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27. 東京湾の攻防

 東京湾に停泊中の英吉利イギリス艦隊への補給は、転移魔法を使って本国から直接行われていた。したがって、日本艦隊が東京湾をいくら厳重に封鎖したところで、彼らの補給には一向に支障がなかった。


 日本の軍艦は、英吉利の軍艦に比べて艦体が小さく、装甲も薄い。また、艦船の数も圧倒的に少ないため、正面からぶつかれば大半が撃沈されかねない。そのため、東京湾の封鎖も、実質的には形だけになっているのが現状だった。


 転移魔法による定期的な補給を行う際、英吉利艦隊は本国の国防省との連絡も並行して行っていた。

そして、その定期連絡時、国防大臣より本国への帰還命令が下された。その理由は、露西亜ロシアと英吉利が正式に交戦状態になったからだという。


 ジョーンズ大将は、その命令を聞いて苦虫を噛み潰したような顔をした。やっとのことで日本國の中枢機関がどこに行ったかの断片的な情報が入り始めた矢先、まさかの帰国命令。彼の機嫌はすこぶる悪かった。


「日本軍の艦船が行く手を阻むような真似をしたら、容赦なく魔導砲をぶち込んでやれ!」

  ジョーンズ大将は、怒りを露わにしながらそう息巻いた。


 英吉利艦隊が動き出した。東京湾の外洋を目指し、帆をいっぱいに張り、時速約28キロメートル(15ノット)で航行する。その行く手には、日本の海軍艦隊が待ち構えていた。



 英吉利艦隊は、日本艦隊を魔導砲の射程距離に近づくと、速力を弱め、先頭から順次回頭を始めた。日本の艦隊が搭載する大砲は、英吉利艦隊には射程外であったため、日本艦隊は砲撃されると察知し、慌てて180度回頭を開始し、距離をとろうとした――その時だった。英吉利艦隊の魔導砲が、まばゆい光を放ち、火を噴いた。


 日本の艦隊は以前、水軍のみで人員構成されていた。しかし、軍の再編時に、他の六軍からも少しずつ人員が配置されるようになった。したがって、各艦には陽光軍出身の兵士も乗艦している。その陽光軍出身兵たちが、魔導砲の強大な攻撃を防ぐため、艦全体に念力防御の神術を展開し、必死に対抗した。


 ジョーンズ大将は、放たれた魔導砲の弾頭が、まるで目に見えない壁に阻まれたかのように、敵船に着弾しないのを見ると、すぐに魔導魚雷の発射を命じた。それは魔導による推進と誘導ができる、英吉利軍の最新兵器だ。


 発射管から次々と放たれる魔導魚雷。それらは水中で時速約93キロメートル(50ノット)という驚異的な速力で、日本艦隊に向かって突き進む。


 日本艦隊に乗り込む水軍出身の兵士たちは、海中をこちらに向かってくる異質なエネルギーを感じ取った。各艦は、最速で魔導魚雷から逃げようと針路を変える。水軍出身の兵士は、自身の神術により海流を調整し、魔導魚雷の方向を変えようと試みたが、いくら海流を調整しても、魔導魚雷は執拗に向かってくる。


 魔導砲に対応していたの兵士以外の陽光軍出身兵たちは、水中にも念力防御を張り、二重の防御態勢を取った。


 魔導魚雷から逃げている間に、日本艦隊は東京湾の外に出てしまった。そうなることを、まるで最初から見透かしていたかのように、英吉利艦隊も東京湾外へと出てきた。圧倒的に艦船の数で上回る英吉利艦隊は、さらに多数の魔導砲と魔導魚雷を発射し、日本艦隊を遠ざけた後、日本列島から離れていった。







 

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