとは思えないが)既にお気づきのことと思うが、この物語の文体はある作品を参考にさせて頂いている。



四畳半神話体系である。



今私が、周りにうんざりされるほどゴリゴリ押している作品なのだが、私の、床に叩きつけられ足蹴にされ、唾を吐きかけられたあげく荼毘だびにふされて然るべき文章など比べ物にならない、いやそもそも比べること自体が破廉恥の極みではあるが、とかく秀逸な物語にして文章の作品なのである。

私がこの文の冒頭で読んでいた本はこれである。ちなみにまだ読み終わっていない。



もしも、もしもではあるが、私の唾棄すべきこの文章を読んでほんのかすかにでも、笑いをもよおして頂いた奇特な紳士淑女の皆様方には、是非、四畳半神話体系を読んで頂きたい。抱腹絶倒は必至である。



それにしても、まだ読み終わってもいない本の文体を参考にするとはどういうことかと、至極当然のツッコミは、耳をふさいでやり過ごそうと思う。


というか、参考でなくパクリであろうという、正常で恐ろしいツッコミには耳をふさいだ上で歌を歌ってなかったことにしようと思う。クレームは一切受け付けておりません。



私は紳士たらんとしているので、言い訳はしない。

ただ私は、読んだ先から、私の中の吹き溜まりとでも表現すべきけがれた部分に、(おり)のように沈澱していったものを、前述のグリ○トを網ですくうが如く汲み上げて使用しているだけである。

多分に余計なモノが混じっていることは必定であるが。



その割にいつもと変わりばえのしない文章じゃないかという指摘も聞こえてきそうだが、もしかしたらそんなこともあるかもしれない。私には分りかねる。



さて、もはや語るに尽きたという感じであるので、そろそろ話の締めに入ろうと思う。



先ほど私のところにSから連絡がきた。



ひとまずほっとした私は彼に訪ねた。



もちろん昨日のことである。



彼が、私の執拗な電話に出られなかったのは、携帯を失くしたからか、或いは重大な事故に巻き込まれたからか、はたまた麻雀の負け分をあれな人たちに請求されたあげく、道頓堀にカーネルサンダースよろしく沈められたからではないかと疑っていた。嘘である。



しかしどうやらそのどれでもないらしい。



ではいったい彼の身になにが起こっていたというのか。私が彼の家にインターホンを連打しに行った時彼は何処で何をしていたというのか。それは、尽きることのない謎に包まれたミステリー小説の様であった。



私は期待した。プーさんのお腹の中には何が詰まっているのかというぐらい期待した。



すると彼はこう言った。

























「ずっと寝てました」





















私は彼の債務不履行を水に流す代わりに、彼を道頓堀に沈める決意をしたのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この文章を読み始めたときから四畳半神話大系ファン気付いておった。それは責任者は誰かの部分で確信した。しかしながら、貴君は実にうまく真似たと思う [気になる点] 森見さんと比べてしまうとやは…
[一言] 私は四畳半ファンなのですが、 この作品も結構面白かったです。 独特の言い回しや全体に漂う不毛な雰囲気(笑)など、よく再現できていると思います。 シリーズ化してみては?
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