公園ってバーベキューとかダンスとかできるの?
落とし穴から助け出されたきゅるりとミントは、2人にぺこりと頭を下げました。
「助けてくれてありがとう」
「ご迷惑をおかけしました。お礼を申し上げます」
それを聞いたぷっぷは、リリカに向けていた尊敬と恐怖の混じった視線を外し、2人へ向き直りました。
「ワタクシにお礼など、不要ですわ。
すべてリリカさんにお捧げくださいませ」
当のリリカは、両腕に力を込めたポーズを決めて、
「ぱわ〜♡」
と、満面の笑顔で応えていました。
――きゅるりとミントの救出直前
リリカとぷっぷは、近くに落ちていた長いロープを拾い、木の幹に一方をしっかりと結びつけると、もう片方を穴へ垂らしました。
ミントはそのロープを伝って、どうにか自力で這い上がることができましたが、きゅるりは途中で止まって下まで滑り落ちてしまいました。悲しそうに、きゅるりは呟きました。
「うーん……ちょっと難しいかも……」
すると、リリカがぽんと小さく跳ねるようにして、穴の中に飛び降りました。
「り、リリカさん!?」
ぷっぷが思わず声を上げた時には、もうきゅるりの腰にロープを結びつけているところでした。
「うん、よしっ」
リリカはロープをさっと登りきり、
そのままきゅるりを引き上げはじめました。
「ぱわ〜♡」
不思議な掛け声とともに、するするときゅるりの体が引き上げられていきました。
あの時の勇姿を思い出し、きゅるりは尊敬の目でリリカを見つめました。
「ありがとうリリカちゃん、やっぱり強くて素敵ね」
「あの小さなお体で、あれほどの力を……とても驚きました」
ミントも感嘆の表情を浮かべました。
「リリカさんは……すべてがリリカさん、ですのよね。たまに、それを忘れてしまいますわ」
ぷっぷも、小さく頷きました。
そんな3人に、リリカはくるりとターンしてから、両手をひらひらさせながら歌うように言いました。
「か弱きうさぎちゃんなんて〜、侮ったらだめだめよ〜♡」
「2人が無事でよかった〜♡」
救出後、4人は改めて井戸に行って水を汲み、ミントの家へ戻りました。
家では、それぞれが自然に動きはじめました。
ぷっぷはお湯を沸かし、食器を並べ、
リリカはシーツをまとめて洗濯桶に放り込み、
きゅるりとミントは簡単な朝食を準備していきました。
やがて、ぷっぷ以外の3人は湯気が立つスープやパンの前に座りました。
ぷっぷは慎重にティーポットを持ち上げ、リリカに近寄り、ティーカップに紅茶を注ぎながら、小声で言いました。
「リリカさんのために淹れたお茶ですわ。……どうぞ、楽しんでくださいませ。
それにしても、天使探索より“お腹すいたのどうにかして”とは……」
リリカはパンをもぐもぐしながら、ぷっぷを上目遣いで見つめました。
「だって〜、お腹減っちゃったんだもの♡」
ぷっぷは諦めと愛おしさの混じった表情でリリカを見つめました。
「……まぁ、今日の運動量から考えれば、仕方ないのかしらね」
ため息混じりにそう言うと、きゅるりとミントにもお茶を注ぎ回りました。
「ぷっぷちゃん、ありがとう」
「ありがとうございます。お客様に淹れていただいてしまって、すみません」
きゅるりとミントが声をあわせると、
ぷっぷはふわりと微笑んで言いました。
「いいえ。ワタクシ、お茶の淹れ方にはこだわりがございますの。
わがままを受け入れてくださって、光栄ですわ」
ぷっぷが自分の席に戻って紅茶を口にしたタイミングで、ミントが真剣な顔で頭を下げました。
「皆さん、助けていただき、そして……オーブを3つ、集めてくださって、本当にありがとうございます。
どんな言葉を尽くしても、足りないくらい、感謝しています」
きゅるりはミントの顔を伺い、そっとその手に触れました。
ぷっぷは思案深げな顔をして、ミントにかける言葉を探しました。
その時、リリカは明るく笑って言いました。
「いいよ〜、そんなの〜。当たり前だよ。
だって、友達だもん♡」
ミントは、泣き笑いのような表情を浮かべました。
ぷっぷときゅるりはリリカらしい言葉に笑い合い、4人は朝食を再開しました。
ケーキの国でのご飯の話や、フルーツの話、これまでの旅の思い出、
4人の会話は尽きることがありませんでした。
きゅるりは、ふと首に掛けたままの小さな木の人形に気がつきました。
コロコロ……と、胸元でかすかに音が響きました。
きゅるりはそれを首から外し、隣に座るミントにそっと差し出しました。
「ミントさん、この人形……返すね。借りたままだったから」
