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9/10

みんなと一緒にアフタヌーンパーティーしよ?

ケーキの国 9章です

ラスト

6人は、天使やタルトたちと一緒に中央広場へ戻ってきた。

天使が台座に腰を下ろすと、その後ろに大きな虹がはるか外へと架かった。

タルトは6人を見つめて、ゆっくり言った。



「ほら、あれが外へ続く虹だ。

尊敬する旅人たちよ、無事に帰ってほしいと願っておる」




イチゴとリリカは向かい合った。


「リリカ、大きいいちごもらってない気がする〜♡」


「はっ、お前らしいな。

もう一回来いよ。

まだまだ見せてない海域、たくさんあるぜ?」



ブルーはぷっぷの手を取り、やさしく囁いた。


「どんなに暗い夜も、どんなに明るい星空でも。

僕は星空にいます」


「素敵ですわ。

夜に空を見上げるたびに、あなたを想いますわ」




ミントはきゅるりと手をつないで、他の4人が別れを交わすのを静かに待っていた。

そして小さな声で言った。


「寂しいです」


きゅるりはその手をぎゅっと握り返した。


「私も」




3人はケーキの国の人々に手を振りながら、虹の橋を渡っていった。

下ではたくさんの人が見送り、手を振っていた。


橋の上を歩く3人は、突然身体がふわっと浮く感覚を覚えた。

リリカは素早くきゅるりとぷっぷを引き寄せた。


ケーキの国に来たときと同じように、ぐるぐると回転しながら急上昇した。


「またですの〜!」

ぷっぷは2人にしがみつきながら思わず叫んだ。




そのとき、3人の首にかけていたミントの人形が形を崩し、

小さな光の粒になってキラキラと散っていった。


「いやっ!」

きゅるりは必死に掴もうとしたが、光はすり抜けて消えてしまった。


涙をこぼすきゅるりを、

リリカとぷっぷは離さないように強く抱きしめた。




……


同じ頃、ケーキの国。


ミントは、虹を渡っていく3人をいつまでも見送っていた。

ふと視界から彼らの姿が消えると、台座の前にコロコロと音を立てて人形が落ちてきた。


ミントはその場に膝をつき、泣きながら拾い上げた。




天使は優しく見つめた。


「可愛い子。

どうか泣かないで。

特例を作らないこと──

それがあなたと、大事な3人を守ることだと私は信じているの」


タルトもそっと肩に手を置き、柔らかく告げた。


「ケーキの国のものを外へ持ち出すことはできぬ。

それは天使の加護があるゆえだ。

それを忘れてはならん」



--


3人は互いに抱き合い、不思議な力に耐えていた。

やがて急に足元に確かな地面を感じ、不思議な光の中から帰ってきた。




「あー、どこに行ってたのー?」

「準備もうほとんど終わったよー」


村中の人たちがリリカの庭に集まり、次々に声をかけてきた。

どうやら、姿を消してから1時間ほどしか経っていないらしかった。




リリカは少し頭を振って、みんなに手を振った。


「みんなありがとう〜♡

リリカ、すごく嬉しい〜」


村人たちの視線がリリカに集まる中、

ぷっぷは押しつぶされないようにそっと輪から離れようとした。




「あっ、ぷっぷさん。あの大鷲さん、どうにかして」


隣人の妖精に見つかり、庭の片隅へと連れていかれる。




そこにはテーブルの上で大きな羽を広げ、ケーキを守る大鷲がいた。

周りには誰も近寄れないでいた。


「近付こうとすると威嚇するのよ。

誰も近寄れなかったわ」


嘴でつつかれそうになったという妖精に、ぷっぷは丁寧に頭を下げた。


「申し訳ありません。

ワタクシのせいですわ。

後ほどきちんとお詫びいたしますわ。

今は大鷲のところへ参りますので、失礼いたしますわ」





そっと近づくと、大鷲はふくふくとした体をわずかに震わせ、静かに翼を畳んだ。


「ワタクシを……守ってくれましたのね?」


その声は、かすかに震えていた。





ぷっぷは優しく微笑み、そっと大きな羽根に手を伸ばした。


「ありがとう。

忠義深いあなたに、心から感謝いたしますわ」


大鷲は「くくる……」と小さく鳴き、ゆっくりと首を垂れて肩に顔を寄せた。





「……ワタクシ、あなたの忠誠にふさわしい、高貴な妖精であり続けますわ──」


その言葉に、大鷲はまた小さく「くるっ」と鳴いて応えた。





誰もいない庭の片隅。

ようやく再会できた2体の姿を、きゅるりは切なげに、それでも嬉しそうに見つめた。


きゅるりの後ろを通りながら、リリカがくすっと笑って囁いた。


「やっぱり大鷲ちゃんが本命か〜♡」


きゅるりは去っていく後ろ姿に向かって小さく言った。


「こら、だめよ」





大鷲がケーキの上から退いてくれたので、

ようやくみんなでケーキを切り分けられた。

「素敵なケーキだ」「美味しい」と口々に言い合いながら、笑顔で食べた。





きゅるりは自分に配られたケーキの上のミントをそっと見つめた。


「食べられないよ……」


そんなきゅるりに、音もなく背後から忍び寄り、

リリカはフォークで素早くケーキをすくってぱくっと食べた。


きゅるりは目を丸くしてリリカを見た。




リリカは小首を傾げて笑った。


「美味しーよ? 食べないの?

きゅるりちゃん、ケーキはね、美味しく食べなきゃ

それで、また一緒に遊びに行こ?」




きゅるりは覚悟を決めたように、

ミントが乗ったクリームをフォークですくい、口に入れた。

ミントの爽やかな香りと一緒に、どこかでコロコロという音が聞こえた気がした。


「……美味しい」


そう呟くきゅるりを、一瞬だけ抱きしめると、

リリカはほかの村人たちへ向かって手を振りながら歩いていった。




「リリカさんは、繊細さが足りないと思いませんこと?」


ぷっぷの声にきゅるりは振り返った。

大鷲を連れたぷっぷは、いたずらっぽく笑いながらティーカップを差し出した。




「でも、たまに鋭いから、

リリカさんはたまらないですわよね?」


きゅるりとぷっぷは顔を見合わせて笑った。

大鷲は隣にいるぷっぷに胸を押し付けて「キュー」と鳴いた。



村人たちがケーキを食べ終えた頃、

リリカは庭の端で楽器を手に取り、歌い出した。

村人たちは手拍子を打ち、楽しそうに踊り始めた。



〜♪

美味しいケーキ 美味しく食べて

あなたのためだけのケーキ

心をこめて作ったの

あなただけを待ってるわ



歌声は、村人たちの輪に、ぷっぷや大鷲、きゅるりに届き、

そして、はるか遠く——

ケーキの国へも届くように、優しく響いた。


きゅるりは目を閉じて、ミントの笑顔を思い出した。

ぷっぷは大鷲の羽を撫で、静かに手拍子を打った。

大鷲も「くるる」と小さく鳴き、ぷっぷの肩に寄り添った。


リリカはみんなを見渡しながら、

少し首を傾げて、にこっと笑った。


「ねえ、聞こえてる? 

そっちでも、ちゃんと食べてるよね?

リリカ、また行くからね。約束だよ〜♡」



〜♪

心をこめて作ったケーキ

誰かの笑顔を待ってるケーキ

だからいつでも繋がってる

またいつか会いに行くよ




その歌声は、風に乗って広がっていき、

いつまでも優しく響いていた。



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