ケーキが可愛かったら、パーティーでしょ?
ケーキの国とアフタヌーンパーティー
1章
「つかれちゃった〜。
リリカちゃん、もうへとへとですよ〜」
ふわふわとした足取りで、うさぎの妖精のリリカが朝の森の小道をのんびり歩いていきます。
リリカは夜通しお仕事をして、ようやくおうちに帰るところ。
ほとんど寝ながら、森の道を歩いていました。
そのとき——
ふわっと甘い香りが、風にのってやってきました。
「ん〜っ♡ あま〜い……
つかれた時には、あまいもの〜♡」
ふにゃりと笑ったリリカは、帰り道からそれて、香りのする方へトコトコと歩き出します。
木々のあいだから、ちょっとした空き地が見えてきました。
テントみたいな雨よけの下には、オーブンが置かれ、
外には小さな机や椅子、ケーキの材料が詰まったカゴ、ボウルなどが並んでいます。
そこでは、小柄なクマの妖精が、せっせとケーキを焼いていました。
リリカはうれしそうに声をかけます。
「おはよう〜♡
とってもいいにおいね〜!」
クマの妖精はくるっとふり返って、
「おはよう! コグマのケーキ屋へようこそ〜!」
「え〜っ、ケーキ屋さんなの!?
すてき〜♡ リリカ、ケーキ買いたいな〜!」
リリカはおめめをキラキラさせて言いました。
「ごめんね〜。まだ準備中なんだ」
コグマの妖精はちょっと驚いたあと、うれしそうに答えました。
「じゃあね、リリカは今日の予定まっしろなの〜♡
木のかげで寝て待ってるから、ケーキができたら起こしてね♡」
そう言って、リリカはそのまま木の陰にころんと横になって、すやすやと眠ってしまいました。
コグマの妖精は目をぱちくり。
けれどすぐに顔をぱっと輝かせて、倍の速さで手を動かしはじめました。
「おきゃくさんだ……!
はじめてのおきゃくさんだ……!」
うれしそうに、クリームを泡立てます。
* * *
「お客さん? 起きて? ケーキできたよ」
コグマに起こされて、リリカはむにゃっと目を覚ましました。
目の前には、天使が真ん中にちょこんと座った、きらきらな星やいちご、ミントが飾られた可愛いケーキが置かれていました。
まわりには色とりどりのフルーツとふわふわクリームがたっぷり!
「わ〜〜〜!かわいい〜っ♡
すてき〜っ♡
……で、おいくら?」
リリカが聞くと、コグマはにっこりして答えました。
「はい、ワンコインでお願いします」
「えっ? ワンコイン!?
こんなに大きくて、かわいくて、すてきなのに……?
10倍出しても、まだお得だと思うのに……」
リリカは不思議そうに首をかしげます。
コグマは照れくさそうに笑いました。
「初めてのお客さんだから、サービスなの。
もし気に入ってくれたら、また来てくれたら嬉しいな」
「わ〜、ありがとう♡」
リリカはお金を渡して、大きなケーキの箱を受け取りました。
(こんなに素敵なケーキなのに……
ちょっと森の奥すぎるのかしら?)
寝起きの頭でふわふわと考えながら、リリカはまたおうちへと歩き出しました。
おうちが見えてきたそのとき、リリカははっと思いつきました。
「……パーティー、しちゃおう♡
ケーキがかわいかったら、パーティーでしょう〜!」
楽しくなったリリカは、村じゅうのおうちをノックしてまわります。
「今日パーティーやるの♡
お時間あったら、お友達も一緒にリリカのおうちに来てね〜♡」
そうやって村じゅうに声をかけてから、リリカはるんるん気分でおうちに帰りました。