ミントはその手をそっと押し戻しながら、静かに首を横に振りました。
「もし、よろしければ……そのまま持っていてくださいますか」
「でも、これってミントさんの大事なものだよ?」
きゅるりが目を丸くすると、ミントは少し笑って、ぽつりと語りはじめました。
「少し、家の中にある人形を整理しようと思っているのです」
ミントは、きゅるりからそっと人形を受け取ると、
掌の中でコロコロと優しく音を鳴らして見せました。
「……この子たちをこんなにたくさん集めてしまったのは、たぶん……
言えなかった言葉の数だけ、増えてしまったような気がするんです。
言いたくても、飲み込んでしまった気持ちを、代わりに抱えさせていたのかもしれません。
でも、これからは……自分の口で、ちゃんと伝えようと思っています。
だから……お守り代わりに、どうぞもらってください」
ミントは人形を、再びきゅるりに返しました。
ぷっぷは静かに立ち上がり、皆のカップにお茶を注いで回りました。
リリカもパンを大人しく食べながら、きゅるりとミントの話にじっと耳を傾けていました。
ミントは、続けました。
「もし、天使に無事に会えたら──
そのあとで、この子たちを森の中の妖精の落とし穴に、一つずつ置いていこうと思っているんです」
きゅるりは不思議そうに首をかしげました。
「落とし穴に? えっと、なんでかな?」
ミントはそっとテーブルに目を落とし、飾られた人形たちを静かに見つめました。
やがて、ゆっくりと言葉を紡ぎました。
「……“落ちてしまった方へ。どうぞお使いください”
と書いた小さな紙を、添えようと思っているんです。
誰かが困ったとき、それで助けを呼ぶことができたのなら、
それがこの子たちにとっても、きっと幸せなことだと思うんです。
……家も片付きますね」
きゅるりは人形をぎゅっと胸に抱きしめました。
「それ、すごくいいと思う。
ミントさんの気持ち、きっと森のみんなに伝わると思うよ」
「……きゅるりさん」
すると、それまでにこにこと話を聞いていたリリカが、テーブルの上で手をぱちんと合わせて声を上げました。
「は〜い♡ りりかちゃんもほしいで〜す♡」
ミントは微笑み、ダイニングテーブルに飾ってあったいくつかの人形を取り出しました。
「よろしければ……リリカさん、ぷっぷさんも。お守り代わりに、お持ちいただけませんか」
「やった〜♡ おそろい〜♡」
「えぇ、ありがたく頂戴いたしますわ」
3人がそれぞれ人形を手に取ると、コロコロと優しい音が部屋に響きました。
ミントはその様子を、微笑みながら見守っていました。
各々が人形を首にかけたあと、リリカはふと思いついたように口を開きました。
「……ところで〜、
オーブって、どうやって使うの?
3つ集めたら勝手にパーンって道が出るのかと思ってた〜♡」
「私も最初はそう思っていました」
ミントが頷き、少しだけ照れたように微笑みました。
「でも、文献にこうあるんです。
《太陽の光、三色のオーブからの光が重なるときに、天使への道が開かれる》──と。
朝食のあと、試してみようと思っています」
「よ〜し、頑張るよ〜♡」
リリカは片手をグーにして、元気に掲げました。
「今日こそ、天使さんに会えるかな〜?」
「……会えます。会いましょう、必ず」
ミントは強く、はっきりとそう答えました。
朝食を終えた4人は身支度を整え、森の外──太陽の光が当たる場所へと移動しました。
リリカ、ぷっぷ、きゅるりがそれぞれ1つずつオーブを持ち、
ミントが立ち位置を指示しました。
「これで問題ないと思います」
ミントが頷き、3人に合図を出しました。
3人はオーブを掲げ、ミントの指示に従って光を合わせようとしました。
そして、光が合わさったその瞬間──
オーブは淡く輝き始め、やがて輪郭を失い、光そのものへと変わっていきました。
赤と青、緑の光は混ざりあい、白い光となって空へと伸びていき──
まるで橋のように、輝く道が現れました。
「わー、なんか綺麗な歩道橋かも〜♡」
リリカは感嘆の声をあげました。
ぷっぷは小さくため息をつきながら呟きました。
「感動が少し削がれますわね……」
きゅるりとミントは顔を見合わせ、くすりと微笑みました。
「行きましょう。きっと、天使がこの先にいます」
ミントがそう言うと、3人は頷き、ミントの先導で光の道を歩き始めました。
全くお話が進みませんでした
意図しない日常回になってしまった気がします
思いついたエピソードを全て入れようとするのが悪いのかもしれません